寝つかせ話:ふとっちょあらいぐまの物語, アーサー・スコット・ベイリー

ふとっちょ、さらにふとる


足のうらのやけどの具合がよくなったその夜、ふとっちょあらいぐまはお母さんの家を出て、また木こりのキャンプに向かいました。暗くなるまでじっと待ってなんていませんでした。だって、森の隣人たちがキャンプのおいしい食べ物を見つけてしまうんじゃないかと心配でしたから。ふとっちょは、すべてひとり占めにしたかったのです。

うれしいことに、ごちそうはほとんど尽きることがありませんでした。彼はキャンプをかぎ回り、じゃがいもの皮やベーコンのかけらをつまみ食いしました。すべてのごちそうのうちでおそらく一番おいしいのは、とうもろこしパンでした。ふとっちょはこれをがつがつと大いにむさぼり食べました。それから、彼はなにかが半分ほどつまった箱を見つけました――中身はリンゴのような味のする切れっぱしでしたが、ただリンゴみたいに丸くないし、みずみずしくなくてすっかり乾いていました。けれどふとっちょはこれが気に入りました。最後のちっぽけなくずまで、きれいに平らげました。

それから、彼はのどが乾きました。それでキャンプのそばを流れる小川に下っていきました。木こりたちは小川に張った氷に穴をあけ、そこで水をくめるようにしていました。ふとっちょはこの穴のふちに歩いていき、水を飲みました。彼はずいぶんとたっぷり水を飲みました。ひどくのどが乾いていたからです。飲み終わると、しばらくのあいだ氷の上に座り込んで休みました。その時、木こりたちが目を覚ますおそれなど気になりませんでした。それに、もうなんにも食べようという気が起こりませんでした。

そらからとうとうふとっちょあらいぐまは、立ち上がりました。とてもおかしな感じがしました。おかしいのは、お腹が張っている感じがするせいでした。彼のわき腹は、もはややせていませんでした。冬が来る前のようにつき出ていました――でも、それ以上でした。これにはふとっちょもぎくりとしました。みるみるうちに、どんどんどんどんわき腹がつき出していくようなのです。

自分はいったいなにを食べたのかしらと、ふとっちょは首をかしげました。リンゴのような味のする乾いたもの――これはいったいなにかしら。

さて、このスポンジのようにふかふかで平べったい、おかしなものが入った箱の外側には、ラベルが貼ってありました。もちろんふとっちょあらいぐまは字が読めませんから、彼にはこれがまったく役に立ちませんでした。けれど、字が読めるくらいに大きいみなさんがこの箱のラベルを見たならば、こんなふうに読むでしょう。

『エバ・アップル』。

エバ・アップルというのは、乾燥リンゴのことにほかなりません。木こりのキャンプの調理人は、これを使ってアップルパイを作っていました。調理人はパイを作り始める前に、いつも最初にこの乾燥リンゴを水につけてふやかしておきます。すると、乾燥リンゴはふくれ上がります。

さて、どうしてふとっちょあらいぐまがひどくおかしな感じがして心地わるくなったのか、みなさんはおわかりですね。彼は最初に乾燥リンゴを食べたのです。そして小川の水を飲んだことにより、お腹の中で乾燥リンゴをふやかしてしまったのです。彼のわき腹がつき出したのも不思議ではありません。丸呑みしたリンゴの切れはしがぷうっとふくらんで、お腹が破れつしそうになるまでに大きくなってしまったのです。実際のところ、ふとっちょがお母さんの家にたどり着いたとき、戸口の穴をくぐり抜けられたのが不思議なほどでした。

ふとっちょは小さくウーンとうめき声を上げ、なんとか戸口をくぐり抜けました。これにはお母さんもぎょっとしました。

「お前が食べたのが毒でないことを祈るばかりだよ」ふとっちょが自分のしたことを話すと、お母さんが言いました。

この言葉に、ふとっちょはますますおびえました。彼はもう一生よくなることはないのだと信じ込みました。

哀れなあらいぐま夫人は、その夜中たいそう心配しました。けれど朝になると、ふとっちょが峠を越えたことを知りました。どうしてわかったのかというと、ふとっちょがこう言ったからです。こうですよ。

「あーあ! なにか食べたいなあ!」


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