ガウェイン卿の結婚, トマス・ブルフィンチ

ガウェイン卿の結婚


ある時、陽気なカーライルの町で、アーサー王が宮廷会議を開いていた。そこへ一人の少女がやってきて、彼の助けを懇願した。彼女は卑劣な騎士に恋人を捕らえられ、土地を奪われてしまって、その騎士に仕返ししたいという話であった。アーサー王は、彼の剣エクスカリバーを持って来させ、馬に鞍をつけさせ、彼女を悩ませる悪を正すため、すぐさま出発した。

やがてその残忍な騎士の城に到着すると、アーサー王は騎士に戦いを挑んだ。しかし、城の建つ土地には魔法がかけられており、そこに足を踏み入れるとどんな騎士でも魔力によって勇気を奪われ、力を失ってしまうのであった。アーサー王も魔力にやられ、一撃も食らわさないうちにその頑丈な手足から力が抜け、気が遠くなった。彼は抵抗もできず、野蛮な騎士の捕虜となった。騎士は解放の条件として次のような課題を突きつけた。年末には城に戻ってくること、そして、「女の一番の望みは何か?」という問いへの正しい答えを見つけてくること。もしできなければその時は、降伏して領土を全て明け渡すこと。

アーサー王はこの条件を受け入れ、指定された日に戻ってくると誓った。その年の間ずっと、王は東へ西へと馬で駆け巡り、出会った全ての人に、あらゆる女の一番の望みは何かということを尋ねた。ある者は富と答えた。ある者は華やかに飾ることと答え、ある者は楽しく騒ぐことと答えた。ある者はおだてられること、ある者は素敵な騎士と答えた。だが色々な答えのどれを取っても、本当に信頼できるものはなかった。


年の終わりが迫るある日、アーサー王が物思いに耽りながら森の中で馬を走らせていると、一人の女が木の根元に座っていた。その容貌は醜く、彼が思わず目を背けたほどだった。女が礼儀正しく挨拶をしても、彼は返事をしなかった。

「なんというお方でしょう」その女は言った。「私と口を利かないようにしていらっしゃるのは。私は美しくはありませんが、貴方のお悩みを解決することはできるかもしれませんよ」

「もしもそれができるなら」アーサー王は言った。「返礼を何でもお選びください、気味の悪いご婦人。必ずや差し上げましょう」

「心からお誓いください」彼女がそう言うと、アーサーは誓った。するとその女は彼に秘密の答えを告げ、その見返りとして、美しく礼儀正しい騎士を見つけて夫にしてくれるよう求めた。


アーサー王は残忍な騎士の城へ急いだ。そしてその騎士に、様々な人から聞いた答えを一つ一つ、最後のものだけ残して全て伝えた。どれも正解ではなかった。

「負けを認めよ、アーサー」とその巨人は言った。「身代金を払えない以上は、お前自身もお前の領土も、私に没収されるのだ」

アーサー王は言った。

「その手を抑えなさい、誇り高き騎士よ。どうかその手を抑え、最後に一つ答えを聞きなさい。それがわが国を救うのだ。この朝、荒野に馬を走らせていると、ひとりの女性が座っていた。緋色の布を纏って、オークの木と緑色のヒイラギの木の間に座っていた。彼女は言った。あらゆる女が望むのは、自らの意志を持つことだ、と。それが女の一番の望みだ。さあ、解放しなさい。真の騎士ならば、私が約束を果たしたと認めるだろう」

「答えを教えた女は、私の妹だ」野蛮な騎士は叫んだ。「あの女! 借りを返さずにはおかぬぞ」


アーサー王は城へと馬を走らせた。しかしその心は軽やかではなかった。若く優しい騎士をあの醜い女の夫にしてやるという約束を覚えていたからだ。王はその悲しみを甥のガウェインに打ち明けた。するとガウェインは言った。「我が君よ、悲しむ必要はありません。私がその醜い女と結婚します」

アーサー王は答えた。「いや、いけない、善良なガウェインよ。お前は私の姉の子。かの醜い女は本当に気味が悪いのだ。あまりにも怖ろしい」

だがガウェインは引かなかった。ついに王は、悲しみを抱えながらも、ガウェインが代償となることを認めた。そしてある日、王と騎士たちは森へ行って醜い女に会い、宮中に連れてきた。ガウェインきょうは仲間たちからの冷笑や嘲りにじっと耐えた。そして結婚式が執り行われたが、恒例の祝宴は無かった。チョーサーはこう詩に書いている。

…歓喜も祝宴も全くなかった
ただ憂鬱と深い悲しみがあった
朝のうちに隠れて式を挙げ
一日中フクロウのように隠れてしまった
それほどに彼は悲しみ それほどに妻は醜かった!

夜が来て、夫婦二人きりになると、ガウェイン卿は嫌悪感を隠し切れなくなった。女は彼に、なぜそんなに深い溜め息をついて、顔を背けているのかと尋ねた。彼は率直に、彼女の年、彼女の醜さ、彼女の身分の低さという三つが理由だと告白した。女は全く怒ることなく、彼の不服の全てに対して見事に論理的に答えた。いわく、年を取っているとは思慮分別があるということ。醜いということは余計な男が寄ってこないということ。そして、真の気品というものは、偶然の生まれによって決まるのではなく、その人自身の人格によるのだということ。

ガウェイン卿は何も答えなかった。そして花嫁のほうに目を向けた。すると驚いたことに、彼女はもはや、彼をあれほど苦しめた醜い外見ではなくなっていた。彼女が言うには、今までの姿は本当の姿ではなく、悪い魔法使いによって強いられた偽りの姿であった。そして二つの事が起きるまでは、その姿でいなければならなかった。一つは、若く優しい騎士を夫にすること。これが叶えられたので、呪いの半分が解け、今や一日の半分は本当の姿でいられる自由を得たのだ。彼女は、自分が昼に美しく夜に醜いほうがいいか、その逆がいいか、選ぶよう彼に頼んだ。ガウェイン卿は、自分だけが彼女と向き合う夜の間に彼女が最高の外見でいて、ひどい容貌を見せるのは――いつか見せるしかないなら――他の人々にするよう望んだ。しかし彼女は、昼の間にたくさんの騎士たちや女性たちの前で一番の外見でいられるほうが、自分にとってどんなにいいかということを彼に伝えた。ガウェイン卿は譲歩し、彼女の意志を認めた。このことこそ、残りの呪いを解くために必要なものだった。美しい女性は彼に対して、もう決して姿が変わることはなく、夜も昼も今の姿のままでいられるのだと話した。

甘美な赤みが、赤く美しく頬を染め
その瞳は鱗木りんぼくのように黒く
熟した桜桃のように唇をふっくらさせ
首すじは雪のような白さ
ガウェイン卿はしとねに横たわる美女に口づけし
真の騎士として誓った
こうでさえこれほど甘くはないと

女の呪いが解けたことで、彼女の兄、あの「残忍な騎士」も解放された。彼もまた同じ呪いをかけられていたのだ。彼は野蛮な迫害をやめ、アーサー王の宮廷の騎士たちにも負けぬほど勇敢で思いやりのある騎士となった。


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