ロウソクの科学 マイケル・ファラデー

燃焼の産物――水の性質――化合物――水素


前回お別れしたときには、ロウソクの「産物」ということばを持ち出したのは、もちろんご記憶だろうと断言しちゃいましょう。ロウソクが燃えるときには、うまい工夫をすれば、いろいろな産物をそこから取り出せましたよね。ロウソクがきちんと燃えているときには得られない物質が一つあって、これは炭素や煙でした。そして炎から上昇していく物質もありましたね。これは煙にはならず、別の形であらわれてきて、ロウソクから上のほうに上がっていく気流の一部になって、透明なかたちで逃げ去っていきます。ほかにもふれておくべき産物はあります。ロウソクから出てくる上昇気流では、一部は冷たいおさじやきれいな皿みたいな冷たい面をかざすと、凝集しましたね。そして凝集しない部分もありました。

まずは凝集する部分を見てみましょう。するとですね、ロウソクの産物のこの部分は、ただの水だというのがわかります――なんの変哲もない水。こないだこの話をしたときには、これについてはさらっとしか述べませんでしたね。ロウソクの凝集する産物の中には、水も作られてるんですよ、と言っただけでした。でも今日は、この水にちょっと注目してもらいましょう。ロウソクとの関わりでもっと細かく検討しますし、地球の表面のいたるところにあるという点でも考えてみましょう。

さて、ロウソクの産物から水を凝集させる実験をやったから、次にこの水をお見せすることにしましょう。そして、水があることをこれだけ大勢の人にまとめて示すいちばんいい方法は、目に見えるような形で水の働きをお見せしてから、この容器の底に集められた滴に同じ試験をしてみることでしょう。ここにあるのはハンフリー・デイヴィー卿が見つけた化学物質で、水に触れるととても激しい反応を示します。これを使って水の存在を試してみましょう。この物質をちょいととって――これはカリウムというもので灰汁からとれるんですよ――こいつをちょいととって、たらいに投げ込むと、水面に浮いて燃え上がって、紫色の炎をたてます。これで水があるのがわかりますね。ではこんどは、塩と氷を入れた容器の下で燃えていたロウソクをどけます。すると容器の底に水滴が見えます――ロウソクの産物が凝集したんですな――お皿の底の面にぶらさがっています。カリウムは、さっきの実験でのたらいの水と同じ反応を、この水滴に対しても示します。それを見てみましょう。ほら! 炎があがって、まったく同じように燃えます。もう一滴とってこのガラス板の上において、カリウムを乗せると、炎があがるから水があるのがすぐわかりますね。この水はロウソクからできたものです。同じように、このアルコールランプをあのびんの下に置くと、びんに蒸気がついて曇ってきます――この露も燃焼の結果です。そして下の紙に水がそのうちたれてくるので、ランプが燃えて水がかなりできているのがわかるでしょう。しばらくこのままほっときますね。あとで水がどれほどたまったか見てください。で、ガスランプを持ってきて、なんでもいいから冷やすような仕掛けを上につくると、これも水ができます――ガスが燃えても水ができるんですね。こっちのびんの中には、水がたっぷり入っています――完全に純粋な蒸留水で、ガスランプを燃やしてつくったものです――この水は川や海や泉の水を蒸留したものと何のちがいもありません。完全に同じものです。水は一つの独立した物体です。決して変わりません。慎重に工夫してやれば、しばらくの間は別のものを追加はできるし、分離して別のものを取り出すこともできます。でも水としての水は、いつも同じままで、固体だろうと液体だろうと、流れていようと水は水です。こちらにも [と、別のびんを手に取る]、オイルランプの燃焼からできた水があります。オイルを一パイント、きれいにきちんと燃やすと、一パイント以上の水を作り出します。こっちにはまた、かなり長時間の実験を経て、ワックスのロウソクからとった水があります。こんな具合に、燃えるものほとんどすべてについて、この調子で水がとれます。ロウソクみたいに炎をあげて燃えると、水ができるんです。この実験は自分でもやれますよ。火かき棒の先でやってみるととてもうまくできます。ロウソクの上で冷たいままになっていれば、水が凝集してつぶになります。あるいはおさじとか、お玉とか。きれいで、熱をよく伝えるものならばなんでも使えます。水が凝集するはずです。

