寝つかせ話:ふとっちょあらいぐまの物語 アーサー・スコット・ベイリー

ジョニー・グリーン、ペットをとり逃す


さて、農夫のグリーンと作男は、すぐに木を切るのを止め、息をつきました。ふたりは少しの間しか切っていませんでした――けれど、まあ! 大きなクリの木に、大きな穴がぱっくりと口を開いていました! ふとっちょあらいぐまは、しがみついていた大枝から、下を見おろしました。木はもうそれ以上ゆれませんでした。ふとっちょは、また安心しました。ほら、前の晩のジョニーのように、行ってしまうのだと思ったものですからね。けれど彼らは、そんなつもりはちっともありませんでした。

「彼女をどっちに倒すんですかい?」作男がたずねました。"彼女"というのは、"木"のことですよ、もちろんね。

「こっちだ!」農夫のグリーンは、森のほうを指さして言いました。「こっちに倒さないといかん。さもないと、彼女が道をすっかりふさいじまう。もちろん、そんなことは絶対にするわけにいかんよ」

「しかし、彼女、森のはしの木をなぎ倒しちまうんじゃないかね?」作男は、いくぶん疑わしげな顔をしました。

「ああ、たしかに――たしかにな!」農夫のグリーンが答えました。

そして、ふたりはふたたび仕事を始めました。けれど今度は、ふたりそろって木の同じがわを切りました――森のほうのがわをです。

さて、前回ふとっちょあらいぐまがおびえたとしたら、大きなクリの木がかしぎ始めたとき、彼がますますおびえたことを、みなさんも疑わないでしょう。そうなのです! クリの木が、森のほうに向かってかしぎ始めたのです。ゆっくり、ゆっくり、かしいでいったのです。ふとっちょは、恐ろしさに半分くるったようになりました。彼は木のてっぺんに登りました。できるだけ人間たちから遠ざかっていたかったのです。そして、待ちました。ほかにどうすることも出来ません。そうですとも! 彼は、木が音をたてて地面に倒れる、来るべき恐ろしい瞬間がおとずれるのを待ちました。それから、なにが起きるのかしら? ふとっちょは、首をかしげました。彼が考えている間に、木が裂けるメリメリという大きな音が、一どきに鳴りひびきました。ふとっちょは、木がどんどん、どんどん、かしいでいくのをかんじました。ジョニー・グリーンがさけび声をあげるのが聞こえました。ふとっちょは、目をかたく閉じ、枝にしっかりとつかまりました。それから、ドシンという衝撃におそわれました。

目を開けたとき、ふとっちょあらいぐまは、ジョニー・グリーンがいまにも自分をつかまえようとしているところが見えるのだと思っていました。ところが、おどろいたことに、地面はまだずっと下のほうにありました。ですからね、農夫のグリーンは、勘ちがいをしていたのですよ。大きなクリの木は、グリーンが見当をつけていたよりもずっと高かったし、森は、彼が考えていたよりもずっと近かったのです。そのために、ふとっちょがしがみついていた木は、地面にたおれる代わりに、森のはしのほかの木の上にたおれかかったのです。ほかの木の枝が、大きなクリの木の枝をしっかりととらえ、半分かしいだかっこうで横たわったのです。

ジョニー・グリーンがさけび声をあげたのも、むりはありません。ふとっちょが大きなクリの木からとなりの木によじ登るのを見て、ジョニーはいっそう大きなさけび声をあげました。そこからまたとなりの木に移り、そのまたとなりの木に移ると、ジョニーの声はどんどん大きくなりました。ふとっちょは、そのまま森に入っていきました。

ジョニー・グリーンがさけび声をあげたのも、むりはありません。自分のペットのあらいぐまを逃してしまったのですから。まだ一度もつかまえないうちからとり逃してしまったのですから。ジョニーはひどくがっかりしました。

でも、ふとっちょあらいぐまは、がっかりしませんでした。ペットになんか、ちっともなりたくなかったのですから。そして、大よろこびしました――みなさんだってそうでしょう――ふたたび安全なわが家に帰ることができるのですから。


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