寝つかせ話:ふとっちょあらいぐまの物語 アーサー・スコット・ベイリー

ふとっちょあらいぐまの家


ふとっちょあらいぐまは、とても太っていてまん丸で、まるで毛皮のボールのよう、そこに取っ手ではなく、羽かざりのようなしっぽがついた姿をしていました。しかしまぢかに寄って見てみますと、するどくかがやくふたつの目が、あなたをじっと見かえしているのに、お気づきになるでしょう。

ふとっちょは食べることが大好きでした。そう――世界中のなによりも、食べることが好きでした。ひどく太っているのはそのせいでした。そしてたくさんの冒険をすることになったのもまた、そのせいでした。

ふとっちょあらいぐまは、お母さんと弟とふたりの妹といっしょに、ブルー山とスウィフト川のあいだの谷間に横たわる沼の近くに住んでいました。一家はそのあたりに住んでいた大人たちみんなのあいだで、『強力るいじ家系』と呼ばれていました。一家全員がとてもよく似ている、というのと同じ意味です。彼らそれぞれのしっぽに――お母さんに子どもたちも――六つの黒い輪っかのもようがついていました。それぞれの顔は、黒い布切れを横にわたしたように毛が生えていて、まるでマスクをしているように見えました。それに、彼らそれぞれが――どう思います? ――ふとっちょに弟に妹たちまでもが、かたくて白い口ひげを生やしていました!

一家はみなとてもよく似た姿をしていたとはいうものの、もちろんみなさんはおわかりでしょうが、あらいぐま夫人は子どもたちに比べるとずっと大きな体でした。そして、おわかりでしょう、ふとっちょは――弟や妹たちよりもずっとまん丸な体でした。

あらいぐま夫人の家は、古い木の枝に空いたうろの中にありました。それは巨大な木で――そのポプラの木は、沼に流れこむ小川のそばに立っていました――枝のうろの中のあらいぐま夫人の家は、ふつうの木の幹に空いたうろの中と同じくらいの広さがありました。

黒っちょは、ふとっちょの弟です――顔のマスクの色が、ほかの者よりもほんの少しだけ黒かったからです。ふわっちょは、ふとっちょの妹の一ぴきです。毛皮が、ほかの子どもよりほんの少しだけふわふわだったからです。もう一ぴきの妹の名前は、かわいっちょです。なぜなら、たいそうかわいかったからです。

さて、ふとっちょあらいぐまは、いつでも食べものを探しまわっていました。お母さんがふとっちょのために家に持ちかえる食べもので満足したことなど、決してありませんでした。あらいぐま夫人がどんなに大きなごちそうを家族の前に置こうと、ふとっちょは自分の分け前をたちまち平らげてしまいました。そして、ていねいに白い口ひげをふき――どこからどう見ても老紳士のようです――もっと食べものを探しに、いそいそと出かけていくのでした。

あるときはふとっちょは小川の川べりに行き、するどいかぎづめで水の中の魚を引っかけて、つかまえようとしました。またあるときは沼に出かけ、背の高いアシの中にかくれているカモをつかまえようとしました。カモのつかまえ方はまだ知りませんでしたが、カエルならばいつも一ぴきか二ひきはつかまえられました。そして、まるで何日もひと口も食べたことがないようなようすで、つかまえたカエルをむしゃむしゃ食べるのでした。

本当のことを申しますと、ふとっちょはとれるものならほとんどなんでも食べました――木の実、サクランボ、野ブドウ、ヤブイチゴ、虫、小さなヘビ、魚、ニワトリ、ハチミツ――ふとっちょが好きな食べものの種類はさまざまあり、きりがありませんでした。なんでもかんでも食べました。そして、いつももっとなにか食べたいと思っていました。

「これで全部なの?」ある日、ふとっちょあらいぐまはお母さんにたずねました。あらいぐま夫人がふとっちょのために持ちかえったおいしい魚を、きれいにむさぼり食べたあとのことでした。それはじつにあっというまのことでした。

あらいぐま夫人はため息をつきました。もういく度となくその質問を聞いてきたからです。一度でよいから、ふとっちょが欲しがるだけごちそうをたらふく食べさせてやれればいいのにと思っていたのです。

「そうなんだよ――これで全部なんだよ」あらいぐま夫人は言いました。「お前くらいの子どもはこれで十分なはずだろう」

ふとっちょはそれ以上なにも言いませんでした。彼は口ひげを手の甲でぬぐうと(みなさんは真似しないでくださいね!)、ひと言もいわずに、食べものをさがしに出かけました。


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