気のよい連中のための学術的寓話 マーク・トウェイン 第一部

森の動物が科学探検隊を派遣した顛末


かつて森の生き物たちが大会合を開いて、自分たちのもっとも高名な科学者たちの委員会を任命し、森を突破して知られざる未踏の世界に行って、彼らの学校や大学でそれまで教えられてきた事柄が真実であるか検証し、加えて発見を行わせた。それはこれまで種族をあげて取り組んだ計画の中でも、もっとも壮大なものだった。確かに、かって政府はウシガエル博士に精鋭チームを率いさせて、森の右の角の沼地を抜けて北西へと向かう通路を探させた。その後、何隊もの探査隊がウシガエル博士を探しに送られたが、彼を見つけ出すことはできなかった。それでとうとう政府は彼のことをあきらめて、彼の母親に爵位を授けて、その息子が科学にたいして行った奉仕に謝意を表したのだった。さらに、政府はバッタ卿を派遣して、沼地に注ぐ小川の水源を探させた。その後、多くの探査隊がバッタ卿を探しに派遣され、ついには成功した。彼の死体を発見したのだ。しかし、彼がその間に水源を発見したかどうか、彼は明らかにしていなかった。そこで、政府は死者を丁重に扱い、多くの者がその葬儀に参列した。

しかし、こうした探検は今回のものに比べると、とるに足りないものであった。というのも、今回の探検の参加者には、学識者の中でももっとも優れた者たちが含まれていたし、その上、前にも言ったように、広大な森のむこうにあると信じられている、全く未踏の地域に行くことになっていたのだから。探険隊のメンバーは、祝宴でもてなされ、栄誉を与えられ、多いに噂の種となった。どこであれメンバーの誰かが姿を現すと、たちまち人垣ができて、あんぐり口を開けて彼を見つめた。

とうとう探険隊は出発した。隊員や科学器具、信号係のツチホタルやホタル、糧食、ものを取ってきたり運んだり穴を掘ったりするするためのアリやタマオシコガネ、測量索を運び、その他工学的職務を果たすクモ等々をぎっしり満載したリクガメの長い行列は見ものだった。リクガメの後には、もう一つ長い装甲の列が続いた。水上交通の役を担う堂々として荘重なドロガメの列だ。どのリクガメからもどのドロガメからも、燃え立つようなグラジオラスやらなにやらの華麗な旗が翻っていた。隊列の先頭には、マルハナバチ、蚊、キリギリス、コオロギの大きな群がいて、勇ましい音楽を奏でていた。そして全隊列は、ヨトウガの幼虫の十二の選抜連隊に護衛されていた。

三週間目の終わりに探険隊は森を抜け、大きな未知の世界を見渡した。彼らの目に映ったのは、素晴らしい光景だった。彼らの前には広大な平原がひろがり、蛇行した流れが潤していた。そのむこうには、なにか長くて高い障壁が空に向かってそびえていた。タマオシコガネが言うには、それは端に向かってせり上がったただの土地だと思う。なんとなれば、その上に木々があるのがわかったからだ、と。しかし、カタツムリ教授やその他の面々はこう言った。

「あんたは穴掘りに雇われとる。それだけのことじゃ。わしらが必要なのは、あんたの筋肉であって、脳味噌じゃない。科学的な事柄についてあんたの意見を聞きたいときは、急いで知らせるから。あんたの図々しさってのも耐えられんのじゃ。他の作業員がキャンプを張っているときに、ここらをぶらついちゃ、厳粛なる学問の対象にちゃちゃをいれるんじゃからの。とっとと行って、荷物を片付ける手伝いでもしなされ。」

