メイカーズ 第三部, コリイ・ドクトロウ

第十七章


最初の一週間、デス・ウェイツは何度か意識を取り戻したり失ったりしていた。混みあった病棟のベッドの上で目を覚ますたびに前もここで目を覚ましたことがあるぞと彼は思った。体が痛み、暴行が始まったあたりから後の記憶がなかった。

だが一週間ほど過ぎた頃、気がつくと彼ははっきりと目を覚ましていた……まだそこら中が痛んでいたが強力な痛み止めのおかげでにぶく響くひどい痛みを感じるだけだった。そこには彼の意識が戻るのを待っていた人間がいた。

「こんにちわ。ダレン」男が言った。「私はライドで働いているあなたの友人たちの雇った弁護士です。名前はトム・レバイン。ディズニーに対して訴訟を起こしていてあなたから何か証言をもらえればと思っています」

デスはダレンと呼ばれるのが好きではなかったしこのまぬけと話をしたいとも思わなかった。目覚めた彼はひどい怒りの感情に捕らわれていた。彼の頭を地面に何度も打ちつけながらディズニーのことを叫んでいた無表情な目つきの男の記憶がよみがえった。あれをやらせたのがサミーなのはわかっていた。とにかくサミーと話をしたいという思いで今は頭がいっぱいだった……。今回のことは彼の想像を超えていた。スケッチブックに中世風の拷問部屋や吸血鬼を描くのは楽しくてしかたなかったが、実際のところ暴力的なことには全く興味がなかった。

暴力それ自体には興味がないのだ。

「また今度にしてくれないか?」口がひどく痛んだ。彼は歯を四本失い、縫合が必要なほど強く舌を噛んでいた。自分が発した言葉なのにかろうじて意味がわかるという始末だった。

「そうしたいのはやまやまですが今は少しの時間も無駄にしたくないのです。私たちがディズニーに対して訴訟を起こしていることはあなたもお聞きになっているでしょう?」

「いいや」デスは言った。

「意識を失っていた間のことを調べておくべきですね。ともかく私たちは訴訟を起こしました。不正競争が理由です。私たちは彼らを一掃し、一セント残らず取り立てることを狙っています。今は訴訟前整理手続きの最中ですがあなたの暴行事件に関する証拠は全て裁判手続きから排除するようにという申し立てがあるんです。たわ言だと私たちは思っています。あなたがお友達に話した内容から見て彼らがあなたを黙らせようとしていることは明らかだ。あなたに証言されれば彼らの心証が悪くなりますからね。そういうわけで私たちにはあなたからの情報が必要なんです。犯人があなたに言ったことや以前にあなたがネットに投稿した内容、あなたがディズニーで働いている間に見聞きしたことや知り合った人物については何もかも知りたい」

「俺がぶちのめされたのはそもそも俺がそいつをしゃべってまわったからだとあの男が言ったってことはあんたも知っているんだろう?」

弁護士は手を振った。「やつらがあなたをつけ回す方法はもうありません。こんなことをやらかすとはやつらは相当なまぬけと見える。恐ろしく頭が悪い。いずれはあなたに正式な証言をもらいたいと思っていますが、今回はたんに全てをはっきりさせておくための事前の面会です」

男が前に体を傾ける。唐突にデス・ウェイツはこの男が自分を殴りつけようとしているのだという骨の髄からの確信を抱いた。息を飲んで彼が体を縮こませると肉体の隅々が猛烈な抗議の声を上げて彼は悲鳴をあげた。まるで皮膚の下で骨がすり潰されるようだった。

「おっと落ち着いてください。大丈夫」弁護士が言った。

デス・ウェイツは泣き出しそうになるのをこらえた。この男は自分を殴ろうとしているわけではないのだ。だが自分に向かってくる動きだけでまるで斧を振りかぶられたかのように飛び上がって彼は怯えた。パニックがおさまり始める。なんとか泣き出すのをこらえることができた。

「聞いてください。ライドの運営者たちは私にあなたからできる限りの情報を手に入れるように言いました。ライドの安全を守り、あなたにこんなことをした卑劣なやつらを捕まえるには必要なことなんです。私だってあなたを困らせたくはありません。ですがこれは私の仕事なんです。わかってくれますね?」

デスは鼻をすすって涙を引っ込めた。喉の奥はまるでさびたやすりを擦りつけられたようだった。「水を」しわがれた声で彼は言った。

弁護士は頭を振った。「すみません。あいにく点滴しかありません。看護師が厳しくてね。それじゃあ始めましょう。いいですか。あっというまに終わりますよ」

観念したデス・ウェイツは瞳を閉じた。「始めてくれ」彼は言った。その声はまるで長い間、太陽の下に放置されて乾いたタールのようだった。


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