エピローグ
ペリーが会いに行った時、レスターは自分の作業場にいた。彼はヨガマットを持ちだしてかかりつけの理学療法士が彼に課したゆっくりとした運動をしているところだった。ぼろぼろになった骨と萎縮した筋肉を伸ばし、体全体を調整しようというのだ。彼は今までに三人の理学療法士をくびにしていたがスザンヌが新しい理学療法士を探し出し、今度の人物は今までより腕がいいようだった(彼女の彼に対する愛情のなせるわざだ)。
ペリーがドアから入っていった時、レスターは四つんばいに伏せて尻を宙に突き出しているところだった。両足首の間から目をやると彼は目を細めて上下逆さの世界を見やった。ペリーは慎重に無表情を装った。逆さにしようが正しい向きにしようが同じように見えるはずだ。低いうなり声を上げて彼が膝をつき、まるでポップコーンが弾けるような音がした。
「あまり良くないようだな」何気ない声を装ってペリーは言った。
「面白い冗談だ」レスターが答える。「こっちに来て起き上がるのを助けていただけませんかね?」
ペリーは彼の前に屈みこんだ。彼の目や顔全体にどこか面白がっているような雰囲気があった。少し汗の匂いがしてむさ苦しかったがその表情はレスターが調子のいい時のそれだった。ペリーはそのたくましいざらついた両手をつき出した。一瞬の間をおいてレスターがその手を握り返しペリーは彼を引っ張り起こした。
二人は手を握り合ったまま居心地悪そうに互いに向かい合った。次の瞬間、ペリーは両腕を広げて叫んだ。「さあ来たぞ!」
レスターは笑い声を上げて十五年間、音沙汰のなかった親友に抱きついた。