鏡の国のアリス ルイス・キャロル

著者の序文


次のページに示した詰めチェス問題が読者の一部をまごつかせたようなので説明しておくけれど、これは駒の動きだけを考えれば正しく作ってあるのだ。赤と白が交互に順番通り動くという点については、まあ実際より多少は厳密でないところもあるし、女王クイーン三つのキャッスリングは単に、三人が宮殿に入ったということを表現することばのあやだ。でも六手目の白の王さまキングへの王手、七手目で赤の騎士ナイトが取られ、そして最後の赤の王さまキングの王手詰み(チェックメイト)は、駒を実際にならべて指示通りに動きをやってみた人ならだれでもわかるように、チェスのルールにきちんとしたがっている。

ジャバウォッキー』の詩に出てくる新語は、どう発音すればいいかについていくつか見解の相違を生んでいるのでこの点についても指示をしておくほうがいいだろう。「slithy(俊(しゅ)るり)」は、「sly」と「the」の二語をくっつけたような感じで発音すること (訳注:つまり、「スリジー」ではなく「スライジー」に使い発音で。)。「gyre(環繰(わぐ)る)」と「gymble(躯捩(くねん)する)」の G の音は、強く硬い発音で (訳注:つまりジャジジュジェジョではなくガギグゲゴの音で)。それと「rath(トグラ)」は「bath」と韻をふむこと (訳注:つまり「レイス」ではなく「ラス」に近い発音で)

1896年クリスマス
イラスト: チェス問題

白のポーン(アリス)を動かして、十一手詰み。

1.アリス、赤の女王クイーンに会う1.赤の女王クイーンKR4へ
2.アリス、Q3経由(列車)でQ4(トゥィードルダムとトゥィードルディー)2.白の女王クイーンQB4へ(ショールを追って)
3.アリス、白の女王クイーンに会う(ショールと)3.白の女王クイーンQB5へ(ヒツジになる)
4.アリス、Q5へ(店、川、店)4.白の女王クイーンKB8へ(棚にたまごを置く)
5.アリス、Q6へ(ハンプティ・ダンプティ)5.白の女王クイーンQB8へ(赤騎士ナイトから逃げて)
6.アリス、Q7へ(森)6.騎士ナイトK2へ(王手)
7.騎士ナイト、赤騎士ナイトを取る7.騎士ナイトKB5へ
8.アリス、Q8へ(戴冠)8.女王クイーンキングの升へ(試験)
9.アリス、女王クイーンになる9.女王クイーンたち入城(キャスリング)
10.アリス入城(祝宴)10.女王クイーン、QR6へ(スープ)
11.アリス、赤の女王クイーンを取って勝つ

 無垢で曇りなき眉と
  不思議の夢見る瞳の子よ!
 時は駿く、我ときみとは
  半生の歳の差があろうとも
 きみの愛しきほほえみは確かに
  愛の贈り物たるおとぎ話を勝ち得るはず

きみの輝かしい顔も見ず
  銀の笑いも耳にせず
 きみの若き人生の将来に
  我が思い出の居場所もないはず――
 でもいまのきみが、我がおとぎ話にさえ
  耳を傾けてくれれば十分

別の日、夏の日差し輝く頃
  始まりし物語
 ボートを漕ぐリズムに
  あわせた簡単なチャイム
 そのこだまがいまも記憶中に生きる
  ねたむ月日が「忘れよ」と言おうとも

では聞きなさい、辛辣な報せを携えて
  恐怖の声がやってきて
 歓迎されぬ寝床に
  憂鬱なる乙女を召還する前に!
 愛しい人、われわれもまた年老いた子供にすぎず
 就寝時刻の接近を嫌うのだ

外では霜と目も開かぬほどの雪
  吹き荒れる気まぐれな嵐風の狂気
 室内では暖炉の赤い輝きと
  子供時代の喜びの巣
 魔法のことばが汝をしっかり捕らえ
 汝は荒れ狂う風雨に気づくこともない。

そして過ぎ去りし「しあわせな夏の日々」と
  消え失せた夏の栄光のための
 そしてため息の影が物語を
  一貫して震えぬけようとも
 それが悲嘆の息もて我らの
 おとぎ話の喜びに触れることはない。


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