気の向くままに, ジョージ・オーウェル

1944年11月17日 「筋書きの公式」、日付の改竄、トーリーが知性を育んだ時こそ


数週間前、ジャーナリズムの学校についての発言の中で私は不注意にもライター誌を「今は亡き」と書いてしまった「気の向くままに」一九四四年十月六日を参照。。その結果、私はその所有者から手厳しい手紙を受け取った。所有者はライター誌の十一月号を一冊同封し、私に発言を撤回するよう要求している。

私は喜んで撤回する。ライター誌はまだ生きていて以前とほとんど同じようであるが、とはいえ私が知っている体裁からは変わったようだ。そしてジャーナリズムの学校や売れないフリーランス・ジャーナリストから授業料を引き出す商売全体に光を当てる上でこの見本誌は調べるだけの価値があるように思われる。

記事はありふれた種類のものでウィリアム・A・バグリーによる「筋書きの技術」(連載の十五回目)といったものだが、私がそれより興味を惹かれるのは広告で、それは紙面の四分の一以上を占めている。その大半は物書きで金を稼ぐ方法を教えられると断言する人々によるものだ。驚くべき数の人々が既製の筋書きを提供すると約束している。いくつか例を挙げてみよう。

苦労すること無く筋書きを。私のやり方を学んでください。これまでにない単純な方法。ご不満な場合は返金。五シリング。郵便料金別納。

女性誌のための無尽蔵な筋書き方法。五シリング三ペンス。真の熟達技術をお教えします。十日で免許皆伝。

筋書き。私たちの筋書きは書き上げられるように既に順に並べられ、それぞれに長さが設定されています。あれこれ考える必要はありません――必要なのは文字を書いていくことだけ。あらゆる種類をご提供。

筋書き。生き生きとした場面展開。物語で実際に使える印象的な書き出し。信頼できる方言を含む会話例……ショートショート、五シリング。ショートストーリー、六シリング六ペンス。ロングコンプリート(緊迫し、息を飲ませる「結末」付き)、五シリング六ペンス。ラジオ台本、十シリング六ペンス。連載物、小説、中編小説(章ごと、適切な前書き、ご希望に応じて散文または詩文での引用句)十五シリング六ペンス~一ギニー。

他にもたくさんある。マーティン・ウォルター氏と呼ばれる何者かは物語作りを精密な科学に還元し、やがて「筋書きの公式」を考案し、彼や世界中にいる彼の生徒の物語はそれに従って作り出されている……「文学的」作品や人気作品を書きたいのか、あるいは任意の既存市場向けの物語を生み出したいのか、いずれにせよ、ウォルター氏の公式だけが「筋書き」とその生み出し方を教えてくれることを忘れてはいけない、この公式を手に入れるには一ギニーで済む、と広告は言っている。また千ワード当たり二シリング六ペンスで原稿の修正を請け負う「フリート街新聞社が集まっていることで有名なロンドン中心部の街区。のジャーナリスト」もいる。詩人さえ忘れ去られはしていない。

ご挨拶

あなたは戦後における感傷への大きな需要を軽視している詩人ではありませんか?

必要とされているものを知り、専門家になりませんか?

アイーダ・ルーベンの著名な挨拶状講座は、努力の意思のある合格した学生が利用できます。彼女の著作「感傷と挨拶状の出版」は三シリング六ペンスでお求めいただけます――などなど

何か攻撃的なことを言いたいわけではないが、先に引用したような広告に思わず反応してしまう人には次の事項を検討するようおすすめする。もしこうした人々が物書きで金を稼ぐ方法を本当に知っているなら、なぜ彼らはその秘密を一回五シリングで売り歩く代わりにただそれをやろうとしないのだろうか? 他の検討事項は別にしても、彼らは自分自身の競争相手を無数に育成していることになる。手元のライター誌にはこうした種類の広告がおおよそ三十ほど掲載されているし、ライター誌自体もその記事で与えている助言に加えて独自の文学事務局を運営していて、そこで千ワードの原稿に対して「著名な専門家による批評」を提供している。こうしたさまざまな講師のそれぞれが週に十人でも優秀な弟子を育てれば、年に一万五千人の優秀な作家が市場に放たれることになるのだ!

