臆病ライオンは、邪悪な魔女がバケツの水でとけてしまったときいて大喜びでした。そしてドロシーはすぐに牢屋の門の鍵をあけてライオンを外に出してあげたのです。二人は城にいって、ドロシーがまずやったのは、ウィンキーたちみんなによびかけて、もう奴隷じゃなくなったと教えてあげることでした。
黄色いウィンキーたちは大喜びでした。というのも、邪悪な魔女のために何年にもわたってつらい仕事を強いられてきたのですから。魔女はいつもみんなをとても残酷に扱ったのでした。ウィンキーたちはこの日をそれからずっと祝日として、お祝いと踊りに費やしたのでした。
「友だちのかかしとブリキの木こりさえいたらなあ。そうすれば文句なしに幸せなのに」とライオンがいいました。
「助けてあげられないものかしら?」少女は熱心に尋ねました。
「やってみようか」とライオンは答えます。
そこで二人は黄色いウィンキーたちを呼び出して、友だちを助けるのを手伝ってくれないかと頼みますと、ウィンキーたちは自分たちをくびきから解放してくれたドロシーのためなら、喜んで全力をつくしましょうと申しました。そこでいちばん賢そうなウィンキーたちを何人か選ぶと、みんなで出発しました。その日一日と翌日の半ばまで旅して、ブリキの木こりがボコボコになってひしゃげている岩地にやってきました。斧は近くにありましたが、刃がさびて、柄も折れて短くなっています。
ウィンキーたちは木こりをそっとうでに抱えあげ、黄色い城へ運んで戻りました。道中、ドロシーは旧友の悲しい運命に涙を少し流し、ライオンは生まじめで悲しそうな様子でした。城につくと、ドロシーはウィンキーたちに言いました。
「この中にブリキ職人はいませんか?」
「ええいますよ。とても腕のいいブリキ職人が何人かいます」とみんなは言いました。
「じゃあその人たちをつれてきて」とドロシー。そしてブリキ職人が、道具をみんなかごに入れてやってくると、ドロシーは問いただしました。「ブリキの木こりのへこみをなおして、曲げて元通りにして、壊れたところはハンダづけできますか?」
ブリキ職人たちは木こりを慎重に検分すると、新品同然に修理できると思う、と述べました。そこでみんなは、城の大きな黄色い部屋で作業にかかり、三日と四晩にわたり働いて、ブリキの木こりの脚や胴体や頭を叩いたりひねったり曲げたりハンダづけしたりして、やがてついにまっすぐもとの姿に戻り、関節も新品同様に働くようになりました。確かに、何カ所かつぎはあたっていましたが、ブリキ職人はいい仕事をしていましたし、木こりは見栄っ張りではなかったので、つぎが当たっていてもまったく気にしませんでした。
とうとう木こりがドロシーの部屋に歩いてきて、助けてくれた礼を申したときには、木こりはあまりに有頂天で喜びの涙を流したので、ドロシーは関節がさびないように、涙を注意深く全部エプロンでぬぐってあげなくてはなりませんでした。同時に、ドロシー自身の涙も旧友に再会できた喜びのために大量に流れ出しましたが、こちらはぬぐいさる必要はありませんでした。ライオンはというと、目を何度もぬぐいすぎたしっぽの先がびしょぬれになってしまい、おかげで中庭に出て、乾くまで日にかざさなくてはなりませんでした。
「かかしさえいっしょならなあ。そうすれば文句なしに幸せなのに」ドロシーができごとをすべて話して聞かせ終えると、ブリキの木こりはそう言いました。
「なんとか見つけなくては」と少女。
そしてドロシーはウィンキーたちを呼んで助けを求め、一行はその日一日と翌日半日にわたり歩いて、翼ザルたちがかかしの服を投げた枝を持つ背の高い木のところにやってきました。
とても高い木で、幹はつるつるだったのでだれも登れません。でも木こりはすぐに言いました。「わたしが切り倒そう。そうすればかかしの服が取り戻せる」
さてブリキ職人が木こり自身をなおす作業をしている間に、ウィンキーたちの中の黄金職人は純金の斧の柄を作り、古い折れた柄のかわりに木こりの斧にはめたのでした。別のウィンキーは斧の刃を磨いたので、さびも取れ、磨いた銀のように輝きました。
せりふを言い終わるがはやいか、ブリキの木こりは斧をふるいだし、じきに木がドシンと倒れると、かかしの服が枝から飛び出して、地面に転げ落ちました。
ドロシーはそれをひろうと、ウィンキーたちに城まで運ばせまして、きれいな上等のわらを詰めてもらいました。するとどうでしょう! かかしは新品同様になり、助けてくれてありがとうと何度もお礼を言っていました。
これでみんなが再会できたので、ドロシーと友人たちは黄色いお城で幸せに何日か暮らしました。そこには快適に暮らすためのものが何でもそろっていたのです。
でもある日、少女はエムおばさんのことを思い出してこう言いました。「オズのところにもどって、約束を果たしてもらわないと」
「そうだね。わたしはついに心が手に入るんだ」と木こり。
「そしてぼくは脳みそが手に入る」とかかしが嬉しそうにつけ加えます。
「そしてわたしは勇気を手に入れる」とライオンは思慮深げに言います。
「そしてあたしはカンザスに戻るのよ!」とドロシーは手を叩きながら叫びました。「ね、明日にもエメラルドの都に向かって出発しましょうよ!」
みんなそうしようと言いました。翌日、みんなはウィンキーたちを呼び集めてさよならを言いました。ウィンキーたちはみんなが行ってしまうのを残念がり、ブリキの木こりがたいへんに気に入ったので、お願いだから自分たちと西の黄色い国を治めてくれと頼みます。でもみんなが出発しようと決意しているのを知って、ウィンキーたちはトトとライオンにそれぞれ金の首輪をあげました。そしてドロシーには、ダイヤをちりばめた美しいブレスレット。そしてかかしには転ばないように、黄金の握りがついた杖を。そしてブリキの木こりには、金を張って宝石をはめこんだ銀の油さしをあげたのでした。
旅人たちみんな、お返しにウィンキーたちにすてきな演説をして、みんな腕が痛くなるほど握手を続けました。
ドロシーは魔女の食器棚にいって、バスケットに道中の食べ物をつめましたが、そこで金の帽子を目にしました。かぶってみると、ぴったりです。黄金の帽子の呪文のことは何も知りませんでしたが、きれいだと思ったので、それをかぶることにして、それまでの日よけボンネットはバスケットに入れて運ぶことにしました。
そして旅の準備が整ったので、一行はエメラルドの都に向かって出発しました。そしてウィンキーたちは万歳三唱して、よい旅の祈りで見送ったのでした。