影と光, ジャック・ロンドン

影と光


振り返ってみると、じつに不思議な友情関係だった。まず始めに、ロイド・インウッドがいた。すらりとした見事な体つきの、神経質な黒髪の男。それから、ポール・ティックローン。すらりとした見事な体つきの、神経質な金髪の男。カラーリングを除けば、二人は何もかもがお互いのレプリカだった。ロイドの瞳は黒、ポールの瞳は青。興奮して血が昇ると、ロイドの顔はオリーブ色に、ポールの顔は真っ赤になった。だけど、この色合いのことを除けば二人はまさにうりふたつ。ともに熱しやすく、必要以上に気負ったり、耐え忍んだりする傾向があって、二人は張りのある毎日を送っていた。

でも、この風変わりな友情関係はトリオ編成。三人めは、ちびで太った、ずんぐりむっくりの怠け者、言いたくないんだけど、つまりこのぼく。ポールとロイドは生まれながらのライバル同士らしくて、ぼくは二人の仲を取りもつ役だった。ぼくら三人は一緒に育ったんだけど、もうしょっちゅう、どっちかが怒って相手に殴りかかり、ぼくがそれを食らうなんてことをやっていたものだ。二人はいつも競いあっていて、相手をしのごうとしていた。それで争い始めると、二人の努力と熱意にはきりがなかった。

この激しい競争意識は、学問や勝負ごとについても言えた。ポールが「マーミオン」から一編を憶えたときには、ロイドは二編を憶え、翻ってポールが三編をやり、ふたたびロイドが四編を、といった具合で、やがて二人ともがその詩全部を丸暗記してしまった。深みで泳いでいたときのできごとも憶えている――二人の命がけの争いについて、悲劇的なほど意義深いできごとだ。子どものころ、みんなで深さ十フィートの水たまりに潜り、水底の木の根を握って、だれがいちばん長くこらえられるか、というゲームをやったんだ。ポールとロイドは、お互いに、一緒に潜って挑みあうことにした。二人の、決意を固めた顔が水中に消え、スピーディに潜って行くのを見たとき、ぼくには何だか嫌な予感がした。時間が経って、さざ波が消え去ると、水面は穏やかな乱れのないものとなり、黒髪も、金髪も、水の上に顔を出して息を継ごうとしない。ぼくらはだんだん心配になってきた。ある少年の最長記録を越えても、まだなんともない。空気の泡がぽつぽつと昇ってきて、二人の肺から息が吐き出されているのが分かったけど、その後、泡は昇ってこなくなった。一秒一秒が果てしなく思え、これ以上の不安には耐えきれなくなり、ぼくは水の中に飛びこんだ。

二人は水底にいた。根っこにしっかりとしがみつき、五十センチと離れていないところに顔をつきあわせて、目を大きく見開き、おたがいに睨み合っている。ものすごい苦痛にさいなまれ、苦しげに身をよじらせながら、みずから窒息しようとしていた。というのは、二人とも、浮かび上がることでおのれの敗北を認めたくなかったんだから。ぼくはポールを根っこから離そうとした、だけどポールは必死になって抗った。そこでぼくは息苦しくなって水面にもどった。まったく気が気でない。手早く状況を説明すると、ぼくらは六人で潜っていって、二人を力ずくで引き剥がした。それで二人を水から上げたときには、二人とも意識がなくて、ひたすらごろごろ転がしたり、マッサージしたり、どんどん叩いたりしてやっているうちに、やがて二人とも意識を取りもどした。もしぼくらが助けに行かなかったら、あのまま溺れ死んでいたかもしれない。

大学に入学した当初のポール・ティックローンは、社会科学の道に進むんだとみんなに思わせていた。ロイド・インウッドも、同時に入学したのだけど、同じコースを選んだ。ところがポールは、心中密かに思うところがあって、ずっと自然科学を、とくに化学を専門に勉強していて、土壇場になってそっちに切り替えたのだ。ロイドはその年の研究をすでに手配し終えており、また最初の講義に出席していたにも関わらず、ポールの誘導についていく形で、同時に自然科学、とくに化学へと進んだのだった。二人のライバル意識は大学中の話題になった。お互いがお互いを駈りたてる形で、化学を、これまでどの学生も到達し得なかったほど深く修得した――事実その理解の深さは、卒業証書を受けるより前から、その機関にいたあらゆる化学教授たち――というか「田舎大学」教授たちが手を焼いていたほどだった。ひとり「長老」モスという学部長をのぞいて。そして、かれでさえも、二人に考えこませられ、啓発されることが一度ならずあったのだ。ロイドの、シー・トードにおける「致死バチルス」に関する発見と、それについての青酸カリを用いた実験は、ロイドの名前とロイドのいた大学の名前を全世界に鳴り響かせた。ポールもまたそれにほとんど遅れをとることなく、アメーバ運動を展開する実験用コロイドの精製に成功し、純粋な塩化ナトリウムとマグネシウム溶液を用いた海洋環境の原型上での実験によって受精のプロセスに新たな光明を投げかけた。

