「デス、ちょっと話があるんだがいいかい?」
「喜んで」デスはまるで早熟な読書少年が聞きかじりで憶えた言葉を話すように喋った。大げさな発音で文章を省略すること無く句読点ではしっかり言葉を止める。サミーはその話し方をよく知っていた。その話し方から抜け出すのに彼自身もずいぶん苦労したからだ。ギークによく見られるそのアクセントは話す者を頭のきれるやり手と言うよりはむしろ知ったかぶりのまぬけに見せる。成長期に大人っぽい言葉遣いと子供特有の発声筋のコントロールの仕方で話そうとしているとそうなってしまうのだ。できるだけ正確な言葉であごと頬を動かさないようにしながら話すのが癖になってしまう。ギーク特有のアクセントだった。
「今朝、話したことを憶えているか?」
「新しい絶叫マシンを作るっていう話?」
「そうだ」サミーは言った。最初にそれを提案したのがデス・ウェイツだったことを彼は思い出した。いいだろう……いい出だしだ。「君の提案を受け入れることにした。言うまでもないがそのためにはスペースが必要だ。だから成績の悪いアトラクションは閉めることになる……僕が言いたいことはわかるだろう」
デス・ウェイツの白い化粧の下の顔が青くなった。「つまり……」
「ウォークスルー全部だ。もちろん棺桶コースターも。空飛ぶコウモリも。他にも一つ、二つ閉めることになるだろう。それから、もちろんいくらか人員整理が必要だ。場所を空けなくちゃならない」
「くび切りをするっていうんですか? いったい何人くらい? 今でさえぎりぎりの人数で回してるっていうのに」デスはシフト管理とスケジュール調整を正式に任されていた。もし午後に休みをとって母親を病院まで迎えに行ったり、父親を刑務所まで迎えに行こうと思ったらまず彼に相談しなければならないのだ。
「だから君の所に来たのさ。もしライドのうち六つを閉めたら……」デスが息を飲んだ。ファンタジーランドにあるライドは全部で十だ。「ライド六つ。何人の上級スタッフを辞めさせることができて、そのうえで全部を順調に運営していける?」上級スタッフは有能なティーンエイジャーよりもずっと高いコストがかかるのだ。デス一人の給料で六人の若手を雇うことができるだろう。いまいましいフロリダの労働法では毎年かならず生活費が上がることになっていてそう計上されるのだ。
デスは泣き出さんばかりだった。
「自分で見積もることもできるんだ」サミーは言った。「だけど実際のところを君に確認してもらいたいんだ。君なら現場を知っていて正しい判断ができるから。必要以上の犠牲は払いたくないんだよ」
その言葉がこの少年にどんな影響を与えるか彼にはわかっていた。デスは瞬きをして涙を引っ込めるとあごに手を当てて自分の携帯電話を引っ張りだし、操作を始めた。その中に全従業員のリストを入れているのだ。そして今、そこにある名前を別の場所に転送しようとしていた。
「彼らは戻ってこられるんだろう? 新しいライドの運営が始まったら?」
「一部は戻れない。失業者向けの面接を受けてもらう。それから彼らを失業者向けネットワーク組織に登録する。最高の組織の一つだ。団体割引もつけられるだろう。就職の推薦状もつけるよ。役に立つだろう。みんな大丈夫さ」
長い間、デスは彼を見つめていた。この少年は馬鹿じゃない。サミーは知っていた。馬鹿な人間なんて一人もいない。ウィーナーも、この少年も、互いに鎖で繋がってファンタジーランドを歩きまわるゴスも。いまにこの場所に詰めかけるだろうファトキンスだってそうだ。誰ひとりとして馬鹿な者はいない。彼らはただ……甘いのだ。厳しい決断から逃げ回っているのだ。厳しい決断ならサミーの得意とするところだ。