宇宙戦争 第一部 火星人の到来, ハーバート・ジョージ・ウェルズ

流れ星


そして最初の流れ星の夜が来た。目撃されたのは早朝のことでウィンチェスターの東を駆け抜ける炎の線が上空高くを走った。多くの人がそれを目にしてよくある流れ星だと思ったに違いない。アルビンによれば後ろに残された緑がかった筋はしばらく柔らかな光を放っていたそうだ。現代における隕石の最高権威であるデニングは最初に見えた時の高度はおおよそ九十マイルから百マイルであると述べている。落下地点は自分から見て百マイルほど東であるように思われたそうだ。

流れ星の後ろの緑色がかった筋はしばらく残った。

その時間、私は家にいて書斎で書き物をしていた。我が家のフランス窓はオターショウの方を向いていて、ブラインドは上げられていたというのに(当時、私は夜空を見上げるのが好きだったのだ)私には何も見えなかった。しかし、これまで外宇宙から地球へと飛来したものの中でも最も奇妙なそれが落ちてきたのは確かに私がそこに座っていた時間で、もしそれが通り過ぎた時に視線を上げていれば私にも見えていたことだろう。飛来を目にした何人かは甲高い音をたてながら飛んでいったと証言している。私自身は何も耳にしなかった。バークシャー州、サリー州、ミドルセックス州の多くの人々が落下を目にしたに違いないが、せいぜいまた隕石が落ちたと思っただけだった。落ちた物体をわざわざその夜のうちに探そうという者はひとりもいなかったようだ。

しかし早朝になると、流れ星を見てホースル、オターショウ、ウォーキングの間の共有地のどこかに隕石があると結論した哀れなオグルビーがそれを見つけようと早々に起き出した。夜が明けてすぐに彼はそれを発見した。採砂場の近くでのことだった。飛翔体の衝撃によって巨大な穴ができあがり、砂と砂利が周囲のヒースの野原の上に激しく吹き飛ばされてちらばり、一マイル半向こうからもそれとわかる小山が作られていた。東の方ではヒースに火が着いて薄く青い煙が夜明けの空に立ち昇っていた。

物体そのものは全体がほとんど砂に埋まった状態で、落下によってばらばらに引き裂かれたもみの木の残骸が散らばる真ん中にあった。埋まっていない部分は巨大な円筒形の外観をしていて汚れ、厚くうろこ状で焦げ茶色の外殻は丸みを帯びた輪郭をしていた。直径は三十ヤードほどである。彼はその物体に近づいてその大きさと形状に驚いた。ほとんどの隕石は程度の差はあれ全体に丸みを帯びているものだからだ。しかし大気中を飛来してきたせいでそれはまだとても熱く、それ以上は近寄ることができなかった。円筒の中からかき回すような物音が聞こえたが彼は表面が不均一に冷却されているためだろうと考えた。その時には中空の構造をしているなどとは思いもよらなかったのだ。

彼は物体によってできた穴の縁に立ってその奇妙な外観を見つめた。なにより驚くのはその異様な形状と色である。そしてようやくその時になってその飛来に何かはっきりとした意味があることをうっすらと理解し始めたのだ。いまだ気持ちのいい早朝で、ちょうど松の木々の上に出た太陽はウェーブリッジを照らしてあたりはすでに暖かくなってきていた。その朝、鳥のさえずりを聞いた記憶は彼にはなかった。風はそよとも吹かず、聞こえるのは焦げた円筒の中からのわずかな物音だけだった。共有地で彼はまったくのひとりだった。

その時、彼は気がついてはっとした。灰色の焼け焦げ、隕石を覆う灰色の外殻が端の丸い縁から剥がれ落ちていっているのだ。断片になって落ちたそれが砂地の上に降り注いでいる。突然、大きなかけらが剥がれ落ちて鋭い音をたて、彼の心臓は口まで跳ね上がった。

しばらくの間、彼はそれが何を意味するのかわからず、まだ高温であるにも関わらず穴の中へと這い降りてその物体をもっとよく見るために近づいていった。その時に至っても物体の冷却によって全て説明できるのではと想像していたが、灰が落ちているのは円筒の末端だけである事実がその考えを打ち消した。

その時、彼は円筒の丸い上面が物体に対してとてもゆっくりと回転していることに気がついた。あまりにゆっくりとした動きだったために五分前には自分の側にあった黒い目印が今は円の反対側にあることに気づいてようやく彼はその事実を発見したのだ。その時になってもそれが何を意味するかはほとんどわからなかったが、それもくぐもったきしむような音を耳にし、黒い目印が数インチ前へと急に動くまでのことだった。その瞬間、彼は一瞬にして事態を把握した。この円筒は人為的に中空になっていてその端はネジになっていて外れるのだ! この円筒の中にいる何かがその上面を開けようとしている!