ところがまだ卒業する前、二人が有機化学の神秘に深く深く没頭していたころのこと、ドリス・ヴァン・ベンショーテンが二人の生活に入り込んできた。まずロイドが彼女に出会ったのだけど、それから二十四時間以内にポールもまたうまく彼女の面識を得ていた。もちろん、二人は恋に落ちて、彼女だけが日々生きる糧となった。二人は同じほどの熱意と情熱をこめて彼女を口説いた。彼女をめぐる二人の争いがとても激しくなってきたので、学生連中の半数がその結果に乱暴な賭けをやったほどだ。「長老」モスでさえも、ある日、かれの個人研究室でポールがすごい実験をしてみせた後に、罪深くも給料一ヶ月分を、ポールがドリス・ヴァン・ベンスチョーテンの花婿になるほうに投じたのだった。

しまいには、彼女が自分の手でその問題に決着をつけた。それにみんなが満足した、ポールとロイド以外は。ドリスは二人を一緒に呼んで言ったんだ、二人ともを同じくらいに愛しているから、どうしても一人を選ぶなんてできないって。それからこうも言った。あいにく、アメリカでは一妻多夫制が認められていないから、どちらとも結婚するという喜びと幸せは諦めないとだめだって。この悲しい結末を二人はおたがいのせいにしあって、二人の仲はさらにひどいことになってしまった。

だけど、ついに衝突のときがやってきた。なんとぼくの家で、二人が卒業して世間の目から抜け出した後に、終わりの始まりがやってきたんだ。両人とも物持ちであり、職業人としての人生を送る意思なんてほとんどなかったし、だいいちそんな必要はまったくなかった。ぼくの友情と、二人の間にある敵意とは、なんにせよ二人を繋げていたものだった。ぼくの家に入り浸っていた頃、二人はそうやって訪ねてきつつも相方を避けるのに細心の注意を払っていた。あの状況では二人が偶然に出くわしてしまうのは避けられなかったのだけれども。

記憶に残るあの日、ポール・ティックローンは午前中ずっと、ぼくの書斎で現代科学の展望をぼんやりと考えていた。おかげでぼくは思うままに自分の仕事を片付けることができたんだけど、外に出てバラの世話をしていたところに、ロイド・インウッドが訪ねてきたんだ。口一杯に鋲をくわえたぼくは、玄関の蔦を切ったり鋲留めしたりし、ロイドはぼくに付き添ってときどき手を貸してくれた。やがて、ぼくらは不可視の人々という神話的な種族について議論をはじめた。言い伝えにある、未知のさすらい人たち。ロイドは、例によって神経質でぎくしゃくした感じはするけど穏やかな口ぶりで、すぐに、目に見えないということの物理的な性質と実現性を問いただした。ロイドはこう主張した。完全に黒い物体は、もっとも鋭い視力をもってしても捕らえられないのだ。

「色は一種の感覚なんだ」ロイドは言っていた。「そこに客観的なリアリティはない。光がないと、ぼくらには色も物体そのものも見えなくなる。あらゆる物体が暗闇では黒く、暗闇ではそれを目にすることが不可能なんだ。もし物体に光があたっていなければ、物体から目に投げ返される光もなく、だから、ぼくらはその存在を視覚的に証明できない」

「だけど、ひなたでも黒い物体は見えるじゃないか」と、ぼくは反論した。

「そのとおり」ロイドはおだやかに続けた。「それは、その黒さが完全なものではないからだよ。完全に黒ければ、絶対黒と言おうか、とにかくそれはぼくらには見えなくなるんだ――そう、千の太陽に照らされたって、ぼくらには見えまい! それから、的確な顔料を、適切に混ぜ合わせれば、絶対黒の塗料ができるはずだ。この塗料を塗ればなんだって目に映らなくなるだろうね」

「個性的な発見かもしれないな」ぼくはあたりさわりのない言葉を使った。だって、思索的なところばかりで、全体があんまり空想的すぎるもの。

「個性的、か!」ロイドはぼくの肩を叩いた。「それだよ、それ。まったくねえ、ぼくを絶対黒で塗りたくれば、世界はぼくの言いなりになるかもしれないよ。いろんなことが分かるようになるもの。諸侯や宮廷の秘密も、外交屋や政治屋の陰謀も、株屋の詐欺も、トラストや法人の企画だって。日々ぼくはものごとの内なる鼓動に手をさしのべ、世界中でもっとも強大な力を手にしようとしているんだ。それにぼくは――」ロイドはちょっと言葉を切った。「ぼくはもう実験に取り掛かっているよ、きみにならば言ってもかまわない、ぼくは正しいラインをたどっている」

