クリスマスキャロル チャールズ・ディケンズ

三人のうち最初の精霊


スクルージが目を覚ましたときあたりはとても暗く、ベットからでてみると寝室のくすんだ壁とすきとおった窓の区別がほとんどつかないくらいだった。探るような目で暗闇を見通そうとしたが、そのとき近くの教会の鐘が45分をしらせスクルージは何時かをききとろうとした。

びっくりぎょうてんしたことに、荘厳なる鐘は六、七、そして七、八、とうとう十二で終わった。十二時とは。自分がベットに入ったのは二時をすぎていた。時計が狂ってる。つららででも入ったに違いない、十二時とは。

スクルージはこの途方もない時刻をただすために自分の時計のボタンをおした。そのせわしげな小さな音は12回なりひびき、そしてとまった。

「なんだって、ありえないぞ」とスクルージはひとりごちた。「まるまる一日眠りこけてて、次の日の夜になっただって。太陽がどうかしちまったにちがいない、昼の十二時だよ」

この考えはもっともに思えたので、ベットから飛び出ると、手探りで窓の方まで行った。部屋着のそでで霜をおとさなければ何もみえなかった。ただそうしてみても、ほとんど何も見えなかった。分かったことといえば、まだすごく霧がかかっていてとても寒いということ、そしてあちこちを走り回っていたり、あわてふためいてる人の音は聞こえなかったということだ。もし夜が昼を駆逐しずっと夜のままになってしまったら、まちがいなく騒がしかっただろうから、これでまぁ一安心というわけだ。というのも「エベネーザー・スクルージの指定どおりこの小切手が一覧されてから三日後には支払うこと」などというのは、数えるべき日がなければたんに国が保証してくれるものにすぎなくなってしまうだろうから。

スクルージはふたたびベットにもどると何度も何度もそのことについて考えたが、結局考えはまとまらなかった。考えれば考えるほど、わけがわからなかった。そして考えないようにすればするほど、どうしても思いはそこへともどってしまうのだった。

マーレーの精霊がとくに気にかかった。すべては夢だったんだとじっくり考えて自分の中で考えがまとまるたびに、また強いばねがはじけるように最初にもどってしまい、始終同じ問題が心にうかんできた。「あれは夢だったのか、あるいはそうではないのか」

スクルージは鐘が45分をしらせるまでそんなことを考えていたが、とつぜん精霊が鐘が一時をしらせるときに訪問があるということを警告したのを思い出した。そしてその時間まで起きていることにした。寝ないことが天国にいけないことと同じだとおもえば、たぶん寝なかったのは出来るだけのこととしては一番賢いことだろう。

あと15分はとても長く、無意識のうちにも眠りにつきそうになって、時計を聞き逃したのではと思うのも一度や二度ではなかった。とうとうスクルージの耳にも鐘の音が響いた。

「ガラン、ガラン」

「15分」スクルージは数えながら言った。

「ガラン、ガラン」

「30分」

「ガラン、ガラン」

「あと15分」

「ガラン、ガラン」

「時間だ」スクルージはかちほこったようにもらした。「でも何も起きない」

スクルージが言葉をもらしたのは鐘が鳴り響く前で、いま荘厳で鈍くどこかうつろで憂うつな鐘の音が響いた。その瞬間に、部屋に光がさし、ベットのカーテンが開いた。

ベットのカーテンは開いた、ちゃんと言おう、そう、一つの手で。それも足や背中の方のカーテンではなく、まさしく顔が向いている方のカーテンだ。ベットのカーテンは開いた。そしてスクルージはいそいで体を半分おこし、カーテンをひいたこの世のものではない訪問者と正面から向き合うこととなった。まるでわたしとあなたがたと同じくらい近くに。そう、わたしも実はあなたがたの心のすぐ側に立っているんですがね。

訪問者のすがたは奇妙なものだった。子供のようでもあり子供というよりは老人のようでもあり、この世のものではないふうに見えるので、姿がうすれていき子供の背格好にまで縮んだとでもいうようだった。髪は首と背中までたれさがり、年をとっているかのように真っ白だった。ただ顔にはしわが一つもなく、肌は若い人のものだった。腕はとても長く筋骨たくましかったし手も同じで、まるでとんでもない力でものを掴むかのようだった。そして足もすらっとしていて、腕とおなじくらいむきだしになっていた。まっしろなガウンをはおっていたが腰のまわりにはかがやくベルトをしており、その衣装は本当にうつくしかった。手には若々しい緑のヒイラギの枝をもち、それは冬のしるしにもかかわらず、装いには夏の花がかざられていた。しかし全体で一番奇妙だったのは、頭にいだかれた冠から光の洪水があふれていることだった。そのおかげでさきほどのようなことが全部みてとれたのだ。そしてもっと光を弱めたい場合は、まちがいなく今は脇にはさんでいる大きなろうそく消しを帽子にして使うんだろう。