タマオシコガネはへこみもせずに平然と踵を返しながら、自分にこう言い聞かせた。「せり上がった土地じゃなきゃ、おいらは地獄行きだろうよ。」

ウシガエル教授(先の探険家の甥にあたる)は、この高みは大地を囲う壁だと思うと言った。そして続けて、こう言った。

「ぼくらの祖先は多くの知識を残してくれたが、彼らは遠くまで旅したことはなかった。それで、ぼくたちはこれをすばらしい新発見の一つとしてもよいだろう。たとえぼくらの労力が、この成果一つだけで始終するとも、今やぼくらの名声は保証されているんだよ。この壁は何からできてるのかな。キノコからかな。キノコは壁をつくるには立派な素材だからね。」

カタツムリ教授は自分の双眼鏡を調整して、城壁を注意深く検証したが、やっとこう言った。

「これが透明でないという事実から、わしはこう確信する。これは、屈折によって脱燃素化した上昇する湿気の発熱により形成された濃密な蒸気なんじゃ。わずかの内部計量的実験だけでこのことは確証されるじゃろうが、それは必要ない。ことは明白なのじゃ。」

そうして彼は双眼鏡を閉じると、世界の終端の発見とその本性を記録するため、殻の中にひっこんだ。

「深遠な知力だこと!」とミミズ教授がノネズミ教授に言った。「深遠な知力!尊厳なる頭脳にとっては、どんなものだって神秘のままではいられないよ。」

夜がたちまち迫ってきて、歩哨のコオロギが配置につき、ツチボタルやホタルの灯がともり、キャンプは静まり眠りについた。翌朝、朝食が済むと、探険隊は出発した。正午ごろには、大きな街路に到達した。そこには、なにやら固くて黒い物質でできた、二本の果てしなく続く平行な棒があったが、それは水平面より一番背の高いウシガエルの高さほど高くなっていた。科学者たちはそれによじ登り、さまざまな方法で検証し検査した。彼らはかなりの距離をそれに沿って歩いてみたが、途切れることがなかった。彼らはなんの結論にも至りえなかった。なにかこんなものを記述した科学上の記録はまったくなかったのだ。しかしとうとう、禿げていて、威厳に満ちた地理学者のドロガメ教授、この人は貧しい生まれで、あくせく働く下層の一族の出であるが、もって生まれた力量で当代の地理学者の指導的地位にまでのし上がったのだが、この教授がこう言った。

「諸君、われらはここで、まさしくある発見を成し遂げたのじゃ。御先祖の中でももっとも賢明なる御先祖が単に想像上のものと見なしたものをば、われらは明白かつ簡潔にして不滅の状態で見つけたのじゃ。諸君、恐れ入るのだ。なんとなれば、われらは尊厳たる存在の前に立っているのだから。これは緯線なのだぞ!」

発見の重大さがかくも大きく、かくも崇高だったので、だれもが、心から敬意を表し頭を下げた。多くの者が涙を流した。

キャンプを張り、一日の残りは驚嘆すべきことについての膨大な報告を書き、それに適合するよう天体表を修正することに費された。真夜中ごろ、悪霊のような金切り声が聞こえ、それからガタガタゴトゴトという騒音がした。次の瞬間、長い尾のついた巨大な目がふいに光ったと思うと、暗闇に消えた。勝ち誇った金切り声はまだ聞こえていた。

哀れなキャンプ作業員は驚いて肝をつぶし、一団となって丈の高い草むらに逃げ込んだ。しかし科学者たちはそんなことはしなかった。彼らは迷信なんか信じていなかったのだ。彼らは静かに理論をやりとりしている最中だった。老地理学者の意見が尋ねられていた。彼は甲羅に引っ込んで、長いこと熟慮を重ねた。やっと彼が甲羅から顔を出すと、その敬虔な顔つきから、彼が手がかりをつかんだのは、だれにもわかった。彼はこう言った。