戸口から笑い声が聞こえてきて、ぼくらはびっくりした。そこにポール・ティックローンが、嘲笑を唇に浮かべて立っていた。

「見落としがあるよ、親愛なるロイドくん」とポールが言った。

「見落としって、なんだよ?」

「見落としているのさ」ポールは続ける――「いやはや、見落としているのだよ、影のことを」

ロイドは顔を落としたのがぼくには見えたけど、かれはにやにや笑いながら答えた。「ぼくは日よけを持ち運ぶことができるからね」そして、ロイドは急に勢いよくポールに向き直った。「ほらごらん、ポール、きみはこの影の中に入らないでいられるんだろう? もしなにが君の役に立つのか知ってるのならね」

決裂寸前、のように思えたのだけど、ポールは朗らかに笑った。「ぼくの指をきみの小汚い顔料で近づけたくはないな。そのじつに楽天的な見とおしを越えることに成功したとしてもだね、影にぶつかってゆきづまるだろう。きみは影から逃れられないんだ。そうそう、ぼくは正反対の方向から進めているよ。ぼくの見とおしとしてはまったく当然のことながら、影は消滅するだろう――」

「透明、か!」即座にロイドが叫んだ。「だけど、そいつを達成するのは無理だ」

「うんうん、そうだね。そのとおりだよ」とポールは肩をすくめて、茨のバラの小道をのんびり歩み去っていった。

これがその始まりだった。とほうもない精力で有名だった両人は、ともにそのすべてをこの問題に注ぎこんだ。それにくわえて、怨恨やら悪意やらも。だからぼくはどちらかが成功してしまうのを恐れていた。二人ともぼくを完全に信用していたから、両者との会合があってから数週間におよんだ実験のさなか、ぼくはそれぞれの理論を聞き、それぞれの実証を見せてもらえた。ぼくは決して、言葉にも身振りにも、相手の進展のごくごくわずかなヒントすら与えなかったし、二人はぼくのそういう口の固さを認めていた。

ロイドは、長々と作業しつづけた後、その緊迫状態が心身ともに耐えがたいほどのものになったとき、奇妙な方法で気晴らしをした。プライズファイトというか、ボクシングを見に行くことで。それは粗暴な見世物の一種なんだけど、そこへ、最新の成果を教えると言ってぼくを引っ張っていったんだ。ロイド理論はめざましい確証を得た、と。

「あそこに赤い頬髯をした男が見えるだろ?」ロイドは、リングの向こう、反対側にある座席の五列目を指差しながら言った。「それと、その隣にいるかれ、白い帽子の男は見えるかい? で、あの二人の間にはかなりの隔たりがあるね?」

「たしかに」と、ぼくは答えた。「離れて座っている。隔たり、というか空席があるよ」

ロイドはぼくの上にかがみこむと、真剣なようすで話しだした。「赤い頬髯の男と白い帽子の男の間には、ベン・ワッソンが座っているんだ。あの男のこと、話したことがあったよな。この国で最高のボクサーだよ、かれの階級ではね。それに、純血のカリブ系黒人で、アメリカじゃいちばん黒いな。黒いオーバーを着て、ボタンを留めてる。ぼくはかれがやってきて、あの席に座るのを見かけたんだ。かれは腰を下ろしたとたん、見えなくなってしまった。じっと見ていてごらん、微笑むかも」

ぼくは立ってロイドが言ったことを確かめに行こうとしたんだけど、ロイドがぼくを席に引きもどした。「待つんだ」と、ロイド。

ぼくは待ち、眺めた。そのうちに赤い頬髯の男が、挨拶でもするように首を空席の方に向けた。すると、何もなかった空間に、ぎょろぎょろ動く両目の白と、二列の歯という二重の白い三日月が見え、そのときになって、ぼくはそこに一人の黒人の顔を見出すことができた。でも、その笑顔が失われるとともにかれの可視性が失われると、その椅子は、以前のように空席のように見えた。

「もしかれが完全に黒だったなら、隣に座っていても見えないだろうね」と、ロイドは言った。そして、ぼくは、この実例が十分な説得力のあるものだったことを素直に認めた。

その後、ぼくはたびたびロイドの研究室を訪れたんだけど、そこでロイドは、いつも絶対黒の研究に没入していた。ロイドの実験はあらゆる種類の顔料、たとえばランプの汚れ、タール、炭になった野菜類、油脂の煤、さまざまな炭になった動物質などを使っていた。

