メイカーズ 第三部, コリイ・ドクトロウ

第五十章


サミーがIT部から自分のコンピューターを取り戻すのには三日間かかった。彼の秘書はできる限りのことをしてくれたがコンピューター無しではたいした仕事もできなかった。

ようやくコンピューターを取り戻すと彼ははやる思いで未読メールをダウンロードした。想像を超えていた。自動フィルタリングを通した後でも数百通のメッセージやファイルがあった。どれもちゃんと注意を払う必要があるものばかりだ。毎日、数分ごとの小出しに処理している時にはこんなに量があるようには見えなかったがまさに山積み状態だった。

彼は秘書に整理と返信の手伝いを頼んだ。一時間ほど後で彼女は真っ赤なフラグを付けた一通のメールを彼に送り返してきた。

それはフレディからのメールだった。途端に頭痛がしてきた。片頭痛とテーブルの角に頭をぶつけた時の中間のような痛みだ。

::サミー。あなたにはがっかりしました。私たちは友達だと思っていたのに。なぜギボンズとバンクスを買収するというあなたの突拍子もない計画を他人から教えられなければならないのでしょう。この件についてのあなたのコメントを強く希望したいのですが?

見積もり書はギニョールに渡してあった。ギニョールは慎重を期して社を離れた場所で開かれた密室での会議で他の執行役員にそれを見せたはずだ。しかし彼らのうちの一人が漏らしたのに違いなかった……あるいはレスターの側からのリークかもしれない。

胃がねじ切れるような思いで彼は昼食を味わった。フェアではなかった。計画を実現する本当のチャンスを彼は手にしている……そしてこの計画は間違いなく関係者全員のためになるはずのものなのだ。

もう少しでギニョールに電話をかけそうになったところで彼は電話を置いた。誰に電話すればいいか彼にはわからなかった。彼は自分を勝ち目のないポジションに置いていた。フレディが書くであろう記事について考え込んで、彼はこの件でまず間違いなく自分は職を失うということを悟った。おそらく訴訟もひどい結果に終わることだろう。まったく、ディズニーでの彼はいつもこうだった。たぶん選ぶ仕事を間違えたのだ。

うめき声を上げると彼は自分の額を叩いた。彼が求めているのはすばらしいアイデアとそれを実現することだけだった。

要するに彼はレスターになりたかったのだ。

その時、彼は電話をかけるべき相手に気づいた。

「チャーチさん?」

「元の呼び方に戻ったの? たぶん良い兆候ではないわね」

「それじゃあスザンヌ」

「サミー、あなたまるで睾丸を蹴り上げられたみたい。はっきりと喋って」

「僕はレスターのところで雇ってもらえると思いますか?」

「あなた、それまじめに言っているの?」

「フレディがあの買収提案を嗅ぎつけたんです」

「まさか」

「そのまさかです」

「それで求職活動をしようと思いましてね。僕がずっとやりたかったのはクールなアイデアを考え出してそれを実現することだったんです……」

「ちょっと静かにして。フレディがあの話を嗅ぎつけたですって? 驚くようなことじゃないわ。あいつの得意技よ。たった一つの長所ってところね」

「ひどいもんです」

「だけどあいつの最大の短所でもある。それについてはよく考えたわ。最後に出っ歯のねずみのフレディとやりあって以来ね」

「面と向かってあいつをそう呼んでいるんですか?」

「それはまだね。だけどそうできる日を楽しみにしているわ。聞いて。こっちの人間と相談する時間を一時間ちょうだい。それからかけ直す」

一時間だと? 「一時間だって?」

「あいつは少なくともそれくらいの時間はあなたを落ち着かない気分にさせておくでしょうね。人を不安にさせるのが大好きなのよ。ジャーナリズムの見本みたいなものね……何か新しい展開について検討させる時間を作るのよ」

「一時間だって?」

「あなたに選択肢はある?」

「わかった。それじゃあ一時間後」


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