「われらが立ち会うことを許されたこの素晴らしいことに感謝しよう。これは春分なのだ!」

みんな、歓声を上げ、大喜びした。

「しかし」とミミズが言った。「今は夏の盛りだ。」

「ごもっともだが」とドロガメ。「われらは故郷からはるかに離れておる。二つの地点の間の時間の違いで季節も異なるのだ。」

「なるほど、さようですな。しかし今は夜。夜中に太陽がどのようにして通過するのでしょうか?」

「こういう離れた土地では、太陽はいつも夜中のこの時間に通り過ぎていくのだ。」

「確かに、そうでしょうとも。しかし、夜なのに、どのようにして、ぼくらは太陽が見えるのでしょう?」

「それは大いなる謎なのだ。それは認めよう。しかし、円盤に日光の粒子を付着させるのは、こういう離れた土地の大気の湿気であり、そのおかげで、われらは暗闇の中で太陽を見ることができるのだと、確信しておる。」

この意見は十分満足できるものに思えたし、あって当然の事柄は結論にはいっていた。

しかし、その頃、またあの恐ろしい金切り声が聞こえ、ゴロゴロと轟く音が再び夜の闇から速度を上げながらやってきた。そしてもう一度ギラギラ光る大きな目がさっと通り過ぎ、闇の中へ遠ざかって消えた。

キャンプの作業員たちは驚きあわてて我を失った。学者たちは途方に暮れてしまった。それは説明できないような不思議なことだった。彼らは考えてはしゃべり、しゃべっては考えた。学識豊かで年老いたメクラグモ卿は、座り込んで研究に没頭していたのだが、ほっそりした脚をからませ、茎のような腕を組んで、とうとう、こう言った。

「同志諸君、君たちの意見をのべたまえ。さすればわしの考えを披露しよう。なんとなれば、わしはこの問題が解けたと思うから。」

「さようでございましょう、閣下」と、しわだらけのワラジムシ教授が弱々しいかん高い声で言った。「といいますのも、我らが閣下の口から聞くものは、無意味なものではなくて、知恵ある言葉でございますからね。」[ここで話し手は、ありきたりで、陳腐で、苛々するような、昔の詩人や哲学者からの引用のごった煮を差しはさんだが、その引用をもとの言葉の仰々しい華麗さで述べようとするあまり、マストドン語やドードー語などの死語で引用した。]「このような主張で、おそらく、私が天文学に関わる事柄をあえて持ち出す必要などないでしょうが、死に絶えた言語の富の中、絢爛たる古代の伝承をほじくりかえすことを終生の仕事としております私は、壮大なる天文学には不案内であるとはいえ、何卒言わせていただきたいのですが、ついさっき起こったこの不思議な現象は、貴殿が春分であると結論づけられた最初の現象で起こったのとはまるで正反対にことが進みますが、あらゆる特徴は非常に似ていることから、ありそうにないとはいえ、確かに、先ほどのは秋分…」

「うぁあ!黙れ、黙れ!」皆が、うんざりした嘲笑とともに叫んだ。それで哀れな年老いたワラジムシ殿は恥ずかしさでいっぱいになり、退散した。

さらに議論は続いたが、それから委員会の一致した声として、メクラグモ卿に意見を述べるよう求めた。彼はこう言った。

「科学者諸君、わしの信じるところでは、これまで知られるかぎり完全に起こったことは一度しかないことを、我らは目撃したのだ。普通に見ても、それは信じられぬほど重大でまた興味深い現象だが、これまでどの学者も知らず、また感づくことさえなかった、その本質についての知識が得られたということから、我らにとってのその重要性は、いやが上にも大きなものなのだ。我らがまさに立ち会ったこの驚くべきことは、科学者諸君(わしはもう息もつけぬほどだが)、金星の通過にほかならぬ!」

どの学者も驚愕のあまり色を失い、跳び上がった。それに続いたのは、涙と握手、熱狂的な抱擁、それからありとあらゆる乱痴気騒ぎだった。けれどだんだん感情が落ち着き、分別が戻ってくると、熟達した主任監察官のトカゲがこう述べた。