「白い光は七原色からなっている」ロイドはぼくにそう論じた。「だけど白い光自体は、それだけでは見えない。物体が反射したものによってのみ、その物体は目に見えるようになる。だけど、反射されて見えるようになるものはほんの一部分にすぎないんだ。たとえばね、ここに青いたばこの箱がある。白い光がこれにぶつかり、ひとつの例外を除いて、白い光を構成するすべての光――紫、藍、緑、黄、橙、赤――を吸収してしまう。その唯一の例外が、青なんだ。吸収せずに、反射する。だから、このたばこの箱は青い感じをぼくらに与える。他の色は、一切吸収されてしまうから、ぼくらには見えない。同じ理由で、草は緑。白い光にある緑の波だけが、ぼくらの目に投げ返されるわけだ」

「家にペンキを塗るときも、ぼくらは色を塗りつけているわけじゃない」と、別の機会にロイドは言った。「ぼくらがやっているのは、白い光から、家をこう見せたいと思う色以外の色をすべて吸収する性質のある特定の物質を塗りつける、ということ。物質がすべての色を目に返してきた場合、それは白く見える。すべての色を吸収した場合は、黒。でもね、前にも言ったとおり、ぼくらはいまだ完全なる黒を手にしたことはない。すべての色が吸収されるわけじゃない。完全な黒は、光を完全にガードするから、なにをどうしたって見えないんだ。たとえば、あれをごらん」

ロイドは作業机に広げられたパレットを指差した。異なる陰影の黒い顔料がとられている。とりわけ、そのうちひとつはほとんど見えなかった。どことなくおぼろな感じ。ぼくは目をこすり、もう一度見た。

「そいつは」と、ロイドは感慨深げにいった。「いちばん黒い黒だよ。きみが、いや、いかな生ける人々もこれまでに見たことがないほどの。だが、待ってくれさえすれば、ぼくは、生ける人々に見ることあたわざるほどに黒い黒を作り出してみせる――見てろよ!」

その一方で、ポール・ティックローンも同じくらい深く自分の研究に没頭しているのも知っていた。ポールが研究していたのは、光の偏光、回折、干渉、単屈折に二重屈折、それにありとあらゆる奇妙な有機化合物。

「透明――あらゆる光に通りすぎるのを認める物体の状態、あるいは性質」ポールはそう定義してみせた。「それがぼくの求めるものなんだ。ロイドは、自らの完全なる不透明性ゆえに、影の問題にぶつかってまごついている。ぼくはそうじゃない。透明なものは影を落とさないし、それに光波を反射することもない――つまりね、完全に透明ってのはそういうことなんだ。あらゆる光を回避するから、そうしたものは影を落とさないばかりでなく光も反射しないわけで、これもまた見えなくなるんだ」

まだ別のとき、ぼくらは窓のそばに立っていた。ポールはレンズ磨きをやっていて、そのたくさんのレンズが窓枠に沿って並べられていた。ふいに、会話をひと休みしたあと、ポールが言った。「あ! レンズをひとつ落としてしまった。ねえきみ、窓から顔を出して、どこに落ちたか探してくれないか?」

ぼくは窓の外に顔を出そうとしたけど、額にするどい衝撃が走って後退った。しかるような問いかけの眼差しをポールに向けながら、打った頭をなでていると、ポールはご機嫌な笑い声を上げた。こどもみたいに。

「ん?」ポールが言った。

「ん?」ぼくが返した。

「調べてみろよ」ポールが言った。調べてみた。外に顔を出す前、自動的に働いてくれるぼくの五感は、そこになにもないと告げていた。ぼくと戸外の間にはなんにもなくて、窓は全開にされているんだと。手を伸ばすと、固くて、滑らかで、冷たくて、平べったい物体があった。この触感は、経験から、ガラスのそれだということが分かった。もう一度目を向けたけど、なにかがあるといった感じは見出せなかった。

「白石英砂」ポールは早口に言った。「炭酸ナトリウム、粉末石灰、骨肉、過酸化マンガン――で、そこにあるのが、フランスの極上板ガラス。セント・ゴバイン社製でね、この会社は世界でいちばんすばらしい板ガラスを作るところで、こいつはそのなかでも最高のできばえだ。そうとう金がかかったよ。でもごらん、ぜんぜん見えないだろう? 頭をぶつけるまで、そこにあるって知らなかったんだから。

「そうとも! こいつは単なる実例だよ――ある種の分子類は、そういう分子自体からあいまいなんだけど、うまいこと混合することで、透けて見える合成物体を作り出すんだよ。だけど、そう、これではまだ無機化学の問題にすぎない。君の言うとおりだよ。まあしかし、あえて言わせてもらえば、無機物質において起きていることをそっくり有機物質において起こして見せるよ。

「ほら!」とポールは、一本の試験管をぼくと光線との間にかざした。曇ったというか、濁ったというか、そんな感じの液体。ポールがその中身を別の試験管にうつしかえると、それはあっという間に透き通って、きらめき始めた。

