眠れる者の目覚め, ハーバート・ジョージ・ウェルズ

目覚め


しかしこの点についてはワルミングは間違っていた。目覚めは訪れた。

なんとすばらしく複雑なものだろうか! この一見単純に見える統合体――自我とは! いったい誰が解明できるだろうか。毎朝、私たちが目覚める時の自我の再統合、無数の絡みあう要素の流転と合一、再構築、魂のおぼろげな最初の揺動、無意識が潜在意識へ、潜在意識がまどろむ意識へ、そして最後に再び自分自身を認識するまで増大し統合される。そして夜眠った後、私たちの多くにそれが起きるのと同じように、その長大なまどろみの終わりにそれがグラハムに起きたのである。知覚のぼんやりとした雲が形を取り、はっきりとしない倦怠へと変わり、気がつくと彼は自分がはっきりしないどこか薄い光が差す中で仰向けになって、しかし生きていることに気づいたのだった。

一人の人間へと向かうその長旅は大きな深淵を越え、いくつもの時代を過ぎるかのように思えた。その時には恐ろしい現実だった巨大な夢はぼんやりとした理解不能な記憶を残していった。奇妙な動物、奇妙な風景、まるで別の惑星のようだった。はっきりとした印象もあった。重要な会話や名前――何という名前なのかは言えなかったが――後になって思い出された。血管や筋肉の長く忘れていたどこか奇妙な感覚、とてつもない絶望的な奮闘をしたという気分。それは暗闇の中で溺れかけている人間の奮闘だった。それから目もくらまんばかりの不安定な融合状態の心象風景が現れたのだ……。

気がつくとグラハムは目を見開いて、何か見慣れぬものを見つめていた。

それは何か白いもの、何かのふちで、木製のフレームだった。その形の輪郭を追うようにして彼は頭を少し動かした。それは彼の視界の上を通り過ぎて続いていた。自分がどこにいるのかを彼は考えようとした。自分のこのみじめな状況で、それが重要な問題だろうか? 彼の思考は暗く沈んだ。夜明けの時刻の少し前に目覚めた者が感じるとらえどころのない悲嘆を彼は感じた。急ぐようにして遠ざかっていくささやき声と足音が聞こえたような気がした。

頭を動かすと肉体のひどい衰弱を感じずにはいられなかった。あの谷間にあるホテルのベッドに自分はいるのだろうと彼は推測した――しかしこの白いふちについては思い出すことができない。眠らなければならない。そこで彼は自分が眠りたいと思っていたことを思い出した。あの断崖と滝のことが再び頭に浮かび、それから通りすがりの人物と話したことがぼんやりと思い出された……。

どれだけの間、自分は眠っていたのだろう? あのぱたぱたという足音は何なのだろう? それにあの高くなったり低なったりする音、砂利浜へ打ち寄せる波のような音は? 緩慢な動きでいつもそれを置いている椅子の上の腕時計へ彼は手を伸ばしたが、触れたのはガラスのようになめらかで硬いものの表面だった。あまりに予想外だったために彼はとても驚いた。まったく唐突に彼は寝返りを打ってしばらく目を凝らし、それからもがくようにして体を起こして座った。体を起こすのは予想外に難しく、めまいと消耗――それに驚きが残された。

彼は目をこすった。謎めいた周囲の状況には混乱させられたが、頭はさえわたっていた――睡眠が力を与えてくれたことは明らかだ。彼がベッドという言葉から想像するものとは似ても似つかなかったが、彼はとても柔らかくしなやかなマットレスの上に裸で横たわっていて、暗いガラスの半球に覆われていた。マットレスの一部は透明になっていて、それを見て彼は落ち着かない気分になった。その下は鏡になっていて彼の灰色の影を映し出している。腕の周りには――自分の肌が奇妙に乾いて黄色くなっているのを見て彼は衝撃を受けたのだが――奇妙なゴム製の装置が取り付けられ、入念に取り付けられたそれは皮膚の中を上から下へと通り抜けているように見えた。そしてこのベッドは(彼が見るところでは)緑がかった色のガラスのケースの中に置かれ、そのケースの白いフレームの一本が最初に彼の目に留まったのだ。ケースの隅にはきらきらと輝く繊細な作りの装置があった。ほとんどの部分がまったく見慣れぬ機器だったが、最大と最小を示す温度計は見分けることができた。

全方位を取り巻く少し緑がかった色合いのガラス状の物質によってその向こうにあるものは見えにくいが、立派な外観の広い部屋があり、目の前には非常に大きくて飾り気のない白いアーチ状の廊下が延びているのが見て取れた。部屋の壁際には一揃いの調度品が置かれていた。銀色の布をかけられたテーブル――布は魚の腹のような銀色だった――優美な椅子が二、三脚、テーブルの上には何かが盛られたたくさんの皿、ビンが一本にグラスが二つ。自分がひどく空腹であることに彼は気づいた。

