寝つかせ話:ふとっちょあらいぐまの物語, アーサー・スコット・ベイリー

ふとっちょ、かめ夫人のひみつを発見する


オオタカの冒険があってから長いあいだ、ふとっちょあらいぐまは、木のてっぺんに近寄りませんでした。自分の住んでいる家である古いポプラの木のうろから出るときは、かならず下におりました。家にかえるのでなければ、ただの一本の木にも登りませんでした。地面の上にいれば、とにかく安心できました。だって、木のてっぺんで恐ろしい思いをしたことも、オオタカのかぎづめで背中を傷つけられたことも、忘れてはいなかったのですからね。

正確に言えば、恐ろしい目にあってから、ちょうど三日目のことでした。ふとっちょあらいぐまは、スウィフト川のゆるい流れにできた入江の浅瀬に、ひょっこり出くわしました。カエルをさがしていたのですが、まったくつきに恵まれていませんでした。本当のことを言いますと、ふとっちょはまだ小さすぎて、カエルを見つけられたときだって、簡単につかまえることはできませんでした。それに、うんと太っており、体がたいそう丸かったので、あまりすばしっこくなかったのです。

入江に出くわしたふとっちょは、背の高いイグサの草むらのかげに隠れ、するどいつぶらな目で辺りをぐるりと見まわしました。鼻をひくつかせ、空気のにおいをかぎました。カエルはいないかしらと思いました。けれど、一ぴきの姿も見あたりませんでした。ほかのあらいぐまが、ふとっちょが来るちょっと前にやって来て、ここのカエルを全部とってしまったにちがいない、と、ふとっちょは考えはじめました。つづいて、ふとっちょはカエルのことをすっかり忘れてしまいました。

そうですとも! カエルのことなど、ふとっちょあらいぐまは、頭からすっかり追い出してしまいました。そんなものより、もっと興味深いものに目を注いでいたのです。かめ夫人です! 最初にふとっちょが見つけたのは、かめ夫人の小さな黒い頭でした。それは、入江の岸にそって、ぷかぷかと流れていました。かめ夫人は、ふとっちょが隠れている岸辺にむかって、泳いできました。泳ぎつくと、かめ夫人はすぐさま水から上がり、入江のほとりの砂の上を、よちよち歩き出しました。

かめ夫人は、少し歩いたところで、立ち止まりました。そして少しのあいだ、とても忙しそうになにかをしました。最初、彼女は砂に穴をほりました。ふとっちょは、彼女はなにをさがしているのかしら、と思いました。でも、ふとっちょはじっと静かに隠れつづけました。しばらくすると、かめ夫人はまた入江の水にざぶんと入り、泳いで去っていきました。けれど、彼女は立ち去る前に、ほった穴に砂をかけていきました。それから、辺りをぐるりと見まわしました。まるで、だれか彼女を見ていた者はいないかと、確かめるように。それから、川にむかってよちよちとゆっくり歩いていくとき、ふとっちょは、彼女がほほ笑んでいるのを見ました。まるで、大いに満足しているというように。かめ夫人は、ひみつを隠しているように見えました。

かめ夫人をぬすみ見ているうちに、ふとっちょあらいぐまは、ひどく興味をかき立てられました。彼女の姿が見えなくなると、ふとっちょはすぐさま隠れていた背の高いイグサの草むらからとび出し、小走りで入江のほとりに下りていきました。かめ夫人が穴をほり、また埋めもどした場所に、まっすぐに向かいました。彼女がしたことがなんだったのか、知りたくてたまりませんでした。足元のかめ夫人がほった場所を、ほり返しはじめました。

ほんの六つ数えるうちに、ふとっちょあらいぐまは、かめ夫人のひみつを発見しました。そこは深い砂でできた川岸だったので、前足のかぎづめを使わなくても、かんたんにほれました。目の前にあらわれたのは――なんだと思いますか? 卵です! かめの卵です! 二十七個の、丸くて白い卵です。かめ夫人は、卵をかえすために、あたたかい砂の中に埋めておいたのです。それこそが、彼女がだれも見ていないかと、辺りをぐるりと確かめたわけだったのです。それこそが、とても満足そうだったわけなのです。かめ夫人は、期待で胸をふくらませていたのです。しばらくしたら、これらの卵から二十七ひきの子がめがかえるのだと思って――ちょうどニワトリのようにね――そして、自分で砂をかき分けて、穴の中から出てくるでしょう。

けれど、決してそうはなりませんでした。ふとっちょあらいぐまは、卵を見つけたおどろきからさめるやいなや、ただちに二十七個の卵にぱくつきはじめました。おいしい卵でした。最後のひとつを食べおわるころには、なんて幸運だったんだろうと思わずにはいられませんでした。


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