寝つかせ話:ふとっちょあらいぐまの物語 アーサー・スコット・ベイリー

ふとっちょとグリーン農場のとうもろこし


その夏のさかり、ふとっちょあらいぐまは、一生のうちでいちばん素晴らしい時をすごしていると信じていました。のちになり、年寄りになってもまだ、そう思っていました。彼が幼いあらいぐまだったとき、お母さんがびっくりするところに連れていってくれたときのような楽しい出来事は、二度となかったのです。

もちろん、食べるところですよ――びっくりするところというのは。みなさんは、ふとっちょあらいぐまのことはもうご存知ですから、きっとそうだろうとお思いになったでしょう。

「おいで、子どもたち!」あらいぐま夫人が言いました。「わたしについておいで! びっくりするようないいところに連れてったげるよ――とっておきのすてきなところだよ」

「食べにいくの?」ふとっちょがたずねました。ふとっちょたちは、農夫のグリーンの農場にむかって歩いていました。

「そうよ――お前がこれまで食べた中で、いちばんおいしいごちそうだよ」あらいぐま夫人が言いました。

ふとっちょは大いに興奮しました。月明かりの下で、彼のつぶらなかがやく目が、緑色に変わりました。どんなびっくりするごちそうがあるのかしらと思いました。いつものことですが、彼は腹ぺこでした。彼は、お母さんにぴったりくっついて歩きました。びっくりするようなごちそうを、まっさきに味見したかったからです。みなさんは、ふとっちょが二人の妹に最初に味見させてあげると思うでしょう。それに、弟の黒っちょにも。しかし、ふとっちょは食いしんぼうだということを忘れてはなりません。食いしんぼうというのは、ほかの人を思いやったりしないものなのです。

あらいぐま夫人は、小道をわきに反れ、柵の下を腹ばいになってくぐり抜けました。ふとっちょは、横木のすきまを無理やり通り抜けました。彼にしては、とても素早い身のこなしでした。

「ここだよ!」お母さんが言いました。

ふとっちょは辺りを見まわしました。そこは、背の高い茎の植物が空高く生いしげった畑の中でした。茎の植物は青あおと色づき、リボンのような形の葉っぱは、根もとから半分だけ空にむいて立ちあがり、先っぽはひらひらと垂れ下がっていました。ふとっちょは、不満にうめき声をあげました。とてもおぎょうぎが悪いですよね。

「ねえ――おいしい食べ物ってなんなのさ?」ふとっちょは言いました。「こんなのおいしくないじゃないか。アシみたいな味がするよ」彼は、すでに茎の一本をかじっていました。

「あれはなんと呼ぶの?」あらいぐま夫人がたずねました。彼女は、茎の一本から伸びている、緑色の皮で巻かれた長いものを、ふとっちょに指ししめしました。

「ガマの穂みたいなやつさ」ふとっちょが言いました。「食べたっておいしくないよ」

「食べてみたことがあるのかい?」お母さんがたずねました。

「ううん」ふとっちょは言いました。「でも、アオカケスのフレディがおいしくないって言ったよ」

「フレディがそう言ったの?」あらいぐま夫人は、それ以上なにも言いませんでした。彼女は後足で立ちあがると、背の高い茎の一本を、下に引っぱりました。そして、茎から伸びている緑色の皮に巻かれた長いものを、前足でつかみました。次の瞬間、彼女は茎から緑色の長いものをもぎ取りました。それから、長いものから緑色の皮をはぎ取りました。「かじってごらん!」あらいぐま夫人は、にっこり笑って言いました。

もちろん、ふとっちょがまっさきに味見しました。彼は、白い粒つぶを口いっぱいにほおばりました。そして、大喜びしました。なんて甘いんだろう! このまったりとした汁のおいしさはどうだろう! この瞬間のことを、ふとっちょは生涯忘れませんでした。

ふとっちょは、自分で茎からもぎ取り始めました。そして、ひと息つくためにとうとう食べるのを止めるまで、ひと言もしゃべりませんでした。

「これはなんという名前なの、お母さん?」ふとっちょがたずねました。

「とうもろこしと言うんだよ、ぼうや」

「アオカケスのフレディは、どうしてこれが嫌いなんだろう?」ふとっちょが言いました。

「たぶん大好きなのさ」あらいぐま夫人は言いました。「心配だったんだよ。お前がこれを食べ始めたら、畑を全部食べつくしちまうんじゃないかってね」

「そうしたいなあ」ふとっちょは、ため息まじりに言いました。「世界中のとうもろこしを全部食べちゃいたいよ」


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