寝つかせ話:ふとっちょあらいぐまの物語, アーサー・スコット・ベイリー

ふとっちょ、卵について学ぶ


お母さんが持ちかえった魚を食べおわり、もっとたくさんの食べものをさがしにひとりで出かけたとき、ふとっちょあらいぐまはこれが冒険になることを知りませんでした。彼はやぶや背の高い草のあいだをかぎまわり、数ひきの虫と、一、二ひきのカエルをつかまえました。でもそんなものではもの足りないと思いました。地面をはいずりまわっていても、あまり幸運にめぐまれそうにありませんでした。そこでリスの巣か鳥の卵をさがそうと、背の高いヘムロックの木に登りました。

ふとっちょは木登りが大好きでした。ヘムロックの大木に登り、ほどなくすると、彼は腹ぺこを忘れてしまいました。枝がゆらゆらとゆれ、あかるい陽光が背中をぽかぽかと温めて、とてもよい心地でした。木のてっぺん近くまで登ると、ふとっちょはまっすぐな木の幹に体を巻きつけました。木の葉が厚くしげり、ばねのようにしなる枝が、彼の体を安全に包みこみました。彼はまもなくぐっすりと眠りこみました。ふとっちょは食べることの次に眠ることが好きでした。彼はまもなく大きないびきをかきはじめました。

ようやくふとっちょあらいぐまは目をさましました。あくびをし、木の幹に巻きつけていた体をそろそろとほどきました。今ではとてつもなくお腹が空いていました。ただちに食べものを見つけなくてはだめだと感じました。

ふとっちょは地面に下りることなしに隣りの大木のてっぺんにわたり、すべての枝のあいだをくまなくさがそうと、つぶらなビーズのような目を光らせました。彼はすぐさま笑みをうかべました。どうしてかというと、よろこんだからです。どうしてよろこんだのかというと、まさにお目当てのものを見つけたからです。それほど離れていない下方に、小枝を組んで木の皮とコケをしきつめた大きな鳥の巣がありました。カラスの巣だ、とふとっちょは考えました。彼は木のまたにかかった巣に向かって、さっさとすべり下りていきました。

巣の中には四個の白い卵がありました――ふとっちょがこれまで見たうちで一番大きなカラスの卵でした。彼は意地きたなく食べはじめました。鼻が卵まみれになりましたが、ぜんぜん気にしませんでした。なんておいしい卵なんだろう、とばかり考えていました――そして、この卵がもっとたくさんあればいいのになあと思いました。

とつぜん、なにかが高い木の枝えだのあいだをぬって襲いかかってきました。ふとっちょあらいぐまの頭上を、強い風がさっと吹きぬけました。同時に、なにかするどいものがふとっちょの背中をぐさりと突きさしました。ふとっちょは落っこちないように巣のはしにしがみつきました。

ふとっちょはおどろきました。ひかえ目に言っても、カラスがこんなふうに攻撃してくるとは聞いたこともありませんでしたから。彼はこわくなりました。背中を傷つけられたからです。巣から手を放したら下に落っこちそうでおそろしかったので、戦えそうにありませんでした。

できるかぎりはやく走って、家に逃げかえるよりほかにありません。ふとっちょは急ごうとしました。けれど鳥が、彼の背中を叩いたり引っかいたり、あっちに引っぱったりこっちに引っぱったりしました。ふとっちょは二度と家にかえれないのだと思いはじめました。けれどとうとうお母さんのいる古いポプラの木にたどり着きました。大きな枝のうろにたどり着くと、まもなくふとっちょは大いに安心しました。暗がりの中にすべり込んでふとっちょが大よろこびしたのを、みなさんもご想像がつくでしょう。そこではお母さんと、弟の黒っちょと、ふわっちょとかわいっちょの妹たちが、そろってぐっすりと眠っていました。カラスはここまでついて来られないのだとわかり、ふとっちょはよろこんだのです。

あらいぐま夫人が目をさましました。彼女は、ふとっちょの背中がいたましく切りさかれているのに目を止めました(あらいぐまというものは、みなさんもご存知でしょうが、みなさんが昼中に見るのと同じくらいに暗がりがよく見えるのです)。

「一体ぜんたいなにがあったんだい?」あらいぐま夫人はさけびました。

ふとっちょはあわれっぽくわけを話しました。彼はちょっぴり泣きました。背中が痛むのと、ふたたび安全なわが家にかえることができたうれしさのためでした。

「その卵はなに色だったの?」あらいぐま夫人がたずねました。

「白だよ!」ふとっちょは答えました。

「ハハア!」あらいぐま夫人は言いました。「カラスの卵は青みがかった緑色だということを忘れたのかい? それはオオタカの巣にちがいないよ。オオタカはすべてのタカの中でも一番どうもうなんだよ。背中を引っかかれてもふしぎはないよ。こっちに来て見せてごらん」

ふとっちょあらいぐまはすっかり誇らしくなりました。お母さんが調べているのは、オオタカにむごたらしく切りさかれた傷あとなのです。彼は、おそらくみなさんが考えている半分も、自分をかわいそうだと思っていませんでした。卵の味がどれほどおいしかったかを思い出していたからです。彼はただ、あの卵を一ダースも食べられたらよかったのになあ、とばかり考えていました。


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