青と緑, ヴァージニア・ウルフ


鼻のつぶれた化け物が水面に浮きあがり、大きな鼻の穴から二柱の水柱を立てる。その芯はめらめら炎の青白さ。その水飛沫みずしぶきは青いビーズのふさとなる。その毛皮、黒い防水布に幾重もの青い線。口と鼻の穴をすすぎながら彼は歌う。水のぶん重々しく。青が彼に覆い被さりその両眼の小石を磨く。岸辺に打ち寄せられた彼は寝そべる、のろのろどろどろと流れる青い鱗。そのメタリックブルーが岸辺の錆びた鉄を汚す。その青さは破れた手漕ぎ船の肋材ろくざい。波が転がってゆく青いベルの下。だが、カテドラルは違う。もっと別の、冷たくて、麝香じゃこうを焚き染めたような、聖母のあのヴェールの微かな青。


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