さてこんどは――燃えるものから燃焼によって水が見事にできるという仕組みを詳しく見ると――まずはこの水が、別の状態で存在しているんだ、ということをお話ししなくてはなりません。そして水のいろいろな形態はもうすでにおなじみかもしれませんが、でもここで、ちょっと確認しておく必要があります。水が変幻自在に変わる中でも、まったく完全に同じ水で、ロウソクから燃焼でできようと、川や海からとってきても同じだ、ということを理解するためです。

まず、水はいちばん冷たいと氷になります。さてわれわれ科学者は――この場合、わたしとみなさんを同じ科学者というくくりにまとめてかまわないと思いますが――水は水として扱います。それが固体だろうと、液体だろうと、気体状態だろうと――それは化学的には水です。水は2つの物質が化合したものですが、その一つはロウソクからでてきたもので、もう一つは別のところからきています。水は氷になります。これは最近はあちこちでお目にかかる機会がありますね。氷は水に戻ります――こないだの安息日には、この変化の強烈な見本が起きて、我が家や友人たちの家の多くではかなり困った惨事が起きたもんです――氷は、温度が上がると水に戻ります。水は、十分に熱すると蒸気にもなります。いまここにある水は、いちばん密度の高い状態のものです原注3-1。そして重さや状態や形態など各種の性質は変わりますけれど、水は水のままです。そしてそれを冷やして氷にしても、熱で蒸気にしても、体積は増えます。一方ではとても奇妙な形で強力に、そしてもう一方では大規模かつすばらしい形で。たとえば、このブリキの円筒の中にちょっと水を入れます。どのくらい入れているかは、容器の中での水面の上がり具合でわかるでしょう。底から5センチくらいのところまできました。さて、この水を蒸気にして、水が水のときと蒸気のときで体積がどれくらいちがうかをお見せしましょう。

さてこんどは、水が氷になるときを見てみましょう。これをやるには、水を塩と砕いた氷の混合物に入れて冷やすといいんです原注3-2――そしてこうすることで、水が冷えて氷になると膨張するのをお見せしたいんです。このびんは [と一つ手にとって] 強力な鋳鉄でできています。とても強く厚い鉄です――厚みにして1センチ近くあります。これに注意して水を入れて、空気がまったく入らないようにしてから、しっかりふたをします。この鉄の容器の水を凍らせると、氷を閉じこめておけなくなります。中身が膨張するので、容器はバラバラになってしまいます。[と断片を指さす]こんなふうに壊れます。これはもとはまったく同じ容器だったんですよ。じゃあこのびん2つを氷と塩の混合物に入れて、水が氷になるときにはこういうすさまじい形で体積が変わるのをお見せしましょう。

さてその間に、熱を加えたほうの水にはどんな変化が起きたか見てみましょう。液体の状態を失ってきています。これは二、三通りの方法でわかります。こうやって水が沸騰しているガラスのフラスコの口に、時計のガラスをのせてふたをしてみました。なにが起きたか見えますか? カタカタいうバルブみたいに、カタカタと開閉します。沸騰した水から上がってくる蒸気がバルブを持ち上げたり下げたりして、なんとか外にでようとするので、それでカタカタいうんですね。フラスコが蒸気でいっぱいなんだというのもすぐわかるでしょう。さもなきゃ、無理矢理出なくてもいいはずですから。あと、フラスコに入っている物質は、水よりもかなり体積が大きいのもわかります。フラスコ何杯分にもなっているわけで、それがどんどん空気中に出ていきます。でも、水のほうの体積はあまり減った様子はありません。だから水が蒸気になるときには、体積の変化はかなり大きいんだというのがわかります。

こっちの冷たい混合物に、水を入れた鉄のびんを入れてみました。なにが起きるか見てみましょう。びんの中の水と、外の容器の中の氷とでは、水が出入りしたりはしません。でもこの間では熱はやりとりされるので、うまくいけば――というのも、いまはこの実験をずいぶんあわててやろうとしているので――いずれ、冷たさがびんやその中身に影響してきたら、どれかのびんが破裂してパチンという音がするはずです。そしてそのびんを見てやると、その中身は氷のかたまりで、それが鉄の容器の中に一部しかおさまっていません。氷は水よりも体積が大きいので、鉄の容器は小さすぎて入らないのです。氷が水に浮くのはよーくご存じでしょう。男の子が氷の穴から水に落ちたら、氷の上にあがって浮かぼうとしますね。なぜ氷は浮かぶんでしょうか。これを考えて、思索してみましょう。氷はそれをつくる水よりも体積が大きいので、だから氷のほうが軽くて、水の方が重いわけですね。