「それから、ほら!」ポールはずらりと並んだ試験管の間をすばやくかつ慎重に動きまわりながら、白い溶液を葡萄色に、黄色い溶液を茶褐色に変化させた。ポールはリトマス紙を一切れ酸の中に落とした。すぐさまリトマス紙が赤く変色する。そしてアルカリに浮かべると、リトマス紙はすぐに青く変色した。

「リトマス紙は依然としてリトマス紙である」と、ポールは講義調の堅苦しい言い方をした。「ぼくは、このリトマス紙をなにか他のものに変化させたわけではない。ではなにをやったのか? ただ単に、分子配列を変化させたにすぎないのだ。はじめ、リトマス紙は赤以外のあらゆる色を吸収していたのだが、分子構造に変化が生じたため、青以外のあらゆる色を吸収するようになった。時はたてども際限なく、ね。さて、ぼくがやろうとしているのはこういうこと」かれはここで間をおいた。「ぼくは探している――そう、そして見つけ出す――適切な試薬を。活動中の有機体に作用して、たった今きみが目にしたものに似た分子変化を引き起こすやつをね。やがてぼくは見つけ出す。いや、言わせてもらえば、すでにもう手のうちにある。そういった試薬は、生きた体を青や赤や黒ではなくて、透明に変えるんだ。そうなれば、あらゆる光が通過する。つまり不可視となる。しかも影を作ることはない」

数週間後、ぼくはポールとハンティングに出かけた。ポールは何度もぼくに、ワンダフルな犬を撃たせてやるからお楽しみに、なんて言っていた――最高にワンダフルな犬で、もっと言えば、人類がいままでに撃ったことのないほどの犬だよ、そう断言した。しかもそれをあまりに繰り返すので、ぼくもだんだん好奇心が湧いてきた。だけど問題の朝、ぼくはがっかりした。というのも、犬なんてどこにもいなかったからだ。

「心配するな」と、ポールは気にも留めていないようすで、ぼくらは草原を横切りはじめた。

そのときは、なにが原因なのかぼくには分からなかったけど、ひどく気分が悪かった。命に関わる急病になったような感じ。全神経がまいってしまい、そして、まいってしまった神経がやるとんでもない悪戯のせいで、頭の中で反乱が起きているように思えた。奇妙な音がぼくの心をかき乱す。ときどき草がかきわけられる音が聞こえたし、いちどなど、石だらけの区画の向こうに軽快な足音がしたこともあった。

「ポール、なにか聞こえなかった?」いったん、ぼくはそう尋ねた。

でもポールは首を横に振って、どんどん先に足を進めていった。

フェンスを登る間中、犬がしきりにくんくんと低い声で鳴くのが聞こえた。明らかに、ぼくから一メートルと離れていないところから。だけど、あたりを見まわしても、何も見当たらない。

ぼくは、ぐったりとなって、震えながら地面に落ちた。

「ポール、屋敷に帰ったほうがいいと思うんだけど。なんだか病気になりかけているみたいな気分だ」

「馬鹿言っちゃいけない」とポールは答えた。「大丈夫だって。すばらしい天気じゃないか」

でも、狭い道に沿ってポプラの木立を抜けると、なんらかの物体がぼくの脚をかすめたので、けつまずいて、もうすこしで転んでしまうところだった。ぼくは急な不安を湛えてポールを振りかえった。

「どうした?」とポール。「脚が罠にでもひっかかったのかい?」

ぼくは舌を軽く噛んだままとぼとぼと歩きつづけた。何か正体不明の重病がぼくの神経を痛めつけているのだとはっきり確信していたし、ひどく当惑してもいたのだけど。それまでのところ、目は無事だった。でも、ふたたび開けた原っぱにでると、視力までがぼくを裏切った。雑多な色の奇妙なきらめきが、虹の光が、ぼくの目の前の道に明滅し始めたのだ。それでもぼくはなんとかこらえつづけた。その雑多な色の光が一ヶ所にたっぷり二十秒はとどまって、絶え間なく瞬きながら踊りまわるのを見るまでは。ぼくは座りこみ、力なく震えていた。

「もうだめだ」と私は、両手に顔をうずめてあえぎあえぎ言った。「目までやられてしまった。ポール、ぼくを連れてかえってくれ」

ところがポールは大きな声で笑い転げた。「ぼくはきみになんと言った? ――もっともワンダフルな犬、そうだろ? さあ、こいつをどう思う?」

ポールはぼくに背を向けて少し離れると、口笛を吹き始めた。ぱたぱたと何かの足音。一匹の動物の興奮したような息遣い。そして、聞き間違いようのない犬の鳴き声。それからポールは腰をかがめると、見たところでは何もない空間を可愛がった。