「しかし、そりゃどういうことだ。金星は太陽表面を横切るのであって、地球の表面じゃないぞ。」

矢は急所を射た。これが手ごわい批判であることを誰も否定できなかったから、そこにいた学問の使徒の胸は悲嘆にくれた。しかし気高きメクラグモ公爵はもの静かに脚を耳の後ろで絡ませて、こう言った。

「我が友は我らが大発見の核心に触れなさった。さよう、我ら以前の者たちはみな、金星の通過とは、太陽面上の移動だと思っていた。連中はそう考え、それを支持し、無邪気にも心底からそう信じてきたのだが、連中の知識の制約からはそれも無理からぬこと。しかし、我らには通過が地球面上でも起こることを立証するといういう貴重な恩恵を受けたのだ。というのも、我らはそれを見たのだから!」

集まった学識者たちは、この堂々たる知者への言葉に表せないような崇拝を抱いて座り込んでいた。あらゆる疑念はたちまち去った。稲妻の前に暗闇が消えるように。

ちょうどタマオシコガネが、気づかれぬように割り込んできた。彼は今や学者連の間を、よろけながら進み、あちらこちらと親しげに肩を叩いては、こう言った。「すばらしい(ひっく!)すばらしい、おっさんじゃ!」そして、わざとらしい微笑みを浮かべていた。しゃべるのに絶好の位置にくると、彼は左腕の肘を張って、モーニングコートの裾のちょうど下にある腰の関節にあてがい、右脚を曲げて、爪先を地面におき、踵を寛いだ様子で左脛にあて、役人然とした腹をぷっくり膨らませ、口を開けて、右肩をトカゲ監察官の肩にその右肘で寄りかかり、それから…

けれど、その肩は憤然として引っ込められ、節くれだった苦労人は地面に倒れた。彼はちょいともがいたが、微笑みながら立上り、以前同様に入念に気をつかった態度をとって、今度はダニ教授の肩を支えにして、口を開いたが、それから…

またも地面に倒れた。やがて彼は、まだ微笑みながら、もう一度はい起きると、ゆったりと上着や脚の塵を払ったが、彼の手はまるで機敏に動かず、抑制を失った衝撃の力で、体がごろりと突然回って、脚が絡まり、メクラグモ卿の膝の上に腹這いになった。二、三人の学者がぱっと飛び出して、下司野郎をまっさかさまに隅に投げ飛ばし、貴族閣下を元のように助け起こし、追従やら遺憾の言葉で崩れた体面を繕った。ウシガエル教授がわめいた。

「こんなことは二度とやるんじゃない。こら、タマオシコガネめ!言いたいことを言ったら、さっさと自分の仕事に精を出せ。急いで、お前の用向きを言え。些細なことは忘れろ。馬小屋のような匂いがするぞ。あそこで何をやっていたんだ。」

「あの(ひっく!)その、旦那、おいら、たまたまめっけ物を見つけまして。でも、そ(おぇ!)そりゃたいしたもんじゃありません。もうひとつ、めっけ物があ(ひっく!)ありまして。失礼、閣下、その、最初にここをつっ走ったやつ(ひっく!)は、何と言いましたかな?」