あたりには誰もいないようだったので、少しためらった後で彼は半透明のマットレスから這い出して自分のいる小空間の白く清潔な床の上に立とうとした。しかし彼は自分の体力を過信していた。ふらつき、目の前のガラス状のパネルに手をついて、彼はなんとか体を安定させた。一瞬、彼の手を押し返した後、それは膨れた空気袋のように外側へゆがみ、それからわずかに空気の抜けるような音をたてて破れて消えた――針を突き刺された泡のようだった。よろめきながら彼はホールの大きな空間へと出て、ひどく驚いた。体を支えるために彼はテーブルにすがりつき、グラスの一つが床へ落ちた――大きな音がしたが砕けはしなかった――それから彼は肘掛け椅子の一つに腰を下ろした。

少し体力が回復すると彼は残っていたグラスをビンの中身で満たしてそれを飲んだ――無色の液体だったが水ではなく、心地よいかすかな香りと味がして、飲むとすぐに力がわき元気が出てきた。杯を下に置いて彼は周囲を見渡した。

間にあった緑がかった透明なものが取り除かれた今も、部屋はその大きさと荘厳な雰囲気を何一つ失っていなかった。見たところアーチ状の廊下は階段へと続き、扉でさえぎられることもなく下へと延びて、その先で広々とした横に延びる通路と合流するようだった。通路は白い筋が走る深い群青色の物質でできた磨かれた柱の間を通っていて、その向こうからは人間の動き回る音、人の声、それに安定した低いうなるような音が聞こえた。今や彼は完全に目覚め、そこにあった食べ物に注意を向けることも忘れて、座ったまま油断なく聞き耳をたてていた。

次に彼は驚きとともに自分が裸であることを思い出し、体を覆うものを探してあたりを見回して、そばにある椅子の一つに投げ出された長く黒いローブに気づいた。それを体に巻き付けて、身震いしながら彼は再び座った。

頭の中にはいまだ困惑がわき上がっていた。自分が眠っていたこと、眠っている間にどこかに運ばれたことは明らかだった。しかしどこへ? そしてあの人々、深青色の柱の向こうにいる遠くの群衆は誰なのだろう? ボスキャッスルなのだろうか? あの無色の液体をもう一杯グラスに注いで彼は少し飲んだ。

この場所は何なのだろう――彼の感覚からするとまるで生き物のようにわずかに震えているように思えるこの場所は? 周囲の清潔で美しい形をした、装飾で汚されていない部屋に彼は目をやり、光に満ちた円形のシャフトが天井の一ヶ所をつらぬいて走っていることに気づいた。見ていると、すばやく動く影が定期的にそこを行ったり来たりしている。「ビー、ビー」動く影は、周囲を満たす低い音の中、独特な音をたてていた。

大声で誰かを呼ぼうとしたが、喉からは小さな音しか出なかった。それから彼は立ち上がって、酔っぱらいのようなおぼつかない足取りで、アーチ状の廊下へ向かって進んでいった。階段をよろめきながら下りたが、体に巻き付けた黒いマントの端に足を取られて青い柱の一つにつかまって体を支えた。

通路は青と紫の冷えびえとした光景の中を延びていき、遠く、もやがかかった空間、巨大な建物の内部のような空間に突き出た、明るく光の差す、バルコニーのような手すりのある場所で終わっていた。遠く彼方には、ぼんやりとした巨大な建築物の影が見える。騒がしい声が次第に近くなり、今では大きくはっきりと聞こえた。バルコニーで彼に背を向けて、盛んに会話しながら大きく身振り手振りしているのは三人の人間だった。明るく柔らかい色合いの、ゆったりとした着心地の良さそうな豪華な服を身にまとっている。大勢の人々がたてる大きな音がわき上がってバルコニーに流れ込み、一度、横断幕の上部が通り過ぎたように見えた。さらに一度、何か色あざやかな物体が見えた。おそらくは薄青色の帽子か衣服が空中に投げ上げられ、一瞬、空を横切って下に落ちたのだ。叫び声は英語のように聞こえ、「目覚めてくれ!」と繰り返されていた。何か不明瞭な鋭い叫びが聞こえ、不意に目の前の三人の人間が笑い始めた。

「はっはっは」一人が笑い声をあげた――短い紫色のローブを着た赤毛の男だ。「眠れる者が目覚めた時だと――いつになるやら!」

男は実に楽しげな目つきで通路の方を振り返った。その表情が変わり、その姿勢が変わり、硬直した。男が驚いた様子に他の二人がすばやく振り向いて、立ち尽くした。三人の顔に驚愕の表情、そして深い畏敬の念をたたえた表情が浮かんだ。

突然、グラハムの膝が崩れ、柱に置かれた彼の手から力が抜けて、彼は前方によろめいて顔から倒れ込んだ。


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