カーミラ, ジョゼフ・シェリダン・レ・ファニュ

探索


部屋を見たところ、私たちが乱暴に突入したことを除いて完全に平穏でした。私たちは少し冷静になり、すぐに、十分に正気を取り戻したので、男たちを引き取らせました。おそらくカーミラはドアの騒音によって目を覚まし、最初に慌てふためいてベッドから飛び降りて衣装ダンスかカーテンの影に隠れたのではないか、そしてもちろん、召使頭とその家来たちとが引き下がるまで、出て来れないのではないか、とラフォンテーヌ嬢が突然思いつきました。私たちは、いまや、再度探し始め、再び彼女の名を呼び始めました。

全てが無駄でした。私たちの当惑と動揺は増しました。窓を調べましたが、しっかり締まっていました。私はカーミラに、もし隠れているのなら、こんな気違いじみた悪戯いたずらをもう止めて――出てきて、私たちの懸念に終止符を打つよう切実に呼びかけました。それはまったく甲斐がありませんでした。私は、このときになって、彼女は部屋にも衣裳部屋にもいないのだと納得しました。衣裳部屋のこちら側には依然として鍵が掛かっているのでした。彼女はそこを通り抜けられたはずはありませんでした。私は全く戸惑っていました。カーミラは、年老いた女中頭がお城にあることは知っているがそれらの正確な位置の言い伝えは失われてしまったと言っていた、秘密の通路のようなものを見つけたのでしょうか? 簡単に説明すれば、間違いなく――その時点で、私たちは全く途方にくれていました。

四時を過ぎ、残りの暗い間の時間を私はペロドン夫人の部屋で過ごすことにしました。朝になって明るくなってもその問題は全く解決されませんでした。

翌朝、私の父がその先頭に立ち、家の者全てが騒然となりました。邸宅の全ての部分が捜索されました。庭園も探索されました。行方不明の女性の痕跡は全く見つけられませんでした。小川もすんでのところで(彼女を捜して)浚われるところでした。私の父は狂乱状態でした。かわいそうな少女の母親に彼女が戻ったときに何と言えばいいのでしょう。私もほとんど取り乱して我を忘れていました、もっとも私の嘆きは全く異なった種類のものでした。 彼女の母親に対する言い訳の心配などではなく、カーミラを失うことそのものに対して嘆き悲しんでいたのです。)

その朝は不安と興奮の中で過ぎていきました。午後一時になってもいまだ消息は知れませんでした。私はカーミラの部屋に駆け上がり、そして、彼女が化粧台のところにたっているのを見つけました。私はびっくりして肝をつぶしました。自分の目が信じられませんでした。彼女は黙って私をかわいい指で手招きしました。彼女の顔は極度の恐怖を表わしていました。

私は喜びに我を忘れて彼女に駆け寄りました。私は何度も繰り返して彼女に接吻し抱擁しました。私はベルに駆け寄り、他の人たちがその場所に来て、すぐに私の父の不安を和らげるようにと猛烈にそれを鳴らしました。

「愛しいカーミラ、いったい今まで何が起こっていたの? 私たちはあなたのことを心配して悩み苦しんでいたのよ。」と私は大きな声で言いました。「いったいどこにいたの? どうなふうに戻って来たの?」

「昨夜は不思議な一夜だったわ」と彼女は言いました。

「お願いだから、全部説明して」

「昨夜の二時過ぎだったわ」と彼女は言った。

「ドア、そうね、衣裳部屋のドアと、ギャラリーに通じるドア、に鍵を掛け、いつものようにベッドにはいって寝ようとしたときは。私の眠りは途切れることなく、たぶん、夢もなかったわ。だけど、ちょうど今起きたら衣裳部屋のソファーの上だったの。そして、部屋の間のドアが開いていて他のドアはこじ開けられているのを見つけたわ。私が目を覚ますことなくいったいどのようにこれら全てがおきたのでしょう? ひどく騒々しい音が伴っていたに違いないのに。私は特に簡単に起きやすいの。私の眠りを邪魔することなくベッドからどうやって連れ出されたのでしょう?