では、熱した水のふるまいに戻りましょう。このブリキの容器から、すごい蒸気のながれが吹き出してますな! こんな大量に蒸気が出てくるというのは、かなりこいつを蒸気でいっぱいにしたってことでしょう。さてこんどは、水を熱して蒸気にできるんだから、冷気を使えばそれを液体の水に戻せますよ。コップとか、あるいは冷たいものならなんでも、こうやって蒸気にかざしてみましょう。すぐに水でしめってきますよ。水が凝集してきて、だんだんコップも暖かくなってきます――水が凝集してきて、もうコップの横を水がつたいおちてきてますね。水が蒸気の状態から液体の状態に凝集するのを示すのに、もう一つ実験をしてみましょう。さっきのは、ロウソクの産物の一つだった蒸気を、お皿の底に凝集させて水として集めたのと同じやり方です。こうした変化がどれだけ見事に徹底的に生じるかを示すために、このブリキの容器――これはいま蒸気でいっぱいです――を持ってきて、てっぺんを閉じます。外から冷水をかけて、この水というか蒸気が液体に戻るようにしたらどうなるか、見てみましょう。 [講師が容器に冷水をかけると、すぐにひしゃげた。] いまのを見ましたね。ストッパーを閉じたまま、熱を加え続けたら、容器は破裂したはずです。逆に、蒸気が水に戻ったら、容器はこうしてつぶれます。蒸気が凝集したので中が真空になったからです。こういう実験を見せたのは、こういうできごとすべての中で、水をそれ以外のものに変えるようなことはなにも起きていない、ということを示すためです。水は水のまま。だから容器が負けて、内側にひしゃげるわけですな。一方でもし熱を加え続けたら、これは外側に向かって爆発したでしょう。

で、水が蒸気になったときに、その体積はどのくらいになると思いますか? こっちに立方体があります [と30センチ角の立方体を指さす]。横に、2.5センチ角の立方体があります。形は30センチ角のものとまったく同じですね。この体積の水 [と2.5センチ角をさす] は、蒸気になるとこの体積 [30センチ角の立方体] にまで広がります。そして逆に、こんな大量の蒸気を冷やしてやると、こんなわずかな量の水になっちゃうんですね。 [このとき、鉄のびんが一つ破裂。] おお! びんが一個、破裂しましたね。ほら、こうして幅3ミリくらいの割れ目ができてます。 [びんがもう一つ破裂し、凍った中身をそこら中に飛び散らせる。] びんがもう一個破裂しました。このびんの鉄は厚さ1センチもあったんですけれど、氷がそれをあっさり破りました。こういう変化は、水ではいつも起こっています。こんな人工的な形でつくる必要はありません。ここで人工的にやったのは、長く厳しい本物の冬ではなく、この小さなびんのまわりにだけ小さな冬を作りたかったからです。でもカナダとか、あるいは北部に行けば、外の気温だけで、この氷水と同じようなことが起きるのが見られますよ。

さてわれわれの静かな考察に戻りましょう。この先われわれは、水に生じる変化には惑わされないようにしましょう。水はどこでも同じです。それを海からとろうと、ロウソクの炎からとろうと。では、ロウソクから出てくる水というのは、どこにあったのでしょうか。ここでちょっと先回りさせてもらって、答えをいっちゃいましょう。それはもちろんロウソクから、少なくとも一部は出てきたんですが、もとからロウソクの中に水があるんでしょうか? いいえ、ロウソクの中にはありません。そして燃焼のために必要な、まわりの空気の中にあるわけでもないんです。あっちにもこっちにもなくて、その両者がいっしょになって働くことで生じるんです。一部はロウソクから、一部は空気から。そしてこれをこんどは追っかけてみましょう。そうしないと、テーブルの上でロウソクが燃えているときに、その化学的な性質が完全に理解できたことになりませんからね。さて、どうすればいいでしょうか。わたしはいろいろやりかたを知ってるんですが、でもみんなにも、自分の頭の中で、わたしがこれまでお話したことをいろいろ組み合わせて思いついてほしいんです。