「こいつだよ! さ、手を貸してごらん」

そしてポールはぼくの手を、犬の冷たい鼻と下顎にこすりつけた。犬。たしかにそうだった。猟犬らしい形、猟犬らしい毛の短さと滑らかさ。

ちょっと大げさに言えば、ぼくは急速に精神力を回復して自分を取りもどした。ポールは首輪をその動物の首周りにつけ、ハンカチをしっぽに結びつけた。その景色はまさに驚くべきものだった。何もないところに浮かぶ首輪とひらひら揺れるハンカチとが、野原を跳ねまわっている。首輪とハンカチとがイナゴマメの茂みの中、うずらの群れの中に突き立っているところは、ちょっとした見物だった。うずらたちは、ぼくらが近づくまでじっとしていたのだ。

繰りかえしその犬は、前に言ったような雑多な色の光の輝きを放った。それは、ポールの説明によると、予期していなかった問題であり、克服できるかどうか自信のない問題だった。

「あれは大きく言えば同類なんだよ」とポール。「太陽の犬、風の犬、虹の、光輪の、幻日の。光の屈折から産まれる一族だね。無機化合物や氷の結晶による屈折とか、霧や雨や飛沫や、そのほか枚挙に暇がないものによる屈折から。どうも、それは透明のために支払わなきゃいけない犠牲みたいだ。ぼくはロイドの影からは逃れた。でもあいにく、虹のきらめきに捕われたんだ」

二日後、ポールの研究室の入り口前で、ひどい悪臭に出くわした。あまりにもすさまじいものだったから、その源を見つけるのは簡単だった。腐った物体の塊が戸口のステップに転がっている。どことなく犬を思わせる輪郭だった。

ポールは、ぼくが発見したものを調べてぎょっとしていた。それはかれの見えざる犬だった。というかむしろ、かつてかれの見えざる犬だったもの。だって、今はもうはっきりと見えている。犬は、数分前までは元気一杯遊びまわっていた。調べを進めるうちに、犬の頭蓋骨が、何か重い一撃を受けて打ち砕かれているのが明らかになった。この動物が殺されたというのも奇妙な話だし、それに、こんなに早く腐敗が進むようなことってあるものだろうか。

「ぼくが内部組織に投与した試薬は無害なやつだ」ポールは説明した。「強力なやつではあるけれど、どうやら死がやってきたときには事実上、即時崩壊を促すみたいだな。驚くべきことだ! とてもとても驚くべきことだよ! ふむ、たったひとつ言えるのは、死に至らせるようなものじゃないってことだ。生きているものには無害なんだ。それにしても、いったい誰がこんなことをやったのかな?」

けれども、この事態に光が投げかけられた。怯える家政婦がもってきたニュースによると、まさにその朝、一時間もさかのぼらないころ、ガファー・ベドショーが暴力的な狂気に陥ったため家の中にストラップで縛りつけたところ、そこで――狩人小屋なのだが――ティックローン家の放牧場で出会った恐ろしい、巨大なけだものとの戦いについてわめいてまわったそうだ。そいつは、なにであったにせよ不可視の――かれの目で見たところでは不可視のものだったとかれは主張したので、涙に明け暮れけるかれの妻と娘たちは首を振った。それを見たかれはよけい乱暴になり、園丁と御者が留め穴をひとつ増やしてさらにストラップをきつくしてしまった。

さて、ポール・ティックローンがかくして不可視問題をうまいことクリアした一方、ロイド・インウッドも遅れをとらなかった。ぼくはロイドがよこしてきたメッセージに応えて、その進展具合を見に出かけた。いまや、ロイドの研究室は広大な敷地の中に孤独な佇まいを見せていた。かれの研究室は気持ちのいい林間の空き地に建てられ、うっそうとした森に四面を囲まれており、曲がりくねった頼りない小道が引きこまれていた。だけど、ぼくはこの道を何度も行き来したことがあったから、その一歩一歩をじゅうぶんに知っていた。例の林間にでたところ、そこに研究所は見当たらなかった。ぼくはちょっとびっくりした。あの趣のある小屋風の建物、あの赤い砂岩の煙突はなかった。それどころか、まるでそこにあったことすらないように見えた。取り壊された跡もない。破片もない。何もないんだ。

ぼくは以前にそれがあった場所を横切るように歩き始めた。「ここに、戸口に続くステップがあったはずだな」そう独り言を終えたとたん、何か障害物につま先がぶつかった。そのまま倒れこむと、何か、まさしくドアみたいな感じの何かに頭をぶつけた。ぼくは手を伸ばした。ドアだった。ぼくは手探りでノブを回した。それと同時に、蝶番の反対側からドアを内側に押すようにすると、研究室の調度がまるごとぼくの視界に飛びこんできた。ロイドにすぐもどると断りながらドアを閉め直して、ぼくは道を少し引きかえした。建物はまったく見えなかった。またもどってドアを開ける。とたんに、あらゆる建具と、数々の家具の仔細が見えた。まったくの驚きだった。何もなかったところが、光に、形に、色に突如変貌するんだ。

