フランク・ラムゼイからウィトゲンシュタインへの手紙, フランク・ラムゼイ

一九二三年十一月十二日


トリニティ

親愛なるウィトゲンシュタインへ

お手紙どうもありがとう。

さて、あなたに良い知らせがあります。もしあなたがイギリスを訪ねていただけるなら、その費用として50ポンド(16,000,000クローネ)をお支払いする準備があるのです。ですから、どうぞイギリスへ来てください。確かあなたの夏休みは7月と8月だったと記憶していますが、それを利用するのが好都合ではないでしょうか。ただ、その期間で一つ不都合なのが、ケンブリッジでも休暇期間だということです。そのため、あなたがきっと会いたいと思う人々も、バカンスで散り散りになっているでしょう。そこで思いついたのですが、今学期の終わりに学校を離れるというスケジュールはいかがでしょう。そうすれば2ヶ月早くイギリスへ来て、5月と6月の二ヶ月間、あるいはもっと長く、あるいは短く滞在することができます。確か、あなたもそれは可能だと仰っていたと思います。ケンブリッジの夏学期は4月22日から6月13日までです。

ケインズにあなたの学位のことを訊ねました。そこで分かった状況は以下のとおりです。まず、学位資格についての規定が変わったため、6学期在学して論文を提出するだけでは、もうB.A.を得られなくなりました。その代わり、5年の在学と論文の提出によってPh.Dを得ることができます。つまり、ケンブリッジへ来てもう一年在学すれば、もしかしたら以前の2年間を足し合わせてPh.Dを取得できるかもしれません。しかし、これが唯一の可能性です。

数学の再構築へ向けた仕事は、あまり進んでいません。その理由の一つは、私が雑多な分野の読書をして過ごしていたからです。相対性理論とカントを少し、それにフレーゲを読みました。フレーゲの素晴らしさについては、全く同感です。『算術の基本法則』で彼が展開している無理数の理論についての批判には、大いに感銘を受けました。「H.シューバルト氏の数について」もぜひ読みたいのですが、まだ手に入れていません。見つけたのは、次のような魅力的な広告のコピーだけです。あなたも再びフレーゲを読みたくなるに違いありません。

「著者は自らの考察を、シューバルト氏が『数学的科学百科事典』で与えた、算術の基礎についての説明から開始している。著者はそこで方法と原理を発見している。それは、恐らくこれまでにも他の研究者たちによって使われてきたが、明確な研究と詳細な説明はなされなかったと思われるものである。その方法とは、研究者を悩ませる諸性質を無視することによってこれらを消去するものであり、その原理とは、異なるものを区別しないという原理である。著者の言うように、この原理は、数の興味深い、芝居じみた諸性質と密接な関係を持っている。著者は、この方法と原理の本質に言葉による明確な定式化を与え、その射程に光を当てようと試みることで、計り知れないほどの進歩へ第一歩を踏み出したと確信している。」

しかし、私は今どうしようもなく怠惰なのです。それというのも、ある既婚女性に対して不幸な情熱を燃やしたため、1月からこの方、精根尽き果てんばかりです。それで精神的に参ってしまい、精神分析を受けようとさえ思いました。結局、2週間前から突然元気になって、それ以来は気分も良く、仕事も順調にこなしているのですが、そうでなかったら、きっとクリスマスにウィーンへ行って、9ヶ月間そこに滞在していたはずです。

有限整数についての問題は、無限公理に関するものを除いて、全て解決されたと思いますが、きっとどこか間違っています。しかし手紙のやりとりで議論することは、私がその説明を完璧に書き出してあなたに送るのでなければ、あまりに困難です。あなたがここに居てくれたらどんなに助かることでしょう。どうか夏に来てください。あなたは、ラッセルが (∃x):fx.x=a で表現することを=を使わずに表現することがいかに難しいか、お気づきですか?

いま『カラマーゾフの兄弟』を読んでいます。イワンが語るキリストと大審問官のシーンは非常に崇高だと思います。

草々
F.P.ラムゼイ

オグデンから、『マインド』の私の論考の書評を受け取りましたか? もしまだ届いてなくて、あなたがお望みなら、お送りします。ですが内容は全然良くありません。私がそれを書いたのは、あなたに会いに行く前だったということを、どうか忘れないでください。


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