ただスクルージがだんだん落ち着いて見てみると、このことでさえ一番変わっている特徴とはいえなかった。というのは、ベルトがある場所できらっと光ると、次には別の場所で光り、あるときは明るく次には暗く、だから全体の姿も形をかえ、今は手が一本と思うと次のときには足が一本、そして足が二十本、頭がない二本足、体がなく頭だけといった具合だった。体もどろどろにとけ、輪郭も漆黒の闇に溶けてはっきりとしなかった。ただすごく不思議なことにそうなっていてもまた元にもどり、明確な輪郭のはっきりした姿になるのだった。

「あなたは、わしのところに来る予告されていた精霊でしょうか」スクルージは尋ねてみた。

「そのとおり」

声はやさしく落ち着いていた。すごく低い声で、まるですごく側にいるのではなくずっと遠くにでもいるかのようだった。

「どなた、というかあなたは何なのですか」スクルージはたたみかけた。

「昔のクリスマスの精霊だよ」

「ずっと昔のですか」スクルージは、その小柄な姿を目にしてたずねた。

「いやおまえの昔だよ」

たぶん誰かに聞かれてもスクルージにもどうしてか説明できなかったでしょうが、かれは精霊が帽子をかぶっているところを見てみたくなり、かぶってほしいとお願いしてみました。

「なんだと」精霊は声をあらげました。「世俗にまみれた手で私の光をこんなにすぐに消すつもりとはな。おまえは、こういった帽子をつくるのに情熱をかたむけ、わたしに目深にこれをかぶらせようと永遠とがんばっているうちの一人だってことで十分じゃないのか」

スクルージはうやうやしく、あなたの気に障ることをわざとしたり、自分としては精霊にむりやり帽子をかぶせようとするなんてことはいままで思いもよらなかったと言い訳をした。それから大胆にもどうして自分のところにやってきたのかを尋ねた。

「おまえの幸せのためだよ」精霊は答えた。

スクルージはとても感謝しているといったが、夜の眠りを邪魔しないでくれた方がどれだけ自分の幸せになっただろうかと考えずにはいられなかった。精霊はまるでスクルージの考えをよみとったように、すぐにこう言った。

「おまえの更正のためだと言ったほうがいいみたいだな、さて」

そして話しながら手をさしのべると、やさしく腕をまわした。

「起きて、わたしと一緒に歩くんだ」

スクルージが天候と時刻が歩き回るのにはふさわしくないと嘆願しても無駄だっただろう。ベットは暖かく温度計は氷点下をさしていたとか、薄着ではいてるものといったらスリッパと部屋着とナイトキャップだけで、そのとき風邪をひいてるといったところで無駄だっただろう。手は女性のようにやさしかったが、抗いがたいものだった。スクルージは起き上がり、精霊が窓の方へと行くのを目にして、上着をつかみ嘆願した。

「わしは人間だよ」スクルージは異議を申し立てた。「下に落っこちまう」

「そこにわたしの手がふれるから我慢するんだな」精霊はそう答え、心臓の上に手を置いた。「そうすればこういった場合だけじゃなくても支えてやれるからな」

そういっているあいだにも、壁を通り抜け、かれらは左右に畑がひろがる田舎のひらけた道にたっていた。街は姿を消しあとかたもなかった。暗闇と霧もともに姿をけし、そこははれやかで冷ややかな冬の日であり地面には雪がつもっていた。

「すごい」スクルージはあたりをみまわし両手を組み合わせ、声をあげた。「わしはこの土地で育ったんだ、子供のころここにいたんだ」

精霊はやさしいまなざしでスクルージを見守った。精霊がやさしくふれたのは、軽くほんの一瞬だったが、老人の感覚ではずっとそこにあるかのようだった。スクルージは、さまざまなたくさんの香りがあたりにはただよっているのに気づいた。それぞれのさまざまな香りはさまざまな長いあいだ忘れ去られていた考えや希望、喜び、気づかいに結びついていた。

「おまえの唇はふるえてるな」精霊は言った。「ほおには何かついてるぞ」

スクルージはいつもとは違う声でもごもごと、にきびだと答えた。そして精霊に行きたいところに連れて行ってくれと頼んだ。

「この道をおぼえているか」精霊はたずねた。

「覚えている」スクルージは熱のこもった声で答えた。「目をつむったって歩けるよ」

「なんだってこんなに長いあいだ忘れていたのかな」精霊はつぶやいた。「さぁ行こうか」

二人は道を歩いていって、スクルージはすべての門、ポスト、木を覚えていた。そして小さな市のたつ町が遠くにあらわれ、橋、教会、曲がりくねった川があった。毛足のながい小馬が何頭かかれらの方に歩いてきて、その背中には少年がのっているのが目にとまった。その子供たちは農民たちが駆っている軽馬車にのっている他の少年たちに声をかけていた。そういった子供たちは元気一杯でおたがいにどなりあい、とうとう広い野畑が軽快な音にみちて、さわやかな大気が笑い出したかのようだった。