「なんてことだ!」オグルビーは言った。「中に人がいるんだ――たぶん何人も! 焼け死にそうになっている! 脱出しようとしているんだ!」

すばやい精神の跳躍によってすぐさま彼はその物体と火星上での閃光を結びつけた。

生き物が閉じ込められているという考えの恐ろしさに彼は熱のことも忘れて出口を開ける手助けをしようと円筒へと突き進んだ。しかし幸運にも、まだ光を放つ金属面で手を焦がす前に鈍い放射熱が彼を阻んだ。どうするか決めかねて彼はしばらくそこに立ち尽くし、それから向きをかえると穴をよじ登って大急ぎでウォーキングへ向かって走り出したのだった。これが六時ごろのことだ。荷馬車の御者と出くわした彼は相手に事態を理解させようとしたが、話の内容と彼の姿があまりにおかしかったために――帽子を穴の中に落としてきたのだ――相手は走り去っただけだった。ホースル・ブリッジの酒場の鍵を開けていた給仕への説明も同じように不首尾に終わった。相手は彼を逃げ出した精神病患者だと思い込み、なんとか彼を酒場の中に閉じ込めようとしたがうまくいかなかった。これで彼は少し落ち着きを取り戻した。ロンドンの報道記者であるヘンダーソンが庭仕事をしているのを見つけた時には柵の向こうから呼んで彼に事態を理解させようとした。

「ヘンダーソン」彼は呼んだ。「昨日の夜の流れ星を見たかい?」

「さて、どうだったかな?」ヘンダーソンは言った。

「ホースル共有地で今、そいつを見つけてきた」

「まさか!」ヘンダーソンは答えた。「落ちてきた隕石をか! そいつはすごい」

「しかも隕石じゃない、それ以上のものだ。円筒形……なんと人工的な円筒形をしているんだ! しかも中に何かがいる」

スコップを手にしたままヘンダーソンが立ち上がった。

「なんだって?」彼が言った。彼は片耳が不自由なのだ。

オグルビーは自分が見たことを全て彼に話した。ヘンダーソンは一分もしないうちに理解した。スコップを放り出すとジャケットをひっつかみ道へ出てきたのだ。二人はすぐに共有地へと取って返し、まだ同じ場所にあるあの円筒を目にした。しかし中の音は今は止み、光沢のある金属の細い輪が円筒の側面と上面の間に現れていた。かぼそいシューという音をたててその縁から空気が吸い込まれるか吐き出されるかしている。

うろこ状に焼かれた金属を小枝で軽く叩いてみたが何の反応もなかったのでひとりか複数かはわかないが中にいる者は意識を失っているか死んでいるのだろうと二人は結論した。

もちろんのことだが二人には何もできなかった。二人は励ましと約束の言葉を叫んでから、助けを呼ぶために再び町へと取って返した。店主たちがよろい戸を外し、人々が寝室の窓を開けている朝日に照らされた狭い通りを砂まみれのまま興奮と混乱の中で走る二人が目に浮かぶ。ヘンダーソンはすぐに鉄道駅へと駆け込んだ。ロンドンへこのニュースを電報で送るためだ。そうして書かれた新聞記事は人々にこの出来事を受け入れる心の準備をさせた。

八時にはすでに大勢の少年と仕事のない者たちがこの「火星からの死人たち」を見るために共有地に向かって出発していた。それができあがった物語の筋書きだったのだ。私が最初にそれを耳にしたのは九時になる十五分前のことで、新聞配達の少年からデイリー・クロニクル紙を受け取りに出た時のことだった。当然のことだが実に驚き、すぐさま飛び出してオターショウの橋を渡り、採砂場へと向かったのだった。


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