メイカーズ コリイ・ドクトロウ 第三部

第五十七章


朝になるとペリーはまるで泥棒のようにレスターとスザンヌの家をうろつき回った。ゲストハウスは以前はレスターの作業場として使われていたらしく活動的な発明家が残していったものがそこかしかにあった……部品の入った棚やタブ容器、机の引き出しの中にはかびの生えたコーヒーカップが放置され、ペンやおもちゃ、それに封の切られていないダイレクトメールが山積みになっていた。残るは台所だけだった。ペリーはレスターが昨夜置いていってくれた鍵を探しだすと大きな屋敷の中を台所を探してさまよい歩いた。

台所は二階にあった。少し奇妙な建築様式だがそれがこの屋敷の特徴らしかった。数エーカーの敷地にある丘の上にまず掘っ立て小屋が建てられ、所有者の代が変わるごとに拡張や耐震補強、新しい階の増築が重ねられてだんだんと大きくなっていったのだ。

ペリーは食料庫が最先端の携行食でいっぱいなのを見つけた。どれもレスターができるだけ健康でいられるように栄養のバランス調整と添加がされている。最後に彼はスザンヌが食事をとるために用意されたとおぼしき小さな食器棚を見つけた。中には朝食用シリアルの箱がいくつか置かれ、その後ろに小さなオレオの袋があった。あの炭酸抜きの三重に蒸留された水をがぶ飲みしつつ考えこみながら彼はそのクッキーを頬張った。

上の階でレスターがよろめくようにトイレへと向かう音が聞こえたので彼は「おはよう」と狭い螺旋階段から上に向かって声をかけた。

レスターはペリーがここ何年も聞いたことがないようなうめき声で彼に答えた。まるで大げさに「ちくしょうまた朝が来ちまったぜ」と言っているようだった。

杖をつきながらどたどたと足音をさせて階段を降りてきた彼はボクサーショーツにゴムサンダルといういでたちだった。痩せ衰え、くぼんだ胸に生えた胸毛は灰色の針金に変わり、胴の周りの皮膚は垂れ下がっていた。首から下はまるで百歳の老人だ。ペリーは目を背けた。

「おはよう。兄弟」レスターは言うとシンクの上に置かれた白い救急箱から真空包装された小さな袋を取り出して破って開けると精製水を加えて電子レンジの中にいれた。その匂いはまるでごみ箱の中の濡れたダンボールのようだった。ペリーは鼻に皺を寄せた。

「匂いや見かけに比べれば味はましだ」レスターが言った。「消化がとんでもなくいいんだ。それこそが俺に必要なものだからな。二度と俺にあんなふうな馬鹿食いをさせないでくれ。いいか?」

彼は崩れ落ちるようにスツールに座り込むとくぼんだ両目を閉じた。目を閉じたまま彼が言った。「それでおまえは乗るのか?」

「俺が乗る?」

「俺のコンサルタントとして一緒にやってくれるんだろう?」

「おまえ、まじめに言っていたのか?」

「ペリー。あいつらは俺をくびにすることはできないんだ。やめれば俺は健康手当を失う。そうなれば俺は一ヶ月も持たない。行き詰まっちまう。一日中大したこともせずに過ごすことに罪悪感は感じて過ごしているがだからといって俺が退屈していないってわけじゃない」

「ずいぶん心惹かれる申し出だな」

「腕を上げたんだろう?」

「乗った」


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