青色本, ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン

序文


親愛なるラッセルへ

2年前になるでしょうか、私はあなたに手稿を一つお渡しすると約束しました。今日お送りするのは、その手稿ではありません。私はまだその手稿に手をとられていて、一部分ですら出版することがあるかどうかも分からない状況です。しかし2年前、私はケンブリッジ大学で講義を行い、それを生徒に書き取らせました。彼らが家に持ち帰れるようにするためです。それなら頭には残らなくてもノートには残ります。私はそのノートをコピーしました。幾つかのミスプリントと間違いを修正していたところ、あるいはあなたがこのコピーをお気に召すのではないかと思いつき、一部お送りしようと思いました。読んでいただくよう強制するつもりはありません。ですが、もしあなたが他にすることもなく、そしてもし読んでいただくことで何かしらの楽しみを得ていただけたなら、私は非常に嬉しく思います。(もっとも、多くの論点がヒントを示されるだけになっているので、理解は非常に困難と思われます。もともと講義に参加していた人間に向けてのみ書かれたものですから。)先ほども言いましたが、読んでいただかなくても全くかまわないのです

いつまでもあなたの誠実な友 ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン


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