メイカーズ 第三部, コリイ・ドクトロウ

第二十一章


打ち負かせないなら盗め

問題を抱えるディズニーパークスコーポレーションの新しい戦略が示すのは野心に満ちた役員がこの会社の役職の頂点に一足飛びに上りつめるのにはお粗末な想像力で十分であるということだ。

事情通によればファンタジーランドの副統括責任者(私のでっち上げでないことは約束しよう)であるサミュエル・R・D・ペイジが遠隔体験型ディズニーパークの上級副統括責任者(これもでっち上げではない)へと昇格したそうだ。社内のある人物が私たちに語ったところによると「遠隔体験型ディズニーパーク」は私たちの家庭の片隅をザ・マウスに明け渡すよう説得する計画なのだそうだ。その一画は小型のディズニーパークとともに据え付けられた3Dプリンターロボットによって常に更新され続けるのだという。

聞き覚えのある話だと思ったのならそれもそのはずだ。これはこれまた同じように馬鹿げた「ライド」ムーブメントの劣化コピーなのだ。このムーブメントの生みの親はペリー・ギボンズとレスター・バンクス。過去のニューワーク株価操作スキャンダルで活躍したアンチヒーローたちだ。

模倣はへつらいの極みだ。もし上記が事実だとすればギボンズと彼のカルト信者は消防車のように顔を真っ赤にすることだろう。

これはディズニー流の安っぽい皮肉なのだろうか。ほんの一ヶ月前までこの会社は商標権侵害を理由にこのライドのそれぞれの運営者に対して個別に十指に余る訴訟を起こし、さらに今ではそれによって引き起こされた懲罰的な対抗訴訟から身をかわそうと必死なのだ。

中でももっとも皮肉なのは事情通によるとペイジ氏こそがライドへの訴訟とライドの安物コピー販売へと会社を踏み切らせた決定の両方の責任者であるということだ。

パークの熱狂的なファンの間ではペイジ氏はウォルトディズニーワールドにあるお子様向け「ファンタジーランド」区画を一掃し、流行のゴス系エリアへと入れ替えることで全国のアイライナーの供給を危険なほどの低レベルまで逼迫させたその「先見の明」でよく知られている。

いわゆるこの「型破り」、「天才さ」がペイジ氏をここ最近の一連の惨状、つまり一連の訴訟や失敗に終わったファンタジーランドの改装、そして今回の「遠隔配達」詐欺まがい商法へと導いたことは明らかである。

次はなんだろうか? ザ・マウスは既に巨額の投資を開始している。失敗に終わった一連のホームウェア、悲惨な状況の美術品チェーン店、そして崩壊で締めくくられた収集家向けのセル画マーケット。ペイジ氏のような「ビジョンある者」が舵取りにあたれば会社がさらなる「成功」をおさめることは間違いないだろう。


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