「春分だ。」

「ご(ひっく!)獄分。さよう。そ(ひっく!)そうでしたな。で、もうひとつのほうは?」

「金星の通過」

「わ(ひっく!)分かり申した。たしたことはない。あ(ひっく!)後の方のやつが、何やら落としていったんで。」

「あ、なるほど。そりゃいい。よい知らせだ。早く言え。それは何だろう?」

「ぶ(ひっく!)ぶらついていって、見たんで。そりゃ儲け物だろね。」

二十四時間の間、なんら採決は行われなかった。それから次の記載がなされている。

「委員会は一団となって発見物を見に行った。それは堅くなめらかな大きな物体からできていて、てっぺんは丸くて、真横に折ったキャベツの茎の断面に似た短い垂直な突起がついていた。この突起は中まで詰まっているのではなく、中空の円柱で、我々の地域では見たこともない軟らかな木質の物質で栓がしてあった。というか、栓がしてあったのだが、あいにく、この塞栓は無思慮にも、我々が到着する前に、工兵と地雷兵の隊長のドブネズミが取り除いてしまった。きらめく空間領域からこのように不可思議にももたらされた巨大な物体は、中空で、しばらく溜め置いた雨水のような、茶色っぽい色の刺激性の液体でほぼ一杯に満たされていることがわかった。だが、我々が目にしたのはなんたる光景か。ドブネズミがてっぺんにとまり、中空の突起にその尾を入れては、液を滴らせながら引き上げ、押し寄せる作業員に尾の先をなめさせていた。そして、すぐまた尾を挿し入れては、前と同じように群集に液体を与えていた。明らかにこの液体は、奇妙にも精神に影響を及ぼす性質があった。というのは、これを飲んだ者はみな、すぐに高揚した愉快な気分になり、千鳥足でふらついて、猥雑な唄を歌い、抱擁し、喧嘩し、踊り、罰当たりな言葉を吐き散らし、あらゆる権威に反抗した。我々の周囲には一団となった統制のとれてない群集が入り乱れていた。統制がとれていないばかりか、統制のとりようもなかった。というのは、全軍隊が、歩哨にいたるまで、飲物のせいで、その他の連中と同様、乱痴気状態だったのだ。この無謀な連中にとりまかれ、一時間もたたないうちに、我々は、いや我々でさえ、残りの連中と見分けがつかなくなった。風俗壊乱は完璧で万人共通だった。そのうち、キャンプはどんちゃん騒ぎに疲れ果て、ぼんやりとした嘆かわしい人事不省に陥って、その不思議な結束力で階級は忘れ去られ、奇妙な同衾仲間が出来上がり、あの我慢ならない悪臭のするゴミあさりのタマオシコガネと高名な貴族である我が敬愛するメクラグモ公爵とが、ぐっすり眠り込んで、お互いの腕を仲睦まじくからめているという信じがたい光景を見て、我が目は、復活の日のごとく見開かれ、我が魂はすくみ上がった。こんなことは、歴史始まって以来、あったためしがなく、また疑いもなく、この恐ろしい罪深い光景を見た我々を除けば、この世には、これを信じないようにすることに信仰を見出す人は、一人としていないだろう。神のなされることは、このように不可解ではあるが、神はそれを成し遂げられるであろう!

「この日、命令によって、技師長のクモ氏は、大きな貯蔵器をひっくり返すために必要な装置を装着した。そうやって、その災難をまき散らす内容物を排出して、乾いた大地のうえに流し出した。大地はその液を飲み干し、もはや危険はなくなったが、実験と精密検査のために供するとともに、王様のお目にかけ、その後、博物館の陳列品に加えるため、我々はそのうち数滴を保存した。この液体が何であるかは結論が出ている。疑いもなく、これは稲妻と呼ばれている猛烈で破壊的な流動体なのだ。これは雲の中の貯蔵所から、飛来する惑星の抗いがたい力で、もぎとられ、惑星が通り過ぎたとき、我々の足元に投げ落とされたのだ。ここから興味深い発見が生じる。つまり、稲妻は、それ自身であるかぎりは、無活動なものであり、雷鳴が強引に接触することで、束縛状態から開放され、その恐ろしい火焔に点火し、瞬時の燃焼爆発が生じて、地上のはるか広範囲に災厄と破壊をまき散らすのだ。」