ちょっとこういうふうな考え方をしてみるといいかもしれません。ついさっき、ハンフリー・デイヴィー卿が示してくれた形で水と反応する物質の例を見ましたね原注3-3。これをこのお皿の上でもう一回やってみて、みんなに思い出してもらいましょう。こいつはとっても慎重に取り扱わないとダメなんです。というのも、この固まりに水をちょっとでもこぼしたら、そこのところが燃え出します。そして空気に勝手に触れさせると、全体がすぐに燃え出しちゃうんですよ。さて、こいつは金属です――美しくてきれいな金属です――これは空中では急速に変化するし、水の中でも急速に変わります。水にひとかけら入れてみると、ほら、こんなふうに美しく燃えて、浮かぶランプになります。空気のかわりに水を使って燃えるんです。あるいは、鉄粉や鉄の削りクズを水に入れると、これまた変化を起こします。このカリウムみたいな変化ではありませんが、ある意味では同じような変化です。さびてくるんですね。そして水に反応します。ただしこの美しい金属ほどの強烈さではありませんが。でも、このカリウムとおおむね同じ形で水に作用するわけです。こういう別々のできごとを、頭のなかでは一つにまとめておいてほしいんです。ここには別の金属 [亜鉛] があります。こいつを、燃焼してできた固体の物質との関係で分析すると、こいつが燃えるのはさっき見た通りです。そしてたぶん、この亜鉛を一筋とって、こうしてロウソクにかざすと、なんかさっきの中間くらいのものが見えます。いわば水の上のカリウムの燃焼と、鉄の作用の真ん中あたり――一種の燃焼が見えます。燃えて、白い灰というか残存物を残しましたね。そしてここでも、この金属が水に対してある程度の作用をするのがわかります。

だんだん、こうしたちがう物質のふるまいを変えさせて、それにこちらの知りたいことを説明させる方法について学んできましたね。ではまず、鉄をとりましょう。あらゆる化学反応でごくふつうのことですが、こういう結果が得られたら、それは熱のふるまいによって増えます。そして物質同士の反応を細かく慎重に検討したいなら、しばしば熱のふるまいを検討しなきゃいけません。鉄粉が空気中で美しく燃えるのは、ご存じだと思います。でもここである種の実験をしてみます。それは、鉄が水に対して反応する場合について、わたしの論点を強調してくれるからです。炎があって、それを中空にしたら――理由はわかりますね、炎の中に空気を入れたいから、中空にするんですね――そして鉄粉を少々その炎の中に入れると、実にきれいに燃えます。この燃焼は、この粉末に点火したときに起こる化学反応の結果です。そこで、こうしたいろいろな影響を検討してみましょう。そして鉄が水と出会うとどうなるかを考えてみましょう。こいつは実に見事に、だんだんきちんとその話を物語ってくれるので、みなさんもすごく喜ぶと思いますよ。