私は、ちょっとした動きにもはっとさせられる人なのよ」

この時までに、ペロドン夫人とラフォンテーヌ嬢と、私の父と何人もの召使たちが部屋にいました。もちろん、カーミラは、質問やお祝いの言葉や歓待に困惑していました。彼女は一つの話を繰り返すのみで、それは一団の人々が一体何があったのかを説明する何らかの道筋を示唆することを可能にするには最低限のもののようでした。

私の父は考え込んで部屋を行ったりきたりしました。私はカーミラの目が狡猾で暗い一瞥で一瞬父を追うのを見ました。

私の父が召使たちを追い払ったとき、ラフォンテーヌ嬢は鎮静剤と炭酸アンモニウムの小瓶を捜しに行っていました。そして、父とペロドン夫人と私自身を除いてカーミラだけが部屋に居ました。父は考え込んだ様子で彼女のところへ来て、とても優しく彼女の手を取り、彼女をソファーへ連れて行き、彼女の横に腰を下ろしました。

「お嬢さんや、思い切って推測し、一つ質問させてもらう事をお許し願いたい?」

「だれがより正当な権利を持っているのでしょう?」彼女は言った。「貴方の好きなようにご質問なさって、そして私は全てお話いたします。しかし、私の話は単に混乱して曖昧なものかもしれません。私は全く何も知らないのです。どんな質問でもお好きなように。でも貴方はママが貴方に課した制限はご承知ですわね」

「全くその通りです、私の愛しい子よ。彼女がそのことについて私たちの沈黙を望むのならその話題に近づく必要は無い。いまや、昨夜の驚くべきことは、貴女が目を覚ますことなくベッドと部屋からいなくなってしまったことと、明らかに窓がしっかり閉まっていて内側から二つのドアが鍵が掛かっていたにもかかわらすこの移動が行われたことから成っている。私の考えをお話ししてそれから一つ質問させてもらおう」

カーミラはしょげた様子で両手の上にあごを乗せていました。ペロドン夫人と私は息を詰めて聞いていました。

「さて、わたしの質問はこれだ。貴女はこれまで寝ている間に歩いていることを疑われたことはありませんか?」

「けっしてありません。わたしがとても幼いときから本当にないのです」

「しかし、幼かった時に眠りながら歩いたことはありませんか?」

「ええ、私がそうしたことを知っています。私は年寄りの子守からよくそう言われたわ」

私の父は微笑んで頷きました。「さて、起きた事はこうです。貴女は寝ている最中に起きて、ドアの鍵を開け、いつものように鍵穴に鍵をさしたままにしないでね。しかし、鍵を取り出し、外側からドアに鍵を掛けた。貴女は再び鍵を取り出し、この階のまたはたぶん上の階や下の階の25もある部屋のひとつに一緒に鍵を持ち去った。あまりにもたくさんの部屋や物置部屋やたくさんの大きな家具やガラクタの山があるので、徹底的に探そうと思ったら一週間はかかりますよ。さあ、私の言ってることがわかるかね?」

「わかります、全部ではありませんが」と彼女は答えました。

「それで、お父さん、私たちはあれだけ注意深く衣裳部屋を探したのに、彼女が気が付いたら衣裳部屋のソファーの上にいたということをどう説明するの?」

「彼女はお前たちがそこを探したあとに、眠ったままで来たんだよ。結局彼女は無意識に起きていて、誰もがそうであるように、自分がどこにいるかに気づいてびっくりしたんだよ。私は、すべての謎があなたのと同じくらい簡単で無邪気に説明されるのといいと思うよ、カーミラ」と彼は笑いながら言った。「そして、事件のもっとも自然な説明が、麻酔に酔わせることや鍵の改ざんや泥棒や毒や魔女などをまったく要件としないひとつであることが、確実であることをわれわれは喜ぶべきだね。――カーミラにも誰にでも私たちの安全のために警告する必要のあるものは何もない」

カーミラはうっとりさせるような様子で見ていました。彼女のピンク色の頬より美しいものはありませんでした。彼女の美しさは彼女特有の優雅なけだるい仕草でより強調されていたのだと私は思います。父は黙って彼女の顔を私の顔と見比べていたのでしょう。というのは、彼はこう言ったからでした。

「私のかわいそうなローラや、お前ももっと彼女のような顔色だったらなぁ」そして父はため息をつきました。

かくて、私たちの恐慌は幸福な結末を迎え、カーミラは彼女の友人のもとへ戻りました。


©2008 山本雅史. この版権表示を残す限りにおいてこの翻訳は商業利用を含む複製、再配布が自由に認められる。プロジェクト杉田玄白 (http://www.genpaku.org/) 正式参加作品。