寝つかせ話:ふとっちょあらいぐまの物語, アーサー・スコット・ベイリー

四十羽のふとった七面鳥


カケスのジャスパーから農夫のグリーンの四十羽のふとった七面鳥のことを聞くと、ふとっちょはこれまでにないくらいお腹が空いてきました。

「あーあ! ぼくは農夫のグリーンさんの家に近づいちゃだめなんだ!」ふとっちょは言いました。「お母さんが離れていなさいって言ったんだもの……七面鳥が鳥小屋にいくのはいつって言ったっけ?」

「毎晩陽がしずんだときさ」カケスのジャスパーは説明しました。「夜じゅう木の上にいるんだよ。そこでぐっすり眠ってるんだ。きみが欲しいだけいくらでも簡単につかまえられるよ……でももちろん、恐いんなら――ぼくの言うことなんか聞かなくたっていいよ。このあたりの森に住むおおぜいのあらいぐまは、あの七面鳥たちのことを聞くとみんな大よろこびするけどね。下手すると、『ありがとうございます!』なんてぼくにお礼まで言っちゃうよ」そしてカケスのジャスパーは、しわがれ声で意地わるく笑いながら飛び去っていきました。

それだけ言われればふとっちょにはじゅうぶんでした。彼は決心しました。ふとっちょあらいぐまはこそんなことを恐れはしないと、カケスのジャスパーに知らしめてやろうと。それに、七面鳥を食べたくもありました。お母さんにはジャスパーから聞いた話をだまっていました。けれどその晩、月がのぼって月明かりが農夫のグリーンの家をくまなく照らすころ、ふとっちょあらいぐまは畑をしのび足で横切っていきました。

ふとっちょは恐れてはいませんでした。農夫のグリーンとその家族は全員ベッドに入っていることを知っていましたから。あたりはひどく冷えこんでおり、農夫のグリーンの飼い犬たちは犬小屋に避難しているにちがいないと、ふとっちょは考えました。

ふとっちょは物音を立てはしないつもりでした。七面鳥たちは眠っています――カケスのジャスパーがそう言っていました――そのうちの一羽を、ほかの鳥たちに気づかれずにとてもすばやく静かにつかまえられるだろうと考えていました。

農夫のグリーンの家の庭にくると、ふとっちょあらいぐまは枝をひろげたオークの木をなんなく見つけました。その落葉した丸はだかの枝々いっぱいに七面鳥たちがとまり、まどろんでいるのが見えました。ふとっちょは、言うよりもはやく木にのぼりました。一番ひくい枝に、四羽のふとった七面鳥がならんでとまり、そろってぐっすり眠っていました。ふとっちょは手をのばし、一番近くにいた鳥をつかみました。鳥ののど元をつかんだので、この大きな鳥はさけび声を上げることができませんでした。けれどふとっちょは、あまりすばやくありませんでした。彼が鳥をこちらに引きよせる前に、鳥は羽根をばたつかせ始め、となりの鳥をたたきました。それでその鳥が目をさまし、ガボガボ鳴いて羽根をばたつかせました。それから、そのとなりの枝にとまっていた鳥が目をさましました。ふとっちょあらいぐまは初めて気づきました。のこりの三十九羽の七面鳥の一羽一羽それぞれが、ガボ、ガボ、ガボ、ガボ、ガボー! と鳴き始めるんだってことをです! そのうちの数羽が、庭の向こうへと舞いおりていきました。そのうちの一羽が、ちょうど農夫のグリーンの家の窓の外のポーチの上にとまりました。どうやらふとっちょは、よりによって一番騒々しいさわぎを引き起こしてしまったようです。

窓が引き上げられ、農夫のグリーンの声がしました。「しずまれ! しずまれ!」

それを聞くと、ふとっちょあらいぐまはぐずぐずしませんでした。彼はつかんでいた七面鳥をほうり出し、地面に向かって木をすべり降りました。それから、森に向かってあらんかぎりのはやさでかけ出しました。

そのとき、農夫のグリーンの飼い犬のスポットがほえました。ふとっちょは道ばたの木に登りたいと思いました。ですが、彼は思い出しました。あの犬にとうもろこし畑のそばの木に追いつめられ、あやうい目にあったことがあったのでした。それで、森にたどり着くまで一度も止まらずに走りつづけました。そして、すばやく木にかけ登りました。スポットはふとっちょが最初に登った木の根元で立ち止まり、ほえ立てました。そのあいだ、ふとっちょは木のてっぺんからてっぺんへと移りながら家に向かいました。

ふとっちょは、農夫のグリーンの七面鳥のことを決してお母さんに話しませんでした。けれど次にカケスのジャスパーに出会うと、彼のことをどう思っているのか、はっきり言ってやりました。

「アハハハ!」カケスのジャスパーはただ笑うだけでした。ふとっちょが大変な目にあったと聞いても、まるでおどろいていないようでした。本当のことを言いますと、ジャスパーががっかりしたのただ一つ、ふとっちょが逃げおおせたことでした。カケスのジャスパーはふとっちょあらいぐまが嫌いでした。彼がふとっちょに四十羽の七面鳥のことを教えたのは、ふとっちょがそのうちの一羽を盗もうとしてつかまってしまえばいいと思ったからなのです。

「そのうちにお前をつかまえてやるからな!」ふとっちょは言いました。

けれどカケスのジャスパーは、ふとっちょがそう言ってやる前よりもいっそうけたたましい声で笑うだけでした。ひどくおかしい冗談だと思っているようでした。ジャスパーは、この上なくいらいらさせられるやつなのです。


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