フランク・ラムゼイからウィトゲンシュタインへの手紙, フランク・ラムゼイ

一九二三年十月十五日


トリニティ

親愛なるウィトゲンシュタインへ

先日、プッフベルクのホテルでウェイターから、私がまだ手形を未払いであるという旨の手紙を受け取りました。(ですがほとんど私の過失ではないのです。所有者の息子は、私が全てを支払ったと確約してくれたのですから。)私は彼に小切手を送ったのですが、彼が換金に手間取っているのではないかと思います。申し訳ありませんが、事がスムーズに運ぶかどうか、確認していただけるでしょうか? そしてもし問題があった場合、そのことを私に知らせてください。可能なら、小切手の支払以外の方法による解決を考えます。ご迷惑をかけて申し訳なく思います。ですが、彼が銀行が小切手を送るまで待ってくれれば、それほどの面倒はかからないと思います。

ケインズには、まだあなたの学位のことについて訊ねていません。

ウィーンで『サロメ』を見ました。実に美しい舞台でしたし、あのオペラ・ハウスの素晴らしさについては全く同感です。ウィーンには5日間いましたが、その間、絵画や建築を見て楽しみました。

私の方は、担当の女生徒たちの教材を準備するのに手を取られていて、まだ数についての研究を始めていません。彼女たちは、私の期待以上に理解しているように見えます。もっとも、実際に理解しているかまでは分かりませんが。

この手紙と一緒に、『論考』のコピーも一部送ります。

ラッセルは、彼の妻と共著の『産業文明の前途』という本と、彼一人で書いた『原子のABC』という本を出版したところです!

そういえば、シュレンク・ノッツィンク男爵と面識のある人物と話す機会がありました。彼は物質化現象(materialization)が起こるのを見た経験があり、その時に撮った写真を見せてくれました。それは全く驚くべき写真でした。彼はとても賢い人物なので、その写真に多くのインチキがあることを見抜いていましたが、現象は本物であると確信しています。

残念ながら、ウィーンを発つのが予想よりかなり早まりそうです。私のチケットは94万クローネでした。

あなたが私に説明してくれたことは、まだ忘れてしまったわけではありません。

草々
フランク・ラムゼイ


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