「これらはかつて存在したものの影にすぎない」精霊は語った。「わたしたちの存在には気づかないんだよ」

陽気な一団がやってきて、スクルージはそのひとりひとりの名前をあげることができた。いったいどうしてかれらの姿をみてスクルージはこの上ない喜びを感じたのか? いったいどうしてその冷たい目は涙にぬれたのか、またかれらが通り過ぎていくときにはげしい動悸がしたのか。かれらがお互いにメリークリスマスと、辻やわき道で自分たちの家へと別れるときに声を掛け合うのが聞こえたのがどうしてこれほど嬉しかったのか。メリークリスマスが、スクルージにとってなんだというんだ。メリークリスマスだって。いままでメリークリスマスがスクルージになにかをしてくれたとでも言うのだろうか。

「みんなが学校からかえってきたわけじゃない」精霊は言葉をもらした。「ひとりだけ、友達からも仲間はずれにされて、そこに残っている子がいる」

スクルージは自分もわかっていると、うなずいた。

ふたりは大きな道をはずれて、よくおぼえているわき道へと入っていった。するとすぐにくすんだ赤いレンガでできていて、小さな風見鶏がのっている丸屋根でベルがついている大きな建物についた。そこは大きな家だったが、破産した家だった。というのも広々とした部屋もほとんど使われておらず、壁はしめっていてコケむしており、窓は割れていて門も朽ち果てていた。鶏が小屋でコッコと鳴き声をもらし歩き回り、馬車入れや物置小屋には雑草がおいしげっていた。そして室内にもむかしの面影はとどめていなかった。荒涼としたホールを入っていくと多くの部屋のドアが開きっぱなしで、のぞいてみると家具もほとんどなく寒々しく広々としていた。空気には土臭さがあり冷え冷えとしていて、それはろうそくはたくさん立っているのだが、食べるものはそれほどないという光景を連想させた。

精霊とスクルージはホールをよこぎり、家の裏手のドアまでやってきた。ドアがあくと広々とした何もない陰鬱な部屋が姿をあらわし、かざりもなにもない松材のいすや机がいくつかならんでいるのがいっそうむきだしな感じを与えていた。そのひとつで、ひとりの少年がわずかな暖のそばでだが読書をしていた。スクルージも椅子のひとつに腰をおろし、かつての忘れ去った自分の姿を目にして涙をながした。

家の中では物音ひとつも、壁のむこうからネズミがチューチュー鳴いたりばたばたしているのさえ、あるいは荒れた裏庭で半分こわれた雨どいから水がもれる音も、元気がないポプラの葉のない大枝のため息も、空の貯蔵庫のドアが無駄に開いたり閉じたりしているのも、暖炉の火がはじけるのでさえ、そのどれもがスクルージの心をなごませ、そしていっそうスクルージに涙をあふれさせた。

精霊はスクルージの腕にふれると、熱心に本を読みふけっている昔のスクルージ自身を指さした。とつぜんひとりの男が外国風の衣装をまとって、見た目は立派で目立つふうだったが、窓の外にたっていた。ベルトに斧をはさみこみ、薪をつんだロバの手綱をひいていた。

「あぁ、アリババさんだ」スクルージは感極まって言葉をもらした。「なつかしい素敵なアリババさんだ。そうだ、そうだ。あるクリスマスのとき、あのひとりぼっちの子供がここでひとりっきりだったときに、アリババさんははじめてああいう風にきてくれたんだ。かわいそうな坊や、それにバレンタインも」スクルージは続けた。「それからあの乱暴な兄弟のオルソン。みんないっしょだった。それにあいつの名前、ダマスカスの門で眠ったまま、股下をはいたまま置いていかれた奴。あれが見えるでしょう。それに守護神によってさかさまにされた悪魔の馬丁。ほらさかさまになっている。お似合いだよ。うれしいな。なんだってあいつがお姫様と結婚しなきゃならないんだ」

スクルージがこんなことについて、笑っているとも泣いているともつかないような興奮した声で心のそこから熱心に語っているのを聞いたり、その高調し興奮した顔をみたなら、街でふだんのビジネスの付き合いのある人たちはどれほど驚いたことだろう。

「オウムだ」スクルージはさけびました。「緑の体に黄色の尻尾、頭の上にはレタスみたいなものがついてる。あいつだ、そうロビンソー・クルーソー。島を一周して帰ってきたときに、オウムが呼びかけている『ロビンソー・クルーソー、どこにいってたの、ロビンソー・クルーソー』夢をみていたのかと思っていたがそうではなく、オウムだったわけだ。フライデーもいる。入り江をめざして全速力で駆けている。おーい、おーい」