「さあ、どう思う? ん?」ロイドが、ぼくの手を強く握り締めながら問うた。「昨日の午後、絶対黒を外側に二重にコーティングして、どう見えるかやってみたんだ。頭のほうはどう? 派手にぶつけたみたいだったからねえ」

「いやいや」ロイドはぼくがお祝いを述べようとするのを遮った。「もっといいものを用意しておいたんだ」

そう言ううちにロイドは服を脱ぎ始め、素っ裸になってぼくの前に立つと、ポットを差し出して、ぼくの手にブラシを握らせた。「さ、こいつでぼくをコーティングしてくれ」

それは油っぽい、シュラックのようなもので、かなりの速さで簡単に皮膚の上に広がったし、速乾性もあった。

「これは単なる念のための予防措置」ぼくがその仕事をやり終えると、ロイドは説明した。「そして、次こそが本物だ」

ぼくはロイドに言われて別の壷を取り上げた。中身をのぞいてみると、しかし、その中には何も見えない。

「空っぽじゃないか」

「指を突っこんでみろ」

ぼくはそうした。冷たい、湿った感じがした。ぼくは手を引っ込めて人差し指を――壷に突っこんだ指だ――見ようとしたけど、それは消えていた。指を動かしてみると、そこの筋肉が緊張と弛緩を繰り帰すのが分かった。でも、ぼくの視覚は頑として拒まれている。外見的には、まさしく指を一本切り落とされたような感じだ。視覚的なところは、天窓の光にかざしてそれが床の上にはっきりと作った影を見るまでは、まったく何もなかった。

ロイドはくすくす笑った。「さ、そいつを広げてくれ、何が起きるかよく見てるんだよ」

ぼくはブラシをその、空っぽのように見えるポットの中にさっと浸すと、ロイドの胸を大きく一筆掃いた。ブラシが往くところ、その下から生身の肉体は消えていった。ぼくはロイドの右足を塗りつぶした。するとかれは一本足の、重力の法則を無視した人間となった。そうして、一筆一筆、ぼくはロイド・インウッドを無にすべく塗りつづけた。気味の悪い体験だったから、すべてが視覚的に無になったときは喜んだ。もっともその燃えるような漆黒の瞳は、明らかに何の支えもない中空に浮かんでいた。

「目にはね、害にならないように手のこんだ方法を用意しておいた」とロイド。「エアブラシをうまく使うんだ、迅速に! かくてぼくは消える」

これがうまくやり遂げられた。ロイドは言う。「さて、少し動き回ってみよう。どんな感じがしたか、分かったことを教えてくれ」

「まず最初にね、ぼくにはきみが見えない」とぼく。ロイドのご機嫌な笑い声が何もないところから聞こえてきた。「もちろん」ぼくは話を続けた。「きみは影から逃れきれていないけど、それは予想どおりだね。きみがぼくの目とある物体の間を横切ったときは、その物体は消えてしまうんだけど、あまりにも異常で不可解なことだから、ぼくの目がかすんでいるんだろうとしか思えないよ。すばやく動き回っているときは、連続的な目のかすみを覚えるな。そういう、目がかすんだ感じがすると、目がひどく痛くなるし、頭も疲れてくる」

「他になにか、ぼくの存在を知らせているものはあるかい?」とロイドが聞いた。

「ノー・アンド・イエス」とぼくは答えた。「きみがそばにいるときはね、薄暗い冷暗所とか、薄気味悪い地下墓所とか、奥深い鉱山とか、そういうところから受けるみたいな感じがする。闇夜に、船乗りが陸地の形をぼんやりと感じるのと一緒で、きみの体をぼんやりと感じるんだと思う。でも、その感じはまったくもって曖昧模糊としているよ」

ぼくらはその朝、ロイドの研究室で話をした。そしてぼくが帰ろうとすると、ロイドはその見えざる手で、神経質そうにぼくの手を取りながら言った。「さあ、世界を我が手に!」ぼくは、ポール・ティックローンもまた成功したのだということを、あえて告げる気にはならなかった。

家に帰るとポールのメモがあって、いますぐこないか、とのことだった。ぼくが車を飛ばしてやってきたときはもう、日が高く上っていた。ポールがテニスコートから呼びかけてきたので、ぼくは車を降りてそちらに向かった。なのに、コートにはだれもいない。口を開けてぽかんと立ち尽くしていると、テニスボールがぼくの腕に命中し、振り返ったところで、またべつのボールが耳をかすめていった。ぼくには敵の姿がまったく見えないまま、ボールが空間から飛んできていたので、すぐにぼくは身構えた。でも、ぼくに向かってきたボールをすばやく打ち返せるようになったとき、状況がわかってきた。ラケットを振りながら目を凝らしていると、虹のきらめきが出たり消えたりしながら、グラウンドをすばやく動き回っているのが見えた。それをとらえたぼくは、ラケットで六発ほど激しく殴りつけた。すると、ポールの声が響いた。