次の日を休息と回復に当てた後、探険隊はその道を進んでいった。数日後、探険隊は平原の心地よい場所にキャンプを張ったが、学者たちは何か発見しようと勇んで出かけた。その褒美はすぐ手に入った。ウシガエル教授が奇妙な木を発見して、仲間を呼んだのだ。彼らは非常な興味を抱いて、この木を調べた。それは非常に高くてまっすぐで、樹皮も大枝も葉もまるでなかった。三角測量でメクラグモ卿はその高さを決定し、クモ氏は根元の周の長さを測って、上方へむかって細くなる度合が一様であるという根拠に基づく数学的論証によって、頂上の周の長さを計算した。これは非常に珍しい発見と思われた。これまで未知の種の木であったから、ワラジムシ教授はその木に学名を与えたが、それは古代マストドン語に翻訳したウシガエル教授の名前にほかならなかった。というのは、発見者を発見物に結びつけて、その名を永遠のものとし、このように発見物に結びつけることで発見者の名誉を讃えるのが、いつもの習いとなっていたのだ。

さて、ノネズミ教授が、その鋭敏な耳を木にあててみると、そこから豊かで調和のとれた音が出ていることに気づいた。それぞれの学者は替わるがわるこの驚くべきことを試しては楽しんだが、誰もが大いに喜び、驚いた。ワラジムシ教授は、この木がもつ音楽的性質を示すよう、木の名前になにか付け足して長くするよう求められた。それで教授は、聖歌の歌い手という付加語を、マストドン語に訳して付与したのだ。

この頃までには、カタツムリ教授は何度か双眼鏡で観測していた。彼はこうした木が多数あり、彼の器具で見える限り、広い間隔をとって、一列になって、北の方にも南の方にも続いていることを発見した。やがて、彼はこうした木が、頂ちかくで、十四本の大綱で互いに結ばれていることも発見した。この綱は、彼の目にした範囲では、木から木へと連続していた。これには驚いた。クモ技師長は頂上に登り、すぐにこの綱は、自分の種の巨大な仲間がかけた、ただのクモの巣であると報告した。なぜなら、あちこちに撚り糸から獲物がぶらさがっているのが見えたというのだ。それは織物のまわりに織り込まれたように見える大きな断片やぼろ布のような形をしていたが、捕食された巨大な昆虫の捨てられた皮に違いなかった。それから彼は、もっと綿密な調査をしようと一本の綱の上を走ったが、足の裏に刺すような突然の痛みを感じたが、それには麻痺させるような衝撃があって、それで彼は手を離し、自分で吐いた糸にぶら下がって地上に降りた。そして、怪物が現れ、学者がその怪物とそれがつくり出したものに興味を持つのと同様、怪物のほうも学者に興味を持つといけないので、全員に急いでキャンプに戻るよう忠告した。それで彼らは急いで出発し、歩きながら巨大なクモの巣のことを記録した。その晩、探険隊の博物学者が巨大グモの美しい模型をこしらえたが、そうするのに、そのクモを見る必要はなかった。なぜなら、彼は木のそばで、その椎骨の破片を拾い、この単純な証拠品から、その生き物がどんなふうに見えるか、その習性や好みが分かったからである。彼は尾、歯、十四本の脚、それに口吻のついた模型をつくり、このクモが草や家畜、小石、泥を同じように貪り食うと言った。この動物は科学に極めて貴重な貢献をなすものと考えられた。剥製にするために死体が見つかるとよいのにという期待もあった。ワラジムシ教授は、自分や仲間の学者が、隠れて静かにしていれば、生きたものを捕獲できるかもしれないと考えた。彼はやってみるよう勧められた。彼の提案に払われた注意はそれだけだった。会合は、怪物に博物学者からとった名前をつけることをもって、終了した。なぜなら、博物学者は、神の次に、この怪物を創り出したのだから。

「おまけに改良したかもな。」とタマオシコガネがつぶやいた。彼は、怠け癖と抑えようのない好奇心から、またしても闖入してきたのだ。


目次 次へ >>
©2006 Ryoichi Nagae 永江良一. クリエイティブ・コモンズ・ライセンス 表示-継承 2.1 日本