ここにあるのは溶鉱炉で、その中に管が通っています。鉄の銃身みたいな感じですな。そしてその銃身のところに、輝く鉄の削りクズを詰めてあります。そしてそれを火にかけて真っ赤に熱しておきました。この銃身に空気を通して鉄と接触させてもいいし、こっちの端にあるボイラーから蒸気を送ることもできます。ここんところに止め栓がついていて、こっちの希望するまで、銃身に蒸気が行かないようにしてあります。こっちのガラスびんには水が入っています。青く色をつけてあるので、みんなもなにが起きているか見やすいでしょう。さて、この銃身のところに蒸気を通して、それが水に入っていったら、凝集されるのはよくわかっていますよね。というのもこれまで見たように、蒸気は冷やすと気体のままではいられないからです。ここで [とブリキの容器を指さして] 蒸気が小さな体積へと縮んで、それが入った容器もつぶしたのは見ましたね。だから、あの銃身に蒸気を通したとき、それが冷えていれば凝集して水になります。でもいまは、これから実験をするので銃身は熱してあります。蒸気をちょっとずつ銃身に送り込みますよ。それが反対側から出てきたときに、まだ蒸気のままか、自分の目で判断してください。蒸気は凝集すると水になるし、蒸気の温度を下げると、それは液体の水になります。でも鉄の銃身を通って集まった気体の温度を、こうして水に通して冷やしていますが、いつまでたっても水に戻りませんね。別の試験をこの気体に加えてみましょうか。(びんを逆さまにしておくのは、そうしないと物質が逃げてしまうからです)。びんの口に火をもっていくと、ヒョッと音をたてて燃えます。これで、びんの中身が蒸気ではないのがわかりますね。蒸気は火を消します。燃えたりしません。でも、いまびんの中にあったものが燃えたのをみましたね。この物質は、ロウソクの炎から得られた水でも、ほかのどこからとった水からでも得られます。鉄が水の蒸気に反応することでこの物質をつくると、残った鉄は、この削りクズを燃やしたときと非常によく似た状態になっています。鉄は前より重くなります。鉄がこの管の中に入ったままで熱されて、空気や水に触れずに冷やされたら、重さは変わりません。でもこの蒸気の流れが中を通過すると、前より重くなります。蒸気から何かを取り出して、それ以外のものが先に進めるようにしたわけです。それがここにある物質ですね。さあ、びんがもう一ついっぱいになったので、すっごくおもしろいものを見せてあげましょう。こいつは燃える気体なんです。だからこのびんをとってその中身に火をつけて、燃えます、というのを見せてもいいんです。が、できればもっとおもしろいことを見せたいですね。こいつはすごく軽い物質でもあるんです。蒸気は凝集します。この物体は空中を上昇して、凝集しません。ガラスのびんをもう一つ持ってきます。こいつは空気以外はなにもない空っぽです。では、いま話題の物質でいっぱいのびんをもって、それを軽い物体として扱いましょう。両方とも逆さまにしておいて、片方をもう片方の下で傾けて見ましょう。すると、蒸気から得た気体の入ったびんには、いまはなにが入っているでしょうか? 空気しか入っていないのがわかります。でもごらんください! こっちには、あの燃える物質が入っています。あのびんからこっちのびんに注いだんですね。相変わらず同じ性質、条件、独自性を保っています。だからロウソクの産物として、われわれの検討に十分値するわけです。

さて、鉄が蒸気や水と反応してできたこの物質は、これまで見てきた、水と強烈に反応するほかのものによっても得られます。カリウムのかけらをとって、必要なしつらえをすれば、この気体ができます。そしてかわりに亜鉛のかけらを使ってみますと、これを慎重に調べてみるとですね、この亜鉛がほかの金属みたいに水と絶えず反応を続けない理由は、水との反応の結果、亜鉛がなんだか保護する被膜みたいなもので包まれちゃうからなんですな。だから結果として、この容器に水と亜鉛を入れただけでは、この両者だけでは大した反応が起きないことがわかりました。だから、何の結果も生じません でも、この外皮――このこびりつく物質――を溶かし去ってしまったらどうでしょう。これは酸をちょっとばかり使えばいいのです。そうした瞬間に、亜鉛はまったく鉄と同じように水と反応します。しかも常温で。酸はまるで変わっていません。ただし、亜鉛の酸化物と化合した部分だけ変わっています。さあ酸をコップに入れてみましょう、するとこいつに熱を加えて沸騰しているみたいな反応が出ますね。亜鉛からえらく元気よく上がってくるものがあります。蒸気じゃないです。この物質をこのびんいっぱいに集めてみました。するとこれが、鉄の銃身の事件で作った物質とまったく同じ、燃える気体なのがわかります。こうして逆さにして、容器の中に残っているものと同じですね。これが水から得られるものです――ロウソクの中に含まれるのと同じ物質です。