「もういい! もういいってば! あいた! やめてくれ! ぼくの素肌に乗っかかってるんだよ、そう! うわ! うわあ! もうしない! もうしないから! ただ、ぼくの変貌を見届けて欲しかっただけなんだ」ポールは悲しげにそう言い、ぼくはかれが傷を撫でまわしているところを想像した。

数分後、ぼくらはテニスをしていた――ぼくにはハンディキャップ、だって、ポールのポジションが分からないんだもの。ただ、かれと太陽とぼくとの角度が適切な関係にあるとき以外は。そういうとき、ポールはきらりと光った。そういうときだけ。でも、そのきらめきは虹よりも輝かしかった――混じりけのない青、細やかな紫、輝ける黄色、あらゆるその中間色。まるでダイヤモンドの輝く粉末のような、まぶしくて目も眩む玉虫色の輝き。

だけどその試合中、とつぜん寒気がした。深い鉱山や薄気味の悪い地下墓所を思わせる寒気。まさにその朝、ぼくが体験したような。次の瞬間、ネットの近くの空中、何もないところでボールが跳ねかえり、と同時に、六フィートほど離れた場所で、ポール・ティックローンが虹のきらめきを放った。ボールを跳ねさせたのがポールであるはずはないし、この異様な不快感から、ロイド・インウッドがこの場に現れたのをぼくは悟った。ぼくはロイドの影を探した。あそこだ、かれの胴回りほどの不定形の染みが(太陽は頭上にあった)、グラウンドを動いている。ぼくはロイドの脅迫を思いだし、きっと長年のライバル関係が、超自然的な戦いによって清算されようとしているんだと感じた。

ぼくはポールに警告の叫びをあげた。そして野獣のような唸り声を聞いた。そしてそれに答える唸り声。黒い染みがスピーディにコートを横切って行くのが見えた。そしてそれを、雑多な色の溢れるような輝きが同じスピードで出迎え、それから影と光がぶつかって、見えざる殴り合いの音が聞こえてきた。ネットがぼくの怯えた瞳の前で沈んだ。ぼくは、叫びながら戦士たちに向かって飛びかかった。

「お願いだから!」

だけど二人の縺れ絡まった体に膝をぶつけたぼくは、ひっくり返ってしまった。

「引っこんでてくれよ!」何もないところから、ロイド・インウッドの声が聞こえてきた。それから、ポールの叫び声。「そうとも、もう馴れ合いはごめんだ!」

声を聞いた感じでは、二人は間合いをとったらしい。ぼくにはポールの位置が見えなかったから、ロイドを表す影に近づいていった。ところが、逆サイドから顎めがけて強烈な一撃が飛んできて、ポールの怒鳴り声を耳にした。「よおし、引っこんどいてくれるな?」

それから二人はふたたびぶつかっていった。殴り合いの衝撃。呻き声と喘ぎ声。瞬く光と蠢く影。それらは、二人の死闘が行われている証だった。

ぼくが助けを求めて叫ぶと、ガファー・ベドショーがコートに走りこんできた。ぼくには見えた。やってきたかれはぼくに不思議そうな眼差しを向けた、が、かれは二人にぶつかって地面に頭からまっさかさまに倒れた。絶望的な金切り声で叫ぶ。「おお神さま、どうかお助けを!」かれは飛び跳ねるように立ちあがると狂ったようにコートから逃げていった。

ぼくはなんにもできなかった。だから立ったまま、魅入られたように力なくその戦いを見つめていた。真昼の太陽がむきだしのテニスコートを目も眩むほどに照らしあげた。そう、むきだしだった。ぼくに見えたものは、影の染みと虹の瞬き、見えない足がたてる土ぼこり、すばやい足さばきが地面に残す傷跡、二人の体が投げつけられるたびに膨らむネットの格子、それですべてだった。やがて、そのすべてがやんだ。もはや光もあらわれず、影は長く伸びてそのまま動かない。ぼくは、あの、少年たちの決意した顔を思い出していた。暗くて冷たい水底の根を目指して潜っていったときの顔を。

一時間後、人々はぼくを見つけ出した。なにが起きたのかすこしだけほのめかすと、使用人たちも理解してくれて、一団となってティックローンの家を立ち退いていった。ガファー・ベドショーは二度めのショックから回復せず、回復の見込みもないまま精神病院に閉じ込められた。二人の驚嘆すべき発見はポールとロイドの死と同時に失われ、双方の研究室は悲しみに明け暮れる親類たちの手で取り壊された。ぼくはといえば、もはや化学の研究に目を向けなくなり、科学は我が家の禁句となった。ぼくはバラたちのもとに帰ってきている。自然の色、ぼくにとってそれは十分すばらしいものなんだ。


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