自由について, ジョン・スチュアート・ミル

はじめに


この書で展開されるあらゆる議論が直ちに集斂していく重要な主導原理とは、人間の発展が多様性に満ちあふれていることに、その絶対不可欠で本質をなす重要性があるのだ、ということなのです。

ウィルヘルム・フォン・フンボルト
統治の領域と義務

私の著作の最良のものの鼓舞者であり、部分的には著者でもあった彼女――その真理と正義についての崇高な感覚が私の最高の刺激であり、その称賛が私の主要な褒美であった友にして妻への愛しくも悲痛な思い出に、この本を捧げます。私が多年にわたり書いてきたすべての著作と同じように、この本は私同様、彼女のものでもあります。しかしここにある本は、彼女の校訂という量りしれない利益を受けることがあまりに不十分でありました。その最も重要な部分のいくつかは、より注意深い再検証を受けるために保留されていたのですが、今では決してその再検証を受けることのない運命なのです。彼女の墓に葬られたその偉大な思想と気高い感覚の半ばでも世界に説明できるのであれば、彼女のほとんど敵うもののない知恵によって刺激され助けられることなしに私が書くことのできるいかなる著作から得られるよりも、もっと大きな恵みを世につたえる媒介となりうるものを。


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