それから急にいつもの様子とはうってかわって、昔の自分をあわれんでこうもらした。「かわいそうな子供だ」そしてふたたび泣き始めた。

「そうしてやればよかった」スクルージはポケットに手をいれてつぶやきました。目をそででぬぐい、少年の姿を追っています。「でももう遅すぎる」

「どうしたんだい」精霊はたずねました。

「なんでもないです」スクルージは答えます。「なんでもないんです。ただ昨晩ドアのところにクリスマスキャロルを歌っていた少年がひとりいて、なにかをやればよかったのにと。それだけです」

精霊はおもいやりのある笑顔をみせ、「さて別のクリスマスを見に行こうか」といいながら手をふった。

スクルージの子供の姿は一瞬にして大きくなり、部屋は少し暗くそして汚くなりました。窓枠はちぢみ窓にはひびがはいっており、せっこうのかけらが天井からおちてきて、そのかわりにはだかの下地が姿をみせた。ただいったいどうしてこういうことが起こったのかは、スクルージにもまったくわからなかった。スクルージにわかっていたことは、ただこれがきわめて正しいことだということだった。なにもかもが起きるべくして起こったことであり、そしてふたたび他の子供たちが楽しい休暇で家に帰ったのに、スクルージはまたもやひとりぼっちだった。

スクルージはこんどは本をよんでおらず、肩をおとしてうろうろ歩き回っていた。

スクルージは精霊の方をみて、悲しげに頭をふり、心配そうにドアの方をみやった。

そしてドアがひらき、少年よりもっと小さな少女がかけこんできて、両腕を首に回してなんどもキスをして、「お兄ちゃん、お兄ちゃん」と興奮しながら口にした。

「わたしはお兄ちゃんが家にかえってこれるようにきたの」少女は小さな手をたたいたり、笑いころげながらそういった。「家に帰ってきてよ、家に」

「家にだって、ファン」少年は答えた。

「そう」よろこびいっぱいの少女が返事をした。「家にね、それもずっと。家なの、それもいつまでも。お父さんは前よりずっとやさしいから。家は天国みたい。お父さんがある素敵な晩に寝るときわたしにやさしく話しかけてくれたから、わたしもおもいきってお兄ちゃんが家に帰ってきたらどうかしらってもう一回おねがいしてみたの。そうしたらお父さんはうんっていったわ、帰ってこいって。で、わたしを馬車に乗せて迎えにやらせたの。お兄さんも大人になるんだし」少女は両目を見開いてつづけた。「ここにはもうもどってこなくていいでしょ。でもその前にいっしょにクリスマスを過ごせるの、すっごくすてきなクリスマスをね」

「おまえはまったく大人だよ、ファン」少年も声をあげた。

少女は両手をたたき笑い転げ、少年の頭にさわろうとした。でもあまりに小さかったので、また笑い転げ、つまさきだちして少年をだきしめた。それから子供みたいに一生懸命兄をドアの方へとひきずっていき、少年もよろこんでそれに従った。

「スクルージの荷物をここへ持って来い」という恐ろしい声がホールにひびき、校長が姿をあらわし、スクルージを見下すような態度で一瞥すると、握手をしてスクルージをふるえあがらせた。そして二人をまるで古い井戸の中といったような寒さでぞくぞくするような客間へまねきいれ、そこはいつもぞくぞくするような感じで、壁の地図も、窓のところの天体儀と地球儀も寒さで青白く見えた。ここで校長はふしぎなほどさっぱりしたワインとふしぎなほどくどいケーキをもちだしてきて、二人にすすめてくれた。それからやせこけた召使に御者にもなにかいっぱいすすめるよう申し付けた。ただ御者はお礼は言ったが、前にいただいたのと同じならけっこうです、と答えたということだった。そのときまでにはスクルージのトランクも馬車の上に積みこまれ、子供たちは喜び勇んで校長に別れをつげ馬車にのりこみ、楽しそうに庭の方へと去っていった。馬車の軽快な車輪は、常緑種の濃緑の葉っぱからスプレーのように白霜や雪をまきちらした。

「いつもはかなげな娘で、一息でふきとんでしまうほどだったな」精霊はそうもらした。「でも心は広い娘だった」

「そのとおり」スクルージはさけんだ。「まったくそうだ。わしも否定せんよ、ぜったいに」

「彼女は大人になって亡くなったが」精霊はつづけた。「わたしが思うには子供が何人かいたと思ったがな」

「一人」

「そうだ」精霊は言った。「あの甥だよ」

スクルージは心中おだやかでなかったようだったが、短い答えをかえした。「そうだ」

その瞬間に二人はそうした人々をあとにして学校を離れ、街の人通りの激しい大通りにやってきた。その大通りでは影のような通行人が行き来をしており、影のような荷車や馬車が道をあらそっていた。そうした争いと騒ぎはまるで本当の街そのものだった。店のかざりをみれば、今が再びクリスマスの時期であることは明白だった。でももう夕方で、通りはライトアップされていた。

精霊は、一軒の店のまえで立ち止まり、スクルージにここを知っているかたずねた。

「知ってるかだって」スクルージはさけんだ。「わしはここで丁稚奉公してたんだ」

店にはいっていくと、ウェールズ風のかつらをつけた老人が高い机のむこうに座っているのが目に入った。もしもう二インチほども背が高かったら、天井に頭をぶつけたに違いない。スクルージは興奮して大声をだした。

「あぁ、フェジウィッグさんだ。なんてことだ、フェジウィッグさんが生き返った」

フェジウィッグはペンをおき、時計をみあげ、それは7時を指していた。両手をこすると、ゆったりしたチョッキを正し、つまさきから慈悲を感じる部分までをふるわせ一人で思い出し笑いをした。そして耳に心地よい、テンポのいい、ふかみのある、豊かで楽しげな声で名前をよんだ。

「おーい、ネーザーや、ディックや」

昔のスクルージはもう若者になっていて、急いでいっしょの見習いと部屋にはいってきた。

「確かにディック・ウィルキンだ」スクルージは精霊にささやいた。

「なんてことだ、そう、あいつに違いない。わしとどこに行くのでもいっしょだった。ディックだ、そうディックだ。あぁ」

「さて、おまえたち」フェジウィッグは話しかけた。「今晩は仕事はおわり。クリスマスイブだものな、ディック。クリスマスだぞ、エベネーザー。店を閉めるんだ」フェジウィッグはぱんぱんと両手をたたきながら、声を大きくした。「いますぐだ」

そして見習二人がどんなふうに取りかかったかはみなさんには信じられないほどでしょう。通りに戸板をもってとびだし、一、二、三、戸板をはめこみ、四、五、六、横木をわたし固定して、七、八、九、とみなさんが十二まで数え終わらないうちに競走馬のように息をきらしてもどってきました。

「でかした」フェジウィッグはさけぶと、高い机からすばらしい身のこなしで飛び降りて、「片づけるんだ、ぼうやたち。ここにスペースをつくろう。そらそら、ディック。ほらほら、エベネーザー」

片づけ。フェジウィッグがみていて、片付かないもの、あるいは片づけられないものは何もなかった。すぐに片づけがおわり、動かせるものはまるで永遠にみんなの目前からなくなってしまうかのように片づけられた。床をはき水がまかれランプは調整され、暖炉には燃料がたっぷりくべられた。お店は、気持ちのいい暖かなすっきりとした輝くダンスルームになった。冬の夜にはだれもが目にしたいと望むようなところだ。

そこに楽譜をもったフィドル奏者がやってきて高い机に陣取り、そこを音楽をかきならす場所として、50人もの胃が痙攣しているかのようにチューニングをした。満面に笑みをうかべたフェジウィッグ夫人がやってきて、三人の明るく愛らしいフェジウィッグの娘たち、娘たちに心を奪われた六人の若者たちもやってきた。召使もいとこのパン屋をつれてやってきた。コックは、兄の親友だという牛乳配達をつれてやってきた。わざわざやってきた男の子もいて、どうやら主人からは満足に食べさせてもらってないようだ。かれは隣の店の少女の影にかくれながらやってきて、ただその少女も店主に耳をひっぱられてやってきたことがわかったのだが。次から次へと人がやってきた。恥ずかしそうに入ってくるものもあれば堂々としているものもいて、上品なものもいれば下品なものもいて、引っ張ってくるものがあれば引っ張られてくるものもいた。とにもかくにも、みんながやってきた。すぐに20組の組み合わせができ手をとりあって部屋を半分まわり、反対側を引き返してきた。部屋の真ん中まで行っては引き返してきて、仲の良いグループがさまざまな形でくるくるまわって踊っていた。先頭のカップルはいつも間違った場所で曲がっていって、新しく先頭になったカップルがその場所にくるとすぐに再び同じことを繰り返し、しまいには列の最後までばらばらになってしまった。そうなったところで、フェジウィッグが手をうちならしてダンスを止めさせて、大声をあげた。「いいぞ」そしてフィドル奏者は火照った顔を特別そのためにあつらえられた冷たい水にひたした。ただ休んでいられるかとばかりに、顔をあげ、すぐに再度演奏しはじめた。ただまだダンスをするものがいなかったので、まるで前のフィドル奏者がつかれはてて家に戸板にのせて連れて帰られ、次に新しい奏者が現れすっかり前の奏者に打克つか、死ぬまでがんばるといった具合だった。

ダンスはもっとつづき、罰金をとる遊びがあり、またダンスをやり、ケーキ、ニーガス酒、つめたいロースト肉とつめたい煮た肉がたっぷりあった。そしてクリスマスに食べるひき肉入りの小さなパイがあり、ビールがたっぷりあった。ただこの世の一番の見ものはローストや煮た肉のあとにやってきて、それはフィドル奏者(器用なやつで、あなたやわたしが命ずるまでもなく自分の仕事を心得てるやつらなんです)がサーロジャー・デ・カバリーをうちならしはじめたときだった。そしてフェジウィッグが夫人とダンスをはじめた、それもトップとしてで、二人にとってはずいぶんとやっかいなダンスだったのだが。三組か四組そして二十組が進み出て、いずれもダンスに自信がある組で、歩くなんて思いもよらずいつもダンスをしている連中だ。

ただ倍の人数でも、いや4倍でも、フェジウィッグと夫人は立派にはりあえたことだろう。夫人もありとあらゆる点から、フェジウィッグの立派なパートナーだった。もしまだ誉めたりないというなら、もっといい誉め言葉を教えてもらえれば、それを使おう。フェジウィッグのふくらはぎからは火花がはっきりと出ているようで、ダンスとありとあらゆるところが月のように輝いていた。いつのどのときでも、次にどのようなダンスがくりひろげられるか予言することはできなかっただろう。フェジウィッグ夫妻はダンスを最後までおどり、前にでて下がり、両手をパートナーとつないで、お辞儀をして、コークスクリューやスレッド・ザ・ニードルなんかをこなし、元の場所にもどった。フェジウィッグはとつぜんダンスをとめた、ものすごく上手くとめたので、両足がウインクをして、まったくよろめくこともなく再び立ったように見えたくらいだった。

時計が11時を知らせたとき、この内輪でのダンスはお開きになった。フェジウィッグ夫妻もドアの両側の位置に立ち、一人一人出て行くときに握手をかわし、メリークリスマスと声をかけた。二人の見習をのぞいて全ての人が帰ったときに、夫妻は二人にも同じように挨拶をした。そうぞうしい声も小さくなり、見習の二人も店の奥のカウンターの下のベッドへ入った。

そうしたあいだ中ずっと、スクルージは放心した男のようだった。心は見た光景の中に入り込み、その中の自分と一体になっていた。すべてのことが本当だと確認し、すべてのことを思い出し、すべてのことを楽しみ、不思議な興奮を味わった。自分のすがたとディックの明るい顔がみえなくなってはじめて、精霊のことを思い出し、精霊が頭の上にとても明るいあかりを灯しながら、自分のことをずっと見ていたことに気づいた。

「なんでもないことだな」精霊はつぶやいた。「こうしたつまらないやつらをどんなに喜ばせたって」

「なんでもないだって」とスクルージは繰り返した。

精霊はてぶりで二人の見習の言ってることに耳を傾けろと合図した。二人は心からフェジウィッグのことを褒め称えているのだった。それから精霊は言った。

「どうだい、なんでもないことじゃないか。あの男はこの世でいうお金を数ポンド費やしただけだろ。たぶん3、4ポンドといったところだ。これほど褒め称えられるのに値することかい?」

「そうじゃない」スクルージはその言葉に頭に血がのぼり、まるで今の自分ではなく光景の中の自分であるかのように無意識に答えました。「そんなことじゃない、精霊さん。フェジウィッグさんはわしらを幸福にすることも不幸にすることもできるんだ。仕事を軽くすることもつらくすることも、楽しくすることも疲れるものにすることも。その力が言葉や見かけにあるとしても、つまりささやかであまり重要でないので、加えたり、数えたりできないようなものの中にあるとしてもだ。フェジウィッグさんが与えてくれた幸福は、身代を費やすほどの価値があるものですよ」

スクルージは精霊の視線を感じて、立ち止まった。

「どうしたんだ」精霊はたずね、

「別に」とスクルージは答えた。

「どうかしているようだがね」精霊がいいはると、

「いや」と答え、こう続けた。「別になんでもないが、今ふっと自分の事務員にも一言か二言かけてやれればよかったと思っただけです」

スクルージがこの言葉を口にしたとき、光景の中の自分はランプを消した。スクルージと精霊はふたたび横に並んで外へと出て行った。

「時間がない」精霊は早口でいうと「急げ」と続けた。

これはスクルージに向かっていったのでも、目に見える誰に向けたというのでもなかったが、すぐさま効果があった。ふたたびスクルージは自分の姿を目にすることになった。少し年をとり、青春をむかえていた。スクルージの顔には年をとったときの厳格さや厳しい様子が見られなかったが、不安と貪欲さの兆候は見受けられた。目にはいきごんでいる貪欲さ、落ち着きのない様子があり、それはすっかり性格に根をおろした情熱を示しており、大きくなっていく木がその影を落とすだろうところでもあった。

一人ではなく、喪服をきた美しく若い娘がそばにこしかけていた。その目には涙があり、過去のクリスマスの精霊による光できらめいていた。

「なんでもないことだわ」娘は優しく口にした。「あなたにとってはどうでもいいこと。他の幻想がわたしにとってかわっただけですもの。もしわたしがそうしようとしてきたように、これからそれがあなたを勇気づけて喜ばせるなら、わたしが悲しむ理由はなにもないわ」

「どんな幻想が君にとってかわるっていうんだい」スクルージは口をはさんだ。

「お金よ」

「それが世の中の公平な扱いというもんじゃないのかな」スクルージは続けた。「貧乏ほどつらいものがあるかい。豊かになろうと一生懸命になることほど否定しようとするのが難しいものはないな」

「あなたは世の中を恐れすぎているの」娘はやさしく答えを返した。

「あなたのお金以外への希望はすべて、お金に関する非難をうけたくないという希望になってしまったんだわ。わたしはあなたの高いところをめざす大志がひとつひとつ無くなっていくのを目の当たりにしたもの。で、結局、儲けることだけでしょ、あなたの心をしめているのは。そうじゃない」

「だからどうだっていうんだい」スクルージは答えた。「ぼくが年をとってそれだけ賢くなったからといって、それがどうしたっていうんだよ。君に対する態度は変わらないじゃないか」

娘は頭をふった。

「変わったとでもいうのかい」

「わたしたちの約束は昔のことだわ。貧しかったけど、それでも満足してたころのね。近い将来に一生懸命がんばればこの世の豊かさはすこしづつよくなっていくと思えたもの。あなたは変わったわ。変わって、別の人になってしまったの」

「ぼくは子供だったんだよ」スクルージは我慢強くいった。

「自分でも昔の自分ではないことは分かるでしょう」娘は答えた。「わたしにも分かるわ。二人の心がひとつだったときに幸せを約束してくれたものは、心がばらばらになってしまった今となっては惨めなだけよ。どれくらいたくさん、そして真剣にわたしがこのことを考えたと思う? 言いたくないけど。そのことを考えてあなたと別れるっていうだけで十分でしょう」

「ぼくが別れて欲しいって言ったかい」

「言葉の上では、たしかに言ってないわ」

「じゃあどうやって言ったんだい」

「性格がかわり、心がかわり、生活態度がかわって、最後に目指す希望が変わったことでよ。あなたがみて、わたしの愛をすこしでも価値がある貴重なものとしてくれた全てのことで。もしそんなものがわたしたちの間になかったとしたら、」娘は、穏やかだがしっかりとスクルージを見てつづけた。「言葉にだして言って、今わたしのことを探し求めてわたしの愛を勝ち取ろうとするかしら? なんてことでしょう」

スクルージはその推測が当たっていることに我を忘れて屈しそうに見えた。でもなんとか意思をふりしぼりこう答えた。「本気でそう思ってるわけじゃないだろう?」

「もしそうならどんなに嬉しいことでしょう」娘はそう答えると、「でも確かに心からそう思ってるの。わたしがこの事実をさとったとき、この事実がいかに強いものであらがえないものなのかを知りました。でももしあなたが今日も、明日も、昨日も自由に行動できるとしたら、わたしはあなたが持参金をもたない女を選ぶなんてことは信じられないわ。どんなに親しい仲でも、なにより損得を大事にするあなたが。でも一時の気まぐれで自分の主義に反して、そういう女を選んだとしても、あとになってぜったいあなたが後悔してくやまないとはわたしには確信できないの。いやあなたは絶対後悔するわ。わたしはあなたと別れてあげます。あなたのことを思って、あなたのかつての愛のために」

スクルージは口を開こうとしたが、娘の顔はスクルージを避けたままで、娘は続けた。

「あなたもこのことで心を痛めるかも。過去の記憶であなたがそうであってほしいと思うけど。でもとてもとても短いあいだのこと。一円のお金にもならない夢として、そんな思い出は喜んですてるでしょうから。目がさめてよかったと思ってね。どうかあなたの選んだ道でお幸せに」

娘はそういってスクルージのもとを離れ、二人は別れた。

「精霊や」スクルージは言った。「これ以上見せんでくれ。家につれてかえってくれ。こんなにわしを苦しめてうれしいかい?」

「もう一つだ」精霊は断言した。

「もういやだ」スクルージは声をあらげた。「もう十分だ。見たくない。もう見せないでくれ」

しかし容赦ない精霊はスクルージの両腕をつかみ、次に起こることへと目を向けさせた。

別の光景が目の前にはくりひろげられていて、ある部屋が、それほど大きくはないがきちんとしていて、快適そうな部屋があった。冬の暖炉の前には一人の美しい女性がこしかけていて、スクルージは女性の向かいにすわっている美しい母親の婦人を見るまでは、その女性が前にみていた女性と同一人物だと思っていたくらいだった。この部屋は騒々しく、スクルージの高ぶった気持ちではかぞえられないほどの子供であふれていた。詩の中の有名な羊の群れとはちがって、一つになって行動する四十人ではなく、四十人がそれぞればらばらに行動するのだった。結果はといえば、信じられないくらいの騒々しさということになろうか。ただ誰もそれを気にしている様子はなかったし、それどころか母も娘も心から笑顔をうかべており、とても楽しんでいた。娘の方は遊びの輪にくわわり、残虐にも山賊たちに略奪されてしまった。わたしもかれらにはなんでも呉れてやっただろう。ただあんなに乱暴にはしない、そう、決して。どんな富をつまれても、あのゆわえられた髪をくしゃくしゃにしたり、ほどいたりはしない。あの小さなかわいらしい靴ときたら、わたしなら決してむりやり脱がせたりはしない、あぁなんてことだ、どんなことがあってもそうはしない。かれらがしたようにたわむれに彼女のウエストを測るなんて、ずうずうしい若造たちめ。わたしならそんなことは決してできない。そんなことをしようものなら罰として腕が曲がったままになって決してふたたびまっすぐになることはないだろう。で、本当のことを言えば、わたしは彼女のくちびるにふれたかったのだ。彼女にいろいろ聞いて、そのくちびるが開き、伏目がちな目がまばたきするのをみて、顔を赤くしたくなかったのだ。髪をほどいて、その髪のほんのちょっとでも値段がつけられないくらいのものなのだが。そうわたしは、言わせてもらえば、いかにも子供の権利をもちながら、その価値を十分に知っているくらいの大人になりたかったのだ。

でもノックの音がして、それにひきつづいてドアへすごい勢いで殺到し、彼女は笑って着ているものはめちゃくちゃなままで、ドアに向かってどっと押し寄せた騒々しい一団の真ん中にいた。まさしくお父さんの出迎えで、お父さんはクリスマスのおもちゃやプレゼントをたくさんかかえて家に帰ってきたところだった。そして大声があがりうばいあいが起きて、無防備な荷物運びへといっせいに襲いかかった。椅子をつかってお父さんによじのぼり、ポケットをさぐるかと思えば、茶色の紙包みを奪い取り、ネクタイをひっぱり、くびまわりにしがみつき背中をたたき、元気一杯といったようすでお父さんの足をけりつけたりしていた。包みが開かれるたびに、驚きと喜びのさけび声にむかえられた。赤ちゃんがおもちゃのフライパンを食べちゃったとか、それからおもちゃの七面鳥を木のお皿ごと飲み込んじゃったみたいだなどという声があがった。これはすぐにぜんぶでたらめだってことがわかってほっとしたが、歓喜と感謝と興奮があった。どれも表現できないほどだが、子供たちとその騒々しさが居間をでて、一段一段階段をのぼりベッドに行って、ようやく落ち着いたくらいとでも言えばいいだろうか。

スクルージは今までよりいっそう注意深くみていたが、この家の主人が娘がもたれかかるままにしながら、ゆったりと奥さんといっしょに暖炉のそばに腰をおろしていた。そしてちょうどこんな娘が、優美で前途洋洋たる娘が、自分のことをお父さんなどと呼んでくれたら、自分の味気ない冬の人生の春のひとときとなるのにと考えていたら、視界が涙でうるんできた。

「ベル」主人は奥さんに笑顔で声をかけた。「今日の午後、君の幼馴染に会ったよ」

「誰かしら」

「あててごらん」

「わからないわ、えーっと、だめ、わからない」と一呼吸おいて、旦那さんといっしょに笑いながら「あぁスクルージね」とつけ加えた。

「そう、スクルージさんだよ。事務所の前を通りかかって、閉まってなくて中であかりを灯していたから、のぞきこまずにはいられなかったよ。かれの共同経営者は今にも死にそうだと聞いたけどね。一人きりで座ってたよ。まったくのひとりぼっちなんだろうと私は思うな」

「精霊さん」スクルージはしゃがれ声で頼んだ。「ここから帰してください」

「これらは全部過去の影だといったと思うが」精霊は答えた。「これがありのままであって、わたしに文句をいうのは筋違いだよ」

「帰してください」スクルージは声を大きくした。「わしには耐えられん」

スクルージは精霊の方をふりむくと、その顔にはいままで見てきたようないろいろな顔の一部が奇妙にからみあっているように見えて、しばらく見つめあった。

「ほっといてください、帰してください。これ以上わしにかまわんでください」

こうしてもめていると、もし精霊それ自体にはなんら目に見えるような抵抗せず、相手になんにもしていないのに、それがもめているといえればだが、スクルージには精霊の光がいっそう明るくかがやくようにみえた。それが自分に与える影響と漠然とむすびつけ、灯りをけすカバーをつかむととつぜん精霊のあたまにそれをかぶせた。

精霊はその下にかくれ、カバーで体全体が隠れた。ただスクルージは全力でおさえつけたが、明かりを消すことはできなかった。明かりはその下から切れ目ない光の洪水として地面にもれていた。

スクルージは自分がつかれはてて、どうしようもなく眠気を感じた。それで自分が寝室にいることがわかった。カバーに最後の一押しをして、手が緩んだ。そしてベッドに倒れ込むかこまないうちに、深い眠りについた。


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