また、こうした講座を運営したり、その推薦文を書いている「フリート街のジャーナリスト」や「名声ある著作家」「著名な小説家」の名前が書かれていないこと――あるいは書かれている時でも、その発表作品をどこかしらで目にした人であることがめったにないのは実に興味深いことではないだろうか。バーナード・ショーやJ・B・プリーストリーが物書きで金を稼ぐ方法を教えてくれると言えば、何か裏がありそうだと感じることだろう。しかし、禿げた人間から誰が毛生え薬を買おうというのか?

ライター誌がさらに無料で宣伝して欲しいのであればそれも可能だが、こんな調子になることは言っておこう。


最近、歴史捏造で好まれるやり方は日付の改竄だ。フランスの共産主義者であるモーリス・トレーズはフランス政府から恩赦された(彼は軍隊からの脱走で判決を受けていた)。これに関してロンドンの新聞のひとつはトレーズが「過去六年間、亡命生活を送っていたモスクワからようやく戻ってくるだろう」と書いている。

しかし彼がモスクワにいたのはせいぜい五年間で、この新聞の編集者もそれはよくわかっているはずだ。ドイツからフランスを守ることを切望していると過去数年間にわたって公言していたトレーズは一九三九年の戦争勃発時に召集されたが姿を現さずにいた。それからしばらくしてモスクワに現われたのだ。

しかしなぜ日付を改竄したのだろうか? もし本当に軍から脱走したにしてもトレーズがそうしたのは戦闘が始まった後ではなく戦争の前であるように見せかけるためだ。これは独ソ不可侵条約の期間の、フランスやその他地域の共産主義者の振る舞いをごまかそうという広く見られる試みのひとつに過ぎない。近年おこなわれた似たような改竄を私は他にも挙げることができる。ときおり日付がほんの数週間違うだけで全く異なる色合いに見える出来事に出くわすことがある。しかしそれも嘘が新聞から這い出して歴史書へ潜り込まないように私たち全員が目を見開いて見張っている限りはたいした問題にはならないのだ。


収集本能を欠いた一人の投書者が保守党議員のケネス・ピックソンによる三文パンフレット「原則か偏見か」を一部送ってきた。「読んだら焼き捨てるように」(赤いインクで下線が引かれている)という忠告付きだ。

私は焼き捨てようとは思わない。まっすぐに書庫行きだ。しかしこれが吐き気を催させる作品であることや、このパンフレットのシリーズ全体(G・M・ヤングやダグラス・ウッドラフジョン・ダグラス・ウッドラフ(一八九七年-一九七八年)。カトリック系の週刊新聞タブレットの編集者。L・D・ガマンズレオナルド・デイビット・ガマンズ(一八九五年十一月十日-一九五七年二月八日)。イギリス保守党の政治家。大尉といった著者による「サインポスト・ブックレット」)が悪い兆候であることには同意する。ピックソン氏は比較的知性のある若い(政治の世界では「若い」は六十歳未満であることを意味する)トーリー党議員の一人であり、このパンフレットで彼は素朴で民主的な光の下にトーリー主義を示そうと試みる一方で、左派には誤解を招くようなちょっとした一撃を食らわせている。例えば次のようなマルクス主義理論の間違った説明を見てみよう。

経済的要因が世界を支配すると語る人物で本当にそれを信じている者は一人もいない。カール・マルクスが政治的関心より経済的関心をもっと持っていれば、資本主義者であるエンゲルスの親切を受け入れたり、アメリカの新聞にときおり記事を売ったりするよりもずっと上手く身を立てられただろう。

無知な人々を狙ってこの文章は「マルクス主義は個人の貪欲を歴史における原動力と見なす」とほのめかそうとしている。マルクスはそんなことは全く言っていないし、彼が言ったのはそれとほとんど反対のことだ。このパンフレットの大部分は国際主義という概念への攻撃であり、「自分が権限を与えられたのはイギリスの利益に優越する何かの促進にイギリス人の血を流すためであると感じているイギリスの政治家は一人もいない」といった発言でそれが補強されている。幸いにもピックソン氏はあまりに文章が下手で広い訴求力を得るには至っていないが、しかし、このシリーズの他のパンフレット著者の一部は平等主義者なのである。トーリー党はずっと変わらず「愚かな党」として知られている。しかしこの一団の広報担当者たちはそれなりの頭脳の持ち主を選び出しているし、トーリーが知性を育んだ時こそ十分な注意が必要な時なのだ。


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