じゃあここで、この二点の関連についてきちんと追いかけて見ましょう。これは水素です――化学でわれわれが元素と呼んでいるものの一つです。元素からはそれ以上なにも取り出せません。ロウソクは元素ではありません。ロウソクからは炭素を取り出せるし、水素も引き出せます。少なくともここから出てくる水をとって、そこから水素を抽出することは可能ですね。そしてこの気体が水素という名前なのは、別の元素と化合して水になるからです原注3-4。アンダーソンさんが、この気体をびん2、3個分集めてくれましたので、いくつか実験をやってみましょう。こういう実験をやるいちばんいい方法を見せたいんです。見せるのはこわくはないですよ。是非ともこういう実験をやってほしいんですから。ただそのとき、注意して慎重にやって、まわりの人の安全に気をつかわないとだめです。化学を進めると、まちがった場所にあると危害を与えるような物質を取り扱う必要が出てきます。われわれが使う酸や熱や燃えるものは、不注意に扱えば、有害になっちゃいます。水素をつくりたければ、 亜鉛のかけらと硫酸か塩酸で作れます。ここにあるのが、昔は「哲学者のロウソク」といわれていたものです。小さなガラスびんに、ガラス管を通したコルクをはめたものです。さ、亜鉛のかけらを2、3個入れましょう。このちょっとした道具は、これからいろいろお見せするときに、とても便利に使えるんです――まずはあなたたちも水素が作れるのを示して、自分の家でも好きなときにこういう実験ができるんだ、というのを示したいんです。さあここで、なぜわたしがガラスびんをかなりいっぱいにしているけれど、完全に満杯にはしないように注意しているかを説明しましょう。これはですね、出てくる気体はすでにお見せしたようにとても燃えやすくて、空気とまぜると爆発するようになるからです。だから液体から上の部分の空気が全部なくなる前に、このガラス管に火をともしたら、あぶないことになりかねないんですよ。では、硫酸を注ぎましょう。亜鉛はほんのちょっと、そして硫酸と水は多めに使います。ちょっと長目に動き続けてほしいからです。ですから、こうして中身の構成比を変えてやって、水素の出方が一定になるようにするんです――はやすぎもせず、遅すぎもせず。

さて、ここでコップを持ってきて、このガラス管の上にひっくり返してかぶせます。すると水素は軽いですから、この容器にしばらくたまっているはずです。さあこのコップの中身を調べて、水素が入っているか見てみましょう。うん、多少つかまえられたみたいですよ。ほうら、ごらんなさい。じゃあ、このガラス管のてっぺんに火をつけてみましょう。水素が燃えてます。これが我らが哲学的ロウソクです。はかない、弱々しい感じの炎だな、と思うかもしれませんね。でもすごく高熱で、そこらの炎なんかとは比べものにならない熱を出します。このままずっと燃え続けるので、別の条件下で燃やしてみましょう。その結果を調べてみて、そこから得られた情報を活用しましょう。

ロウソクは水をつくるし、この気体が水から出てくるんなら、ロウソクが大気中で燃えたのと同じ燃焼プロセスで、なにが出てくるかを見てみましょう。で、このためには、ランプをこんな装置の下に置いてみましょう [と講師は、漏斗をひっくり返してそこに横向きの太い試験管をつなげたような装置をとりだして、燃える水素をその漏斗の下のところに置いた] 。これで、燃焼から出てきたものはすべて、この円筒の中に凝集されることになります。ちょっと待つだけで、この円筒に湿気が見られるようになります。やがて水がその中をつたい落ちはじめます。そしてこの水素の炎から得られる水は、各種の試験すべてに対してまったく同じ反応を示します。これまでと同じ、一般的なプロセスで得られたものだからです。この水素というのは、実に美しい物質です。すごく軽いので、ものを上に浮かせます。空気よりずっと軽いんです。そしてこの点については実験で示せます。この実験は、あなたたちがとっても賢ければ、自分でも再現できる人はいるはずですよ。こちらにあるのが水素発生装置で、こっちには石けん水があります。水素発生装置に、インドゴム管をつけて、その管の先っぽにたばこ用のパイプを取り付けました。で、こうしてパイプを石けん水に入れると、水素でしゃぼん玉を作れます。こいつをわたしの暖かい息でふくらませると、シャボン玉は下に落ちていくのがわかりますね。でも、水素でふくらませると、ちがいがわかるでしょう。 [ここで講師は水素でシャボン玉をふくらませると、それは講堂の天井まで飛んだ。] ただのシャボン玉どころか、この下にでかい滴がぶら下がったままで上がっていくというのは、この気体がすごく軽い証拠ですな。どんなに軽いか、もっといい方法でお見せしましょう。こんなのより大きなシャボン玉でも上がるんです。昔はこのガスで気球を満たして飛ばしていたんですよ。アンダーソンさんがこの発生器に管をつけてくれます。すると水素の流れができて、これでコロジオン製の風船をふくらませられます。空気をきちんと追い出すとか、別に気にしません。この気体の上昇力はよく知ってますからね。 [コロジオン風船二つがふくらまされて上昇。一つは糸でつないであった。] こっちにもう一つでかいのがあります。薄い膜でできていて、これをいっぱいにするとこうして上昇していきます。ガスがぬけるまで、みんなふわふわ浮かんだままでいますよ。

じゃあ、こういう物質の重さを比べるとどういうことになるでしょうか。ここに、それぞれの重さを比べてみた表があります。目安として、0.5 リットルと 30 センチ角立方を目安にして、それに対応するものがどのくらいになるかを示しています。この水素 0.5 リットルは、たった0.02グラムの重さで、水素の 30 センチ角立方は 2.5 グラムの重さしかありません。これが水だと、0.5 リットルで 500 グラム、水が30センチ角立方だと27kgにもなります。だから、水の 30 センチ角立方と、水素の 30 センチ角立方とでは、重さにどえらい差があるわけです。

水素は、燃焼中も、燃焼後の産物としても、固体になるようなものはつくりません。燃えるときには水ができるだけです。だから冷たいコップをとって火の上にかけると、すぐにしめって、即座にそれとわかるだけの水ができます。そして水素が燃焼してできるのは、ロウソクの燃焼でも生じた水だけなんです。燃えて水しかできないのは、自然界でこの水素だけだというのは、是非とも覚えておいてください。

では、水の一般的な性質と組成について、さらに追加の証明を探さなくてはいけません。だからもうちょっとみんなにいてもらいましょう。次にお目にかかるときに、この話の下準備ができているようにね。酸の力を借りて水に亜鉛が作用するときの力はお目にかけましたよね。その亜鉛を並べて、すべての力がこちらの思い通りの場所で発生するようにできるんです。わたしの後ろにあるのは、ボルタ積層電池です。そして今回の講義のおしまいに、こいつの特徴とパワーをこれからお目にかけます。次回、どんなものを扱うことになるかわかってもらうためです。ここには、この背後からパワーを運んでくる電線を持っています。こいつを次回は水に作用させてみます。

まえに、カリウムや亜鉛、鉄の粉末が燃えやすいことは見ましたね。でも、これほどのエネルギーを見せたものはありませんでした [ここで講師は、電池の両端からのびた電線をふれあわせた。するとまばゆい輝きが生じた。] この光は実は、亜鉛を40枚重ねた燃焼力で生じたものです。このパワーを、電線を通じて気の向くままに持ち歩けるんですけれど、でもこれをうっかり自分にあてたりしたら、わたしは一瞬で死んでしまいます。こいつは実に強力なもので、ここでみんなが5つ数える間に目の前で出てきているパワーは [と両極を接触させて電気の光を示す] 雷嵐数個分にも相当するほどなんですよ。そのくらいこいつの力はすごいんです訳注3-1。こいつがどのくらい強烈なエネルギーをもっているか、みんなにわかってもらうために、電池からのパワーを伝える電線の端っこを持ってくると、こうしてこの鉄粉を燃やせちゃいますな。さて、こいつは化学的な力なので、これを水に適用したらどんなことになるでしょうか。次回はそれをお見せしましょう。

原注 3-1:
水の密度が一番高いのは、華氏 39.1 度のとき(訳注:摂氏では 4 度)。
原注 3-2:
塩と砕いた氷の混合物は、温度が華氏 32 度(摂氏 0 度)から華氏 0 度(摂氏マイナス17.18度)に下がり、同時にその氷は液体になる。
原注 3-3:
カリウムは灰汁の金属成分で、1807 年にハンフリー・デイヴィー卿が発見した。デイヴィー卿は強力なボルタ電池を使って、灰汁からカリウムを分離するのに成功した。カリウムは酸素との親和性がとても強いので、水を分解して酸素を奪い、このために水素ができて、これがそのときの熱のために燃え上がる。
原注 3-4:
Yowpが水の意味で、Yevvawが「生成する」という意味。
訳注 3-1:
ファラデー教授は、水を0.065グラム電気分解するためには、とても強力な稲妻と同じくらいの電気が必要だということを計算している。

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©1999 山形浩生. この版権表示を残す限りにおいてこの翻訳は商業利用を含む複製、再配布が自由に認められる。プロジェクト杉田玄白 (http://www.genpaku.org/